佐藤駿、ミラノの地で「火の鳥」になれるか ~第94回全日本フィギュアスケート選手権大会男子シングル~
第94回全日本フィギュアスケート選手権大会男子フリースケーティング(フリー)が20日、国立代々木競技場第一体育館(観客数9362人)で行なわれた。前日のショートプログラム(SP)で5位=87.99点発進だった佐藤駿(エームサービス/明治大学)はフリーで1位=188.76点となり、合計276.75点で銀メダルを胸に飾った。
フリーの演目「火の鳥」にふさわしい演技だった。
黒を基調とし、両肩に赤のスパンコールをあしらった衣装でリンクに現れると、観客はピンクの「SHUN」タオルを揺らし、“フェニックス”を迎え入れた。
ストリングスの音に合わせ、手の振りをつけ、ジャッジと観客を惹き付けた。
「天才ジャンパー」の異名をとるにふさわしい内容だった。4回転ルッツ、トリプルアクセル+1オイラー+3回転サルコウは難なく決めた。フライングキャメルスピンのあとは一度、曲調が穏やかになる。この間、4回転トウループ、トリプルアクセル(3回転半)+ダブルアクセル(2回転半)のシークエンスジャンプ、3回転ループを決めた。最後に設けた3回転ルッツの着氷はわずかに乱れたが、転倒などの大きなミスなく見事な演技を披露した。
曲調が盛り上がりを見せるところでステップシークエンス、コレオシークエンス、チェンジフットコンビネーションスピンを披露し、両手を大きく広げるフィニッシュポーズ。会場は割れんばかりの大きな拍手に包まれた。
フリーだけを見れば1位の演技。SP5位から巻き返して表彰台にあがった。佐藤は大会を振り返った。
「今大会にかける思いが強かったので、初めて全日本で表彰台にのぼれたことはうれしいです。今シーズンの始めは苦しかったがここまで頑張ってきて良かったと思っています」
今大会の銅メダリスト・三浦佳生(オリエンタルバイオ/明治大学)は、会見で佐藤の長所を解説した。
「もちろんジャンプも彼はすごいですが、一番は音感が良いところを尊敬しています。ステップ1つ踏むにしても、足で音が取れるんです。細かく見ないとわからないけど、そこが抜きん出ていています」
三浦の言うように、佐藤の演技はジャンプに加え、音を丁寧に紡ぐような繊細さがある。
全日本選手権は来年2月に行なわれるミラノ・コルティナダンペッツォ冬季五輪の最終選考も兼ねている。男子シングルの枠は3つ。シニア選手が同選手権で優勝した場合、自動的にミラノ・コルティナ冬季五輪の代表選手に内定ため、鍵山優真(オリエンタルバイオ/中京大学)がミラノ行きの切符を手にした。残り2枠は同選手権、グランプリファイナル、国際スケート連盟(ISU)認定大会でのシーズンベストスコア上位3名などから、総合的に選出される。ミラノ・コルティナ冬季五輪代表選手の発表は、明日夜の予定となっている。
ミラノの地で佐藤の音を紡ぐような演技を、披露できるか。彼が「火の鳥」に扮する姿を、五輪で見られることを祈る。
(文/大木雄貴)