第155回 香川・伊藤秀範「2人の若手左腕、後藤と中野への期待」
後期は前期優勝でリーグチャンピオンシップ出場を決めていることもあり、選手育成に重点を置きながらの戦いを進めています。監督の方針で、投手、野手問わず、これまで出番の少なかった選手を多く起用しています。
後期、登板機会を増やした投手で成長を見せているのが、中継ぎとして使っている左腕の後藤真人です。彼は球の出どころが見えにくく、バッターとしては厄介なタイプ。しかし、制球が悪い点が課題でした。
フォームを調整する上で参考にしたのは、福岡ソフトバンクの森福允彦です。足をクロスにして球の出どころの見にくさをさらに生かし、前の肩が開かないようにすることでコントロールを良くしようと考えました。
ただし、このフォームはやや本人には合わなかったようです。軸足の左足がぶれてしまい、思い切って腕が振れないという新たな問題が生じました。そのため、次に参考にしたのが巨人の山口鉄也のフォーム。最終的には下半身は山口のような使い方をしながら、上半身は森福のようにややひねって投げるスタイルに落ち着きました。そして、これを固めるために投げ込みを実施したのです。
後期に入ってコントロールが良くなったのは、このフォームの安定に加え、実戦で自信がついたことがあげられます。7月26日の愛媛戦では8回の1イニングを投げ、三者凡退。しかも元NPBの橋本将を見逃しの三振に打ち取りました。さらに8月4日の広島2軍との交流試合では2軍調整中の丸佳浩をキレのあるストレートで空振り三振に仕留めています。
制球さえ向上すれば、変化球もカーブ、スライダー、チェンジアップと一通り投げられます。左の中継ぎとして、大いにスカウトへアピールできるでしょう。今後も彼には中盤から終盤にかけての大事な場面で投げてもらう予定です。
一方、もうひとりの1年目左腕・中野耐は少し伸び悩んでいます。きっと高校(天王寺高)時代までは、ここまで野球を突き詰めてやったことがなかったのでしょう。厳しいプロの世界に、まだ本人の意識が追いついていない感じがします。
プロでは同じ失敗を繰り返したり、1度体得したものがすぐに抜けてしまうようでは、活躍し続けることはできません。いくら素質があってもレベルアップしない限り、他の選手に追い抜かれてしまいます。
その点、まだ中野は一度掴んだものをすぐに手放してしまい、もったいない気がするのです。たとえばフォーム。彼はMAX143キロのストレートを上半身の力だけで投げています。下半身主導で、うまく体重移動できれば、もっとすごいボールが投げられるはずです。しかも下半身はガッチリしており、足は速い。この恵まれた体をフル活用しない手はありません。
そこで彼には松坂大輔さん(レッドソックス)の体重移動を参考に、軸足でしっかり粘り、ステップした際にも、さらに両足で踏ん張って前へパワーを送りこむような下半身の使い方をアドバイスしました。しかし、せっかくいい形で体重移動ができていたのに、少し気を抜くと元のフォームに戻ってしまいます。これではなかなか上を目指す段階には進歩しません。
彼はNPBの1軍で活躍できる素質を持っていると僕は感じています。それだけに意識面も含めて、プロとして一人前になれるよう、根気強く指導していきたいと考えています。
今季、香川からはこの7月に、アレックス・マエストリをシーズン途中でNPB(オリックス)に送りこむことができました。彼の長所は何より練習熱心なところ。そして、新しい環境に対する適応力がありました。外国人が成功する上での第一条件はクリアしていたと思います。
技術的にも抑えを経験したことで、ピンチにも動じなくなり、制球もより重視して投げるようになりました。NPBの1軍で投げるには外国人枠がありますから、より激しい競争が待っていることでしょう。ただ、必ずチャンスは訪れます。オリックスの2軍では先発で投げているようですし、どういう形であれ、巡ってきた機会をモノにしてほしいものです。
8月になれば、NPBのドラフト会議までは、もう2カ月ちょっとです。逆に言えば、NPB入りには、この2カ月が最後の勝負どころとなります。とはいえ、夏場はどうしても体力が落ち、球威も出てこないものです。これは前向きにとらえれば、ボールのキレや回転、制球力などをアピールするチャンスとも言えるでしょう。また、スカウトは試合だけでなく、練習態度や試合前の準備といった部分も必ずチェックしています。選手たちには「常に誰かに見られている」という意識で、これからの時期を過ごしてほしいと感じています。
エースの高尾健太が離脱中で、マエストリもいなくなり、現状、香川の投手陣は8人。しかし、どの選手もしっかりチームに必要な戦力として頑張っています。リーグチャンピオンシップを勝ち抜いての独立リーグ日本一、そして、ひとりでも多くのNPB選手を輩出できるよう、勝負の2カ月を選手と一緒になって頑張っていきます。引き続き、応援よろしくお願いします。
<伊藤秀範(いとう・ひでのり)プロフィール>:香川オリーブガイナーズコーチ
1982年8月22日、神奈川県出身。駒場学園高、ホンダを経て、05年、初年度のアイランドリーグ・香川に入団。140キロ台のストレートにスライダーなどの多彩な変化球を交えた投球を武器に、同年、12勝をマークして最多勝に輝く。翌年も11勝をあげてリーグを代表する右腕として活躍し、06年の育成ドラフトで東京ヤクルトから指名を受ける。ルーキーイヤーの07年には開幕前に支配下登録されると開幕1軍入りも果たした。08年限りで退団し、翌年はBCリーグの新潟アルビレックスBCで12勝をマーク。10年からは香川に復帰し、11年後期より、現役を引退して投手コーチに就任した。NPBでの通算成績は5試合、0勝1敗、防御率12.86。
後期、登板機会を増やした投手で成長を見せているのが、中継ぎとして使っている左腕の後藤真人です。彼は球の出どころが見えにくく、バッターとしては厄介なタイプ。しかし、制球が悪い点が課題でした。
フォームを調整する上で参考にしたのは、福岡ソフトバンクの森福允彦です。足をクロスにして球の出どころの見にくさをさらに生かし、前の肩が開かないようにすることでコントロールを良くしようと考えました。
ただし、このフォームはやや本人には合わなかったようです。軸足の左足がぶれてしまい、思い切って腕が振れないという新たな問題が生じました。そのため、次に参考にしたのが巨人の山口鉄也のフォーム。最終的には下半身は山口のような使い方をしながら、上半身は森福のようにややひねって投げるスタイルに落ち着きました。そして、これを固めるために投げ込みを実施したのです。
後期に入ってコントロールが良くなったのは、このフォームの安定に加え、実戦で自信がついたことがあげられます。7月26日の愛媛戦では8回の1イニングを投げ、三者凡退。しかも元NPBの橋本将を見逃しの三振に打ち取りました。さらに8月4日の広島2軍との交流試合では2軍調整中の丸佳浩をキレのあるストレートで空振り三振に仕留めています。
制球さえ向上すれば、変化球もカーブ、スライダー、チェンジアップと一通り投げられます。左の中継ぎとして、大いにスカウトへアピールできるでしょう。今後も彼には中盤から終盤にかけての大事な場面で投げてもらう予定です。
一方、もうひとりの1年目左腕・中野耐は少し伸び悩んでいます。きっと高校(天王寺高)時代までは、ここまで野球を突き詰めてやったことがなかったのでしょう。厳しいプロの世界に、まだ本人の意識が追いついていない感じがします。
プロでは同じ失敗を繰り返したり、1度体得したものがすぐに抜けてしまうようでは、活躍し続けることはできません。いくら素質があってもレベルアップしない限り、他の選手に追い抜かれてしまいます。
その点、まだ中野は一度掴んだものをすぐに手放してしまい、もったいない気がするのです。たとえばフォーム。彼はMAX143キロのストレートを上半身の力だけで投げています。下半身主導で、うまく体重移動できれば、もっとすごいボールが投げられるはずです。しかも下半身はガッチリしており、足は速い。この恵まれた体をフル活用しない手はありません。
そこで彼には松坂大輔さん(レッドソックス)の体重移動を参考に、軸足でしっかり粘り、ステップした際にも、さらに両足で踏ん張って前へパワーを送りこむような下半身の使い方をアドバイスしました。しかし、せっかくいい形で体重移動ができていたのに、少し気を抜くと元のフォームに戻ってしまいます。これではなかなか上を目指す段階には進歩しません。
彼はNPBの1軍で活躍できる素質を持っていると僕は感じています。それだけに意識面も含めて、プロとして一人前になれるよう、根気強く指導していきたいと考えています。
今季、香川からはこの7月に、アレックス・マエストリをシーズン途中でNPB(オリックス)に送りこむことができました。彼の長所は何より練習熱心なところ。そして、新しい環境に対する適応力がありました。外国人が成功する上での第一条件はクリアしていたと思います。
技術的にも抑えを経験したことで、ピンチにも動じなくなり、制球もより重視して投げるようになりました。NPBの1軍で投げるには外国人枠がありますから、より激しい競争が待っていることでしょう。ただ、必ずチャンスは訪れます。オリックスの2軍では先発で投げているようですし、どういう形であれ、巡ってきた機会をモノにしてほしいものです。
8月になれば、NPBのドラフト会議までは、もう2カ月ちょっとです。逆に言えば、NPB入りには、この2カ月が最後の勝負どころとなります。とはいえ、夏場はどうしても体力が落ち、球威も出てこないものです。これは前向きにとらえれば、ボールのキレや回転、制球力などをアピールするチャンスとも言えるでしょう。また、スカウトは試合だけでなく、練習態度や試合前の準備といった部分も必ずチェックしています。選手たちには「常に誰かに見られている」という意識で、これからの時期を過ごしてほしいと感じています。
エースの高尾健太が離脱中で、マエストリもいなくなり、現状、香川の投手陣は8人。しかし、どの選手もしっかりチームに必要な戦力として頑張っています。リーグチャンピオンシップを勝ち抜いての独立リーグ日本一、そして、ひとりでも多くのNPB選手を輩出できるよう、勝負の2カ月を選手と一緒になって頑張っていきます。引き続き、応援よろしくお願いします。
<伊藤秀範(いとう・ひでのり)プロフィール>:香川オリーブガイナーズコーチ1982年8月22日、神奈川県出身。駒場学園高、ホンダを経て、05年、初年度のアイランドリーグ・香川に入団。140キロ台のストレートにスライダーなどの多彩な変化球を交えた投球を武器に、同年、12勝をマークして最多勝に輝く。翌年も11勝をあげてリーグを代表する右腕として活躍し、06年の育成ドラフトで東京ヤクルトから指名を受ける。ルーキーイヤーの07年には開幕前に支配下登録されると開幕1軍入りも果たした。08年限りで退団し、翌年はBCリーグの新潟アルビレックスBCで12勝をマーク。10年からは香川に復帰し、11年後期より、現役を引退して投手コーチに就任した。NPBでの通算成績は5試合、0勝1敗、防御率12.86。