「スポーツは、楽しくあってほしい」その思いから『キャプテン翼』が生まれた ~高橋陽一氏インタビュー~
多くのサッカー選手に影響を与え、世界中で愛されている漫画『キャプテン翼』。その生みの親である高橋陽一さんと、当HP編集長・二宮清純、サッカー談議に花を咲かせる。

二宮清純: 高橋さんがオーナー兼代表取締役を務める南葛SCは、関東サッカーリーグ1部に所属するサッカークラブです。「葛飾からJリーグへ!」をテーマに活動されていますが、今シーズンはリーグ2位。全国社会人サッカー選手権ベスト8で、惜しくもJFL昇格を争う「全国地域サッカーチャンピオンズリーグ」への出場はなりませんでした。
高陽橋一: 恐らく、これ(JFLへの昇格)が一番厚い壁でしょうね。でも今シーズンの試合を見ていて、個人的にはJFLでも戦えるぐらいの実力は備わってきたと感じています。
二宮: 南葛SCという名称は、『キャプテン翼』の主人公である大空翼らが小学校時代に所属していた選抜チームにちなんで2013年に改称されたものです。地元・葛飾の期待は大きいでしょうね。
高橋: はい。ありがたいことです。今シーズンも多くの皆さんが観戦に訪れてくださり、関東1部では一番集客力のあるチームになりました。
二宮: 昨シーズンからは、風間八宏監督がチームの指揮を執っています。川崎フロンターレを強豪クラブに育てた名将に、どういう経緯で来てもらったのですか。
高橋: チームのコンセプトは、翼の信条でもある「ボールはともだち」です。それを一番表現してくれる監督は誰かと考えた時に、風間さんが浮かんだ。うちはまだ地域リーグであり、ハードルが高いのは理解しつつダメもとで依頼したら、まさかのOKでした。私は「南葛を世界基準のクラブにしたい」という夢を持っていて、風間さんも自分のメソッドを世界に広げたいという夢を持っていた。その思いが一致したのだと思います。
二宮: 風間監督は、「止める」「蹴る」という基本を重視した「ボールを大事にする」サッカーを実践していますから、南葛のコンセプトにぴったりですよ。聞いたところでは近い将来、葛飾区内にサッカー専用スタジアムもできるとか。
高橋: まだ確定ではないのですが、新小岩駅から徒歩約10分の東新小岩運動場を整備してスタジアムを建設する計画です。収容人数は1万5000人から2万人ぐらい。「キャプテン翼ミュージアム」の併設など、町のにぎわい創出のアイデアもいろいろと出ています。
二宮: それは素晴らしい。考えてみれば現在、東京23区にホームスタジアムを置くJリーグのチームはありません。それが23区内、しかも下町にできるとなれば大きな話題となり、地元も盛り上がるでしょう。
高橋: そうなってくれることを心から願っています。
二宮: 高橋さんは、高校3年間は野球をやっていて、スポーツが全般的にお好きだと以前お聞きしました。
高橋: 好きですね。相撲は、蔵前国技館(当時)に友達とよく観戦に行っていました。プロレスはアントニオ猪木派で、野球は親父の影響でアンチ巨人。家の近くに東京スタジアム(当時)があったので、ロッテの試合をよく見に行きました。
二宮: 漫画は子どもの頃から好きだったのですか。
高橋: 最初はアニメですね。『巨人の星』や『あしたのジョー』を夢中になって見ていた。小学校高学年ぐらいからは、『週刊少年ジャンプ』なども読み出しました。
二宮: 『キャプテン翼』は1980年、集英社主催の「フレッシュジャンプ賞」に入選し、翌年から『週刊少年ジャンプ』で連載が始まりました。そもそもサッカーを題材にした作品を描こうと思ったきっかけは?
高橋: 高校時代に1978年のワールドカップ(W杯)アルゼンチン大会をテレビで見たことですね。それまではW杯の存在すら知らなかったのですが、あれを見てサッカーの面白さに目覚めました。ただ、サッカー漫画だけを描いていたわけではなく、野球漫画も描いていました。サッカー漫画と野球漫画を交互に新人賞に応募して、先に『キャプテン翼』が選ばれたことで今があります。
二宮: 当時、野球漫画といえば、水島新司さんによってほとんどやり尽くされた感がありました。
高橋: そうなんです。私も『男どアホウ甲子園』や『ドカベン』はすごく好きでしたが、新人作家が野球漫画を描こうにも、もはや出尽くした感があった。担当編集者にも、「誰もやっていないサッカーのほうがいいんじゃないか」と言われました。そういう意味では、私にとって最初に評価された作品が『キャプテン翼』で本当に良かったと思っています。
二宮: 『キャプテン翼』では、翼の「ドライブシュート」や日向小次郎の「タイガーショット」など、選手たちが繰り出す必殺シュートが見どころの1つになっています。あれはどのようにして生れたのでしょう?
高橋: 基本的には「こんなことができたらいいな」と思ったことを描いています。一方で、立花兄弟の「スカイラブハリケーン」などの合体技は、プロレスのタッグ技のイメージだったりします。
(詳しいインタビューは12月27日発売の『第三文明』2026年2月号をぜひご覧ください)

<高橋陽一(たかはし・よういち)プロフィール>
1960年7月28日、東京都葛飾区出身。東京都立南葛飾高校卒業。80年、『キャプテン翼』で集英社主催の「フレッシュジャンプ賞」に入選を果たす。翌年から同作品の連載が『週刊少年ジャンプ』でスタート。日本でサッカーがまだマイナーな時代ながら人気を博し、『キャプテン翼』を見てサッカーを始める少年が激増。その人気は海外にも広がり、リオネル・メッシやアレッサンドロ・デルピエロなどが翼ファンであることを公言している。2023年6月、日本サッカー殿堂を受賞。現在は、WEB上で『キャプテン翼 ライジングサン FINALS』(ネーム形式)を連載する傍ら、東京都葛飾区を本拠地とするサッカークラブ「南葛SC」のオーナー兼代表取締役を務めている。