渡辺将斗(車いすバスケットボール選手/愛媛県宇和島市出身)第2回 空手優勝で得た自信

facebook icon twitter icon

 車いすバスケットボールチーム・神奈川VANGUARDSでプレーする渡辺将斗は、愛媛県宇和島市で生まれ育った。

 

 同市は、愛媛県南部に位置する南予地方の中心都市だ。伊達十万石の城下町として栄えた。伝統文化の「闘牛」は、まちの貴重な観光資源ともなっている。

 

写真提供:神奈川VANGUARDS

 将斗は幼少期から運動神経抜群だった。「活発な方だったと思います」と将斗。父親の大助は「やんちゃな“THE 男の子”だった」と振り返った。大助が極真空手やキックボクシングをやっていた影響かもしれない。「息子が生まれたら、将来は空手を習わせたい」と大助は考えていた。

 

 将斗が線維性骨異形成症と診断されたのは、4歳の時だ。大助の回想。

「障がいがわかる前も元気に飛び跳ねて、走っていました。ただ、走るときに少し、左脚を引きずるような癖がありながら、足も速かった。義理の母が、将斗の走る姿を見て“どっか悪いんやないか?”と心配したので一応、宇和島市内の整形外科に連れていきました。レントゲンを撮ってもらうと、先生は“すぐに愛大(愛媛大学医学部附属病院)に行ってください”と……」

 

 将斗本人はどうだったのか。

「自分がそういう病気だと、あまりわからなかった」

 

 大助の考えは、こうだった。

「病院の先生に“脚が折れやすので運動はNG”といきなり言われても……。私は走り跳ねて高いところから川に飛び込んだり、雪山をソリで滑る将斗をずっと見て来た。“今まで大丈夫やったら、何とかなるでしょ!”と。

 私が先に飛び込んだり、ソリで滑って安全確認をした上で息子にいろいろやらせてきたし、将斗自身、運動神経がいいのは幼いながら自分でわかっていたはずなので、“これはできる、これは無理”とある程度自分で判断できると思っていました」

 

 「とりあえず、やってみよう!」

 

 

 

 2008年4月、大助は実践格闘塾・青空会を同市三間町に開設した。

「“将斗に空手を教えられるのは、オレしかおらん”と考えを改め、自分の道場を作りました。近所の人に“将斗に教えるんよ”と言ったら“うちの子にも教えてくれん?”と妻のママ友の子どもたちが入門してくれた」と大助。将斗は、友人たちと一緒に汗を流した。

 

 将斗の成長スピードは速かった。「左脚が弱いので、(左脚が軸となる)右の蹴りは若干ふらついたけど、受け身も技も手本を見せたら、すぐに覚えた」と大助は言った。

 将斗は宇和島市立成妙小学校に入学した。大助が「大会に出てみるか?」と1年生の息子に問うと、「出たみたい」と返ってきた。大助には、高知県宿毛市を拠点とする無双塾・館長との繋がりがあった。息子の事情を説明し、「責任は父親の私が取るので、出場させてください」と頼み、館長の承諾を得た。

 

 2011年夏、将斗は無双塾主催「格闘遊戯Vol.1」に出場。「心臓がバクバクで吐きそう」になりながら大助が見守る中、将斗はトーナメントを勝ち上がり、見事優勝した。上段回し蹴りが得意だった。

 

「この日の夜、優勝トロフィーを抱えて寝たのを覚えています」と将斗。コーヒーの入った大きなマグカップで照れ笑いを隠した。

 

 大助は振り返る。

「この優勝で自信をつけたように見えました。1つの壁を乗り越え、将斗に力強さが芽生えた。結果的に優勝できましたが、勝っても負けても、大会に出場したという体験が今までの将斗をつくってきた原動力の1つだと、父親として考えています」

 

 続いて将斗。

「“障がいがあるから、あれは辞めよう。これも辞めよう”となると内気になって、スポーツに積極的に取り組めなかったかもしれない。父は“障がいはあるけど、とりあえずやってみよう! 危なかったから辞めればいいじゃないか”という考えの持ち主。いろいろな事に挑戦させてもらって、僕としてはすごくありがたいなと思っています」

 

 この話を伝えると「私にはそんな事、一言も言わないんですけど」と、大助は笑い飛ばした。わんぱくに育った将斗が、車いすバスケットボールに出会うのは小学6年生の時だった。

 

(第3話につづく)

 

渡辺将斗(わたなべ・まさと)プロフィール>

2004年5月20日、愛媛県生まれ。幼少期に維性骨異形成症を発症。2020年4月、愛媛県立松山北高校に入学。同年、車いすバスケットボールクラブ・愛媛WBCに入団。高校3年時、U-23日本代表世界選手権メンバーに最年少で選出され、世界一を経験した。2023年、神奈川VANGUARDSに加入。同年4月、桐蔭横浜大学に入学(スポーツ科学部)。2025年U-23日本代表世界選手権メンバーに選出された。チームでの背番号は「24」。ポジションはセンター。

 

(文・写真/大木雄貴、競技写真提供/神奈川VANGUARDS)

 

プレゼント

 渡辺将斗選手の直筆サイン色紙をプレゼント致します。ご希望の方はこちらより、お問い合わせ種別「その他」を選んでいただき、本文の最初に「渡辺将斗選手のサイン希望」と明記の上、郵便番号、住所、氏名、年齢、連絡先(電話番号)、この記事や当サイトへの感想などがあれば、お書き添えの上、送信してください。応募者多数の場合は抽選とし、当選発表は発送をもってかえさせていただきます。締め切りは2026年2月27日(金)迄です。たくさんのご応募お待ちしております。

 

 

 

facebook icon twitter icon
Back to TOP TOP