二宮： ロッテに入ってNPBの壁は感じませんでしたか？
角中： ２軍に関しては独立リーグとの差はあまりなかったです。でも１年目から１軍に上げていただいて、１軍と２軍の壁は大きく感じましたね。レベルが一回りも二回りも違う。
打てないと感じた岩隈二宮： 具体的にはどこに差を感じましたか？
角中： ピッチャーの投げるボールにはキレがありますし、一番の違いはコントロールがいい。スピードが速いだけのピッチャーならファームにもたくさんいますけど、それをコーナーに決めてくる。変化球でも簡単にストライクを取れますし、対応するのが大変でした。
二宮： 特に驚いたピッチャーはいますか？
角中： たとえばエース級では岩隈久志さん（当時東北楽天、現マリナーズ）ですね。ボールがホップしてきましたし、フォークボールは空振りを取るものとストライクを取るものを投げ分けている。これはなかなか打てないなと思いました。
二宮： １軍レベルに近づくために、２軍の監督、コーチからもいろいろ教わったことでしょう。印象に残っているアドバイスはありますか？
角中： ２年目から２軍監督だったレン・サカタさんには、今まで聞いたことがないような細かいところまで教えてもらいました。走塁でベースを小さく回るテクニックには「なるほど」と思いましたね。普通、ベースを回る時には「体を倒して、なるべく膨らまないように」と言われますが、サカタさんは「顔をまず回りたい方向に向けろ」と。たとえば二塁から三塁へ進む時には、顔を最初に三塁方向へ向ければ自然と体もついてくる。確かにやってみると、その方が小さく回れる。ちょっとしたコツで変わるんだなと納得しました。
「少々のケガでは痛がるな！」
二宮： 2010年からは現ヘッドコーチの高橋慶彦さんが２軍監督になりました。現役時代の慶彦さんは自他ともに認める“練習の虫”。それまでのボビー・バレンタイン監督が進めてきた“米国流”と比べたら、日々の練習はハードになったのでは？
角中： かなり厳しくなりましたね（苦笑）。練習量も増えましたけど、一番、慶彦さんから言われたのは「気持ちの重要性」ですね。スライディングで足をちょっとひねって痛がっていたら、「オマエ、１軍でも“痛い”って言うのか！」って怒られました。
二宮： アハハハ。慶彦さんの広島での現役時代には衣笠祥雄さんもいましたし、ちょっとやそっとのことでは休めない環境でしたからね。
角中： 少々のケガでは許してもらえませんでしたが、唯一、「ふくらはぎだけは無理したらダメだ」と。慶彦さんが現役時代に故障して悪化させた経験があるみたいで、ふくらはぎにデッドボールが当たったりすると、すぐに交代させられました。
二宮： 打撃に関しては金森栄治コーチがいます。ボールをギリギリまで引きつけ、脇を締めて打てという独特の理論ですが、どう感じましたか？
角中： 正直、最初は金森さんの言っていることがなかなか理解できませんでした。でも、打席の中でタイミングがとれるようになると、“あぁ、こういうことを言っていたんだな”と分かるようになってきましたね。今では脇を空けないで、体幹の力を使って打つ金森さんの方法を意識して実践できていると思います。
二宮： 今季の好成績でファンの注目度も高まっています。最後に「角中勝也のここを見てほしい」というアピールポイントを教えてください。
角中： うーん、何でしょうね。まだ、特にないですね（苦笑）。あまり目立ったところのない選手なので、今から「これだ」というものを見つけて、確立していきたい。それが今後の課題だと感じています。
（おわり）
＞＞第１回はこちら＞＞第２回はこちら＞＞第３回はこちら※なお現在発売中の小学館『ビックコミックオリジナル』（2012年10月５日号）では角中選手のインタビュー記事が掲載されています。こちらもぜひご覧ください。
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角中勝也（かくなか・かつや）＞
1987年５月25日、石川県出身。右投左打の外野手。日本航空第二高（現日本航空石川）から06年に四国アイランドリーグの高知に入団。１年目で打率.253、４本塁打、28打点の成績を残す。持ち味の打力を買われ、同年の大学生・社会人ドラフト７巡目で千葉ロッテから指名を受ける。ルーキーイヤ―の07年に同じアイランドリーグ出身の西山道隆（福岡ソフトバンク）から初安打。翌年には初本塁打を放つ。昨季は８月以降、１軍に定着。自己最多の51試合に出場し、打率.266だった。６年目の今季は開幕こそ２軍だったが、５月以降は１軍で５番打者に定着。勝負強い打撃でチームに貢献し、独立リーグ出身者では初のオールスター出場を果たした。180センチ、80キロ。背番号61。
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（構成：石田洋之）
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