堤聖也、ドネアと激闘! 判定勝ちでベルト死守 〜ボクシング世界戦〜

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 17日、ボクシングのトリプル世界戦が東京・両国国技館で行われた。WBA世界バンタム王座統一戦は正規王者の堤聖也(角海老宝石)が暫定王者のノニト・ドネア(フィリピン)に2対1で判定勝ち。2度目の防衛と王座統一に成功した。WBA・WBO世界ライトフライ級王座統一戦はWBA王者の高見亨介(帝拳)がWBO王者のレネ・サンティアゴ(プエルトリコ)に1対2で判定負け。プロキャリア初黒星で初の防衛と王座統一は逃した。WBO世界フライ級王者アンソニー・オラスクアガ(アメリカ)に挑戦した同級4位の桑原拓(大橋)は4ラウンドTKO負け。2度目の世界挑戦でベルト獲得はならなかった。勝ったオラスクアガは4度目の防衛に成功した。

 

 令和の激闘王だ。メインイベントに登場した堤は5階級制覇の生ける伝説、ドネアにあわやダウンというシーンもあったものの、12ラウンドを耐え抜いていた。

 

 桑原、高見と日本人が世界戦2連敗という状況で堤に出番が回ってきた。ステッペンウルフの『Born to Be Wild』が両国国技館内に流れるとスカジャン風のガウンを羽織って堤は花道を歩き、リングに向かった。右腕には同郷熊本出身の重岡兄弟(優大、銀次朗)の名が刺繍されていた。「近くに感じたかった」。その右拳を突き挙げ、リングに上がった。

 

 序盤はリーチで勝るドネアが距離を保ちながら時より強打をまじえる。一方の堤は左回りのサークリングしながら左ジャブを刺していきペースを掴もうとした。「1、2ラウンドで反応できている。パンチは強いけど見えていると思った」と堤。油断させておいて、さらなる強打を仕掛けてくるという想定もあったというが、堤陣営が想定外だったのはドネアの代名詞“閃光”、左フックではなく右アッパーだった。「右のクロスは警戒していましたが、あれだけ強い右のアッパーはあまり見たことがなかった」と石原雄太トレーナー。4ラウンド、「バコーンと入った」(堤)と顔面をとらえられ、後ろに下がってよろめく。ダウン寸前まで追い込まれたが、ここはゴングに救われた。

 

 このラウンドで堤は鼻の頭をカット。さらに5ラウンド以降の被弾で、堤によれば「これ折れとるぞ」という状態に。「でも仕方がない。鼻を気にして良くなるわけじゃない。目のあたりを切る時とかもそうなんですけど、気にして良くならない。鼻を気にしても別に治るわけでもないので、もう気にしてないです」

 

 それでも、ここから巻き返せるのが激闘王たる所以か。

「負けの流れができあがっていた。でも僕は負けの流れの試合を何度も経験してきているから、“頑張れ、頑張れ、頑張れ俺”って、ずっと自分に言い聞かせながら頑張りました」

 場内の“聖也コール”にも後押しされ、6ラウンド以降は盛り返し、堤のパンチがドネアの顔面をとらえるようになった。7ラウンドにはコーナーに追い込んだ。効かせる場面も見られたがダウンは奪えない。

 

 そこは3倍以上の試合キャリアを誇る歴戦の猛者である。石原トレーナーは「休んでいる時も常に“打つぞ”という雰囲気を出していた。堤は合間の隙を狙って打つのですが、隙をつくらないようにうまくやられていた」と語った。堤本人も「向こうが休んでる時、たぶん“行けよ”ってみんなが思った時間があった。あそこ行かせてもらえないのがベテランのうまさというか、経験の差」と振り返った。前に出つつも「一発もらったらダウンを取られるかもしれない」と“要警戒”のランプは頭の中に灯したまま闘い、終了のゴングを聞いた。

 

「判定を聞くのが怖かった」と堤。ジャッジの判定も割れた。2対1のスプリットディションでレフェリーは堤の手を掲げた。試合後のマイクではこうスピーチした。

「今、ボクシング界は凄いスター揃い。そういう選手たちと比べたら目立った強さがありません。一発で倒すパンチもありませんし、見栄えのいいスピードもありません。テクニックもディフェンスもそんなさえてるものはないんですけど、だけど僕は積み重ねてきたもので今、世界で闘っています。積み重ねてきた自分を信じ、自分の心に持つピストルを信じて、もっともっと強い存在で強いボクサーでありたいと思います」

 

 同学年のエリート井上拓真(大橋)、盟友の比嘉大吾(志成)に続く激闘の歴史にレジェンドの名が加わった。次戦は統一戦を見据えるがBプランもある。「スーパーフライ級からレジェンドが上がってくる。もし統一戦が決まらないなら挑戦を受けたい」。堤が言うレジェンドとは大晦日にバンタム級初戦を予定している4階級制覇王者の井岡一翔(志成)を指す。「一番ワクワクする相手。統一戦はやらなければいけない闘い。でもそれを差し置いてもいいくらいワクワクする」。激闘王の次戦はいかに。

 

(文・写真/杉浦泰介)

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