吉田進(日本パラ・パワーリフティング連盟ハイパフォーマンス・ディレクター)<後編>「指導者養成が今後の課題」
二宮清純: パラ・パワーリフティングの競技人口は?
吉田進: 連盟登録選手は約70人です。東京は主に調布市にある東京都パラスポーツトレーニングセンターで、20人ぐらいが練習しています。西日本は京都府城陽市のサン・アビリティーズ城陽が拠点です。あとは全国の民間ジムで練習しています。

二宮: 当然、指導者も必要ですよね。
吉田: その通りです。特に今は指導者を育てていかなければなりません。現在、全国のジムでトレーニングしている人たち全員が適切な指導を受けられているわけではない。選手たちを育てていくには、いい指導者が必要。今年の目標は指導者の数を増やしつつ、全体のレベルを引き上げていくことです。
二宮: 現在、吉田さんの後継者と呼べるような方は?
吉田: 後継者を1人探すというよりは、数名のコーチのレベルを上げようと考えています。後継者はその中から見つけていければいい。場合によっては、パラ・バワーリフティングのコーチでなくてもいいんです。健常者のパワーリフティングのコーチングと、パラ・パワーリフティングのコーチングは、筋肉の使い方も違うし、フォームもかなり違います。その違いを理解しつつ、世界のトレンドにも柔軟に対応できる指導者を求めていますし、つくろうと努力しています。
二宮: JPPFでは吉田さんがハイパフォーマンス・ディレクター、奥様(寿子さん)がハイパフォーマンス・アシスタントディレクターとして代表強化を担っています。お2人はどう役割分担をされていますか?
吉田: 彼女はきっちりとした性格で理論派、それに対して私は感覚派です。ということで、私が閃いて、良い案だと思って提案すると、それをカミさんが検証し、取りまとめてくれます。二人三脚がうまく行っているということでしょう。
二宮: それは指導においてということでしょうか?
吉田: 指導も性格も、真反対な2人がうまく噛み合っているという感じですかね。時々夫婦げんかしているような場面もありますが。
もっと国際交流を
二宮: こと指導に関しては、2人で意見を交わしながら、指導方針を決めているのでしょうか。
吉田: そうですね。トレーニングプログラムは、基本的に私がつくっています。そのプログラムには穴がないか、細かいところをカミさんがチェックしてくれています。またハイパフォーマンス・ディレクターは強化だけにとどまらない。私があまり得意でない事務的な作業は、カミさんと事務局長がサポートしてくれています。
二宮: 吉田さんは2021年にJPPF理事長を役員定年(選任時70歳未満)で退き、同年に強化の責任者を担うハイパフォーマンス・ディレクターに就任しました。
吉田: これまであまり理事長らしいことをやってこなかったかもしれません。でも海外とのコネクションをつくることや、みんなの個性をどう引っ張っていくかについては頑張ってきました。ハイパフォーマンス・ディレクターになってからは、その全てをやめたわけではありませんが、強化に重点を置ける今の仕事の方が私には合っている。改めて私は現場向きなのだと感じています。
二宮: ハイパフォーマンス・ディレクター就任後、日本代表が強くなっている実感は?
吉田: もちろん、かなり底上げできている実感があります。日本人が強くなっている一方で、世界も同じように成長している。具体的に言うと、トップ選手は自己最高記録を1kg伸ばすにも相当な時間とエネルギーが必要です。若い日本選手は年間5kg、中には10kg伸ばす人がいるなど、順調にレベルアップできています。ところが世界のトップには、もう頭打ちだろうと思っている選手が平気で10年間毎年2kg程度、自己記録を伸ばし続ける選手がいる。その秘密を探りたいです。日本のトップ選手の一部は、世界ランキングの10位前後に入っていて、世界とも競えるレベルにいます。しかし、そこで満足はできません。そこからさらに世界ランキング5位程度まで上げていかなければなりません。世界との差はまだまだ大きいと感じています。強豪国との差を埋めるには、どうすべきかを考え、実行していくことが必要だと思っています。
二宮: 今後の抱負は?
吉田: 世界の国々と、もっと交流を図りたいと思っています。強豪国はどんなものを食べ、どんな練習をしているのか。指導者がどう支えているのかを学びたい。合宿に押しかけて観察したいですね。できれば日本の選手を連れて行って、強豪国のトレーニングを経験させてもらいたい。それをこの1、2年でできれば、日本はもっと変わると思っています。まずは近くて、レベルも上がってきている韓国に目をつけています。韓国のヘッドコーチとは親しいので、現在打診中です。
二宮: 国外とのパイプが大事ですね。
吉田: その通りです。私は過去には健常者の協会の中で、国際関係の仕事を長くやっていました。2004年から2015年までアジアパワーリフティング連盟会長でした。そういう関係で今でもアジア各国にはたくさんの友人がいます。そのパイプを生かし、アジア強豪国と交流し、各国の強化方針を身をもって学び、日本に合うかどうかを確認しながら、日本選手の強化に役立てたいと考えています。
(おわり)

<吉田進(よしだ・すすむ)プロフィール>
NPO法人日本パラ・パワーリフティング連盟ハイパフォーマンス・ディレクター。1950年9月26日、東京都出身。都立立川高校、京都大学は水泳部に所属。大学時代、トレーニングの一環としてウエイトトレーニングに取りつかれ、大学卒業後、本格的にパワーリフティングの道に進む。全日本パワーリフティング選手権5度優勝。1984年、妻・寿子と府中市で「パワーハウス・ウエイトトレーニングクラブ」をスタート。多くの世界チャンピオン、日本チャンピオンを輩出した。2000~2015年は国際パワーリフティング連盟常任理事、アジアパワーリフティング連盟会長。2000年からの20年間、日本パラ・パワーリフティング連盟理事長を務めた。兼務していた強化委員長ならびに事業委員長を続投。2022年からハイパフォーマンス・ディレクターに就任した。著書に『パワーリフティング入門』(体育とスポーツ出版社)などがある。