また今年もマドンナたちの熱い季節がやってきた。高校、大学、社会人の女子硬式野球チームが一同に顔を合わせ、日本一を決定する「全日本女子硬式野球選手権大会」が8月25日から5日間、愛媛県松山市のマドンナスタジアム、坊っちゃんスタジアムを会場に行われた。8回目を迎えた今回も昨年より5増の32チームが全国から参加。熱戦を繰り広げた。

 女子野球の夏は松山

 この大会が松山で開かれるのは7年連続7回目だ。最初は2006年、松山市が小説「坊っちゃん」発表100年記念事業のひとつとして、「2006ベースボールフェスティバルin松山」を実施し、その一環で大会が開催された。松山市にはプロ野球も開催される坊っちゃんスタジアムの隣に、マドンナスタジアムというサブグラウンドがある。女性の名前を冠した球場は全国的にも例がなく、「マドンナスタジアムを女子野球の聖地に」との思いも大会招致につながった。松山開催にあたり、地元の企業として、伊予銀行が大会をスポンサード。以降、「伊予銀行杯」として毎夏、大会が実施され、「女子野球の夏は松山」というイメージが定着しつつある。

 伊予銀行では、特別協賛としてバックネットや外野スタンドに広告を設置するのみならず、さまざまな形で大会の盛り上げに力を注いできた。行員による応援団の派遣に加え、開会式では伊予銀行合唱団による「マドンナ野球応援歌」を披露(第6回大会まで)。野球ボールのデザインを施した巨大な布に下から空気を入れて膨らませる「布上げ」のアトラクションを行ったこともある。

 そして、大会の松山開催を機に四国初の女子硬式野球チームとして発足したのが「マドンナ松山」である。第2回大会から毎年、出場し、10年には3位入賞も果たした。
「チームが6年目を迎え、メンバーの絆は深まっています。全員がチームのためにプレーできている」
 そうセンターを守る元キャプテンの東純子選手が語るように、予選リーグのマドンナ松山は投打がかみあった。初戦の履正社RECTOVENUSには7−0、2戦目のSiriusには3−0といずれも勝利。グループ1位で予選を通過した。

 伊予銀行からは今大会より若手行員の応援リーダーを派遣。そのリードの下、太鼓や金管楽器などの鳴り物で一体となった応援を繰り広げ、選手たちを大きく後押しした。

 不完全燃焼の敗戦

 ところが決勝トーナメント初戦の相手は抽選の結果、前年度覇者の尚美学園大に。強豪相手にマドンナ松山は全力で戦ったが、日本代表選手を大勢抱える尚美学園大に初回から失点を重ね、2−10で6回コールド負けを喫してしまった。

 トップクラスとの差を埋めるのは練習しかない。ただ、高校や大学とは異なり、働きながら野球に取り組む社会人クラブチームの場合、必然的に練習時間は限られる。東選手も平日は銀行の窓口業務に従事しており、野球との両立は大変だ。それゆえに渡部監督は個々人の高い意識が求められると明かす。

「選手たちは全体練習は非常に一生懸命やっています。ただ、全体練習の時間は十分に取れませんから、平日の自主練習が試合での結果につながってくる。自宅でのランニングや素振り、シャドーなどできることをやってほしい。今回の悔しさを1年間持ち続けて、どれだけ練習できるか。ここが来年に向けてのポイントになると考えています」

 また実戦機会が少ないことも目下の課題だ。女子硬式野球のチームは愛媛はおろか、四国を見渡してもマドンナ松山しかない。練習試合を組もうにも、関西や中国、九州などへの遠征が必要になる。5月には子規記念杯、9月にはひうちカップと県内で女子野球の大会を開催しているものの、「関東のチームはリーグ戦を開いて経験を積み、力をつけている。置いていかれないようにしたい」と渡部監督も危機感を抱いている。

 松山から世界へ

 次なる目標は10月に開催される「第6回全日本女子硬式クラブ野球選手権大会」だ。クラブチーム日本一を決める大会で、悲願の優勝を狙っている。
「試合になると1球1球の重さがよく分かる。もっと野球を知ってレベルアップしたい」
 東選手もさらなる向上を誓った。今後も伊予銀行ではマドンナ松山はもちろん、地元で開催される全日本女子硬式野球選手権大会を支援していく考えだ。

 日本は先のワールドカップで3連覇を果たした。男子同様、世界的にも高いレベルにある。ロンドン五輪で銀メダルを獲得した女子サッカーのなでしこジャパンに負けじと、マドンナたちも頂点に向け、白球を追いかけている。


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