“青”が主役になる世界へCHANGE 〜D.LEAGUE〜

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 日本発のプロダンスリーグ「第一生命 D.LEAGUE 25-26」はROUND.3を消化した。2勝1敗でBLOCK VIBEのトップとチャンピオンシップポイント(CSP)差3の4位にいるのがCHANGE RAPTURES(チェンジ ラプチャーズ)だ。今季からオーナー企業がチェンジホールディングスに変わったが、チームの運営会社は譲渡され、ディレクターもAKIHITOが留任。RAPTURESという名も継承された。

 

 多くのメンバーが残り、運営体制が変わらなかったとはいえ、オーナー企業以外にも変わった点はある。大きなところでは初年度からチームを牽引してきたMiYU、AMIが抜けたことだ。

「初期メンバーのMiYUは彼女が1年目からつくってきたものがある。それは僕がチームに加わる前から続く、大きくて深いもの。その意味でも彼女が抜けた穴は非常に大きいです。AMIはチームの中でプロデューサー(作品全体を仕切る役回り)を基本ほとんどやってくれていた。表向きにエースとなる選手と、裏方で全体を仕切るリーダーがいなくなった」(AKIHITO)

 

 その抜けた穴を埋めるため、今季は3人のダンサーを補強した。LiN、Akkey、RyoootAである。AKIHITOは言う。

「ソリストがいないということは、逆に言えば多角的な表現ができる。男臭くいく部分、女性の繊細さも使い分けられるようにならないといけない。ハウサーの2人(Akkey、RyoootA)と、今の時代のダンスを見ている、インフルエンス力を持っているLiN。RyoootAとLiNはスカウトで、Akkeyはオーディションで加わった。すごく優秀な3人が入ってくれた」

 

 LiNに声を掛けた理由をAKIHITOがこう明かす。

「インナーの強さ。ダンスはいろいろなスタイルがありますが、僕らはインナーの強い振り付けが多い。彼女がソロやみんなでダンスしている姿を見ていても、インナーがグッと締まりながら踊っているところが見受けられる。そこが僕らのチームにすごく合っている。僕らはD.LEAGUEから“ダークエンターテインメント”と呼んでいただいているので、そういうダークな部分にも彼女はマッチすると思ったんです」

 AKIHITOからの誘いに「最初は悩んだ」というLiNだが、「何かが変わるような気がすると思い、一歩踏み出しました」とD.LEAGUEへの挑戦を決意した。

 

 RAPTURESが“ダークエンターテインメント”と呼ばれるようになったのは、『Insane“BLUE"』(狂気的な青)というスローガンに掲げた23-24シーズンからだ。その前年からディレクターに就任したAKIHITOは、方針転換の理由を説明する。

「僕らは“陽キャ”のように発散するダンスというより、内に込めているものがある。だから内側からジワジワくるような表現の方がチームとしてもしっくりくるし、見ている人にとっても見やすくなるんじゃないかと思って、この方針にしました」

 この方針転換がハマッたと言っていいだろう。初年度こそ9位に終わったが、昨季(24-25)は3位で3季ぶりのチャンピオンシップ(CS)出場を果たしている。今季も開幕2連勝と好スタートを切った。

 

 12月18日に行なわれたROUND.3は、RAPTURESにとって挑戦のショーケースだったように思う。エース格のYUYAをメンバーに入れず、新加入の2人に核を任せた。エースパフォーマンスはLin、ピックアップダンサーにAkkey。2人はこの日がD.LEAGUEデビューとなった。いきなり勝敗にも直結するエースパフォーマンスという大役を担ったLiNのサポート役に付いたのがYUYAだった。
「心が折れるくらい言ってくれた。だけど、これだけ言ってくれる人がいるから頑張ろうという気持ちの方が大きかった。YUYAも全否定せずに『できるから』と言ってくれて、最後までサポートしてくれました」

 

 ショーテーマは「殻を破った、お羽なし」だった。紹介VTRには<「小さな羽を持つ者の“殻を破る瞬間”を書き留めた」とあるお話。これは…あなた宛てのメッセージ>とあったが、8人のダンサーが鳩に扮し、不気味に踊った。小道具の透明のビニール袋を被り、それを破る動きは、卵から羽化する姿を描いているように映った。チームとして、個人として、殻を破る。そんなメッセージを込められているようにも。

 

 しかし結果はDYM MESSENGERS(ディーワイエム メッセンジャーズ)に30.1対69.9で敗れた。テクニック項目は12.5%全てを持っていかれた。AKIHITOは「大敗だったと思います。踊り終わった後のDYMさんの作品、ダンスに懸ける熱量が全ての項目が上回っていると感じました」と完敗を認めざるを得なかった。

 

 D.LEAGUEデビューを終え、LiNは「普通の大会とは違い、背負うものがたくさんある。仲間のために戦う、応援してくださる人のために戦う。その重さが全然違いました」と振り返った。

「普通のコンテストだと、振りを間違えないようにしようとか、カマしてやろうという感覚なんです。D.LEAGUEの舞台では、その意識が強くない。言葉にするのは難しいんですが……」

 D.LEAGUEという特異なリーグ。関わる人も、見られている人の数も違う。個々の戦いだけには収まらないものがある。

 

 今季のチームスローガンは「HACK」だ。この言葉は「たたき切る」「(コンピューターシステムに)不正侵入する」「解決する」などの意味があるが、公式HPのチーム紹介文には、こう記されている。

<さまざまな常識を疑い、自らの視点を「変化」させ、社会をHACKしていきます。これまでに囚われず考え・実力ともにアップデートし、自分たちの信念を宿したクリエイションで勝利を目指します>

 

 AKIHITOが補足する。

「僕らチームは漫画の『NARUTO』でいうと、主人公のナルトじゃなくてサスケなんです。『ドラゴンボール』なら、悟空じゃなくてベジータ。戦隊モノで言えば、赤レンジャーじゃなくて青。この青が主役になれる世界をつくりたいんです。だからこそ、イレギュラーな作品が多い。だから僕らのインセインブルーとは、狂気的な青い炎を意味する。青い炎は赤い炎よりも熱いものがあんねんぞ、と。それを伝えてきたから、今季は“青が主役になれる世界をつくらないといけない”と思っているんです。そのメッセージの中には“HACK”という言葉があり、スローガンになりました」

 

 今季の目標について、LiNは「絶対に優勝しか見ていない」と力強く言えば、AKIHITOは「僕はメンバーが主役になれるシーズンにするのが目標です。それは優勝することもそうやし、『今季はRAPTURESのシーズンだったな』と言ってもらえるようなものをつくるのが僕の責務だと思っています」と話した。

 

「最終決定をしたり、まとめるのが僕の仕事。ゼロから1がないので話は進まない。それを僕の仕事で、1から10にしていくのが僕のアイディアと選手たちのアイディアが積み重なって作品をつくっています」と語るAKIHITOがディレクターに就任して4シーズン目となった。「アイディアは枯渇しないんですか?」と聞くと、こう返ってきた。

 

「まだいっぱいあるんです。なんならやりたいことが渋滞している状態です」

 種火は絶やさない。青い炎はD.LEAGUEをどう熱し、光らせるのか。RAPTURESの挑戦は続く。

 

(文・写真/杉浦泰介)

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