地味ながら指導力には定評がある。最下位からの浮上を目指すオリックスにとってはうってつけの人物ではないか。
 オリックスの次期監督に森脇浩司監督代行が昇格することになった。監督代行に就任以降の成績が6勝2敗と良かったことも白羽の矢が立った理由のひとつのようだ。

 現役時代(近鉄−広島−南海・ダイエー)は守備の名手として鳴らした。通算打率2割2分3厘ながら18年間も現役を張ることができたのは、野球をよく知るユーティリティープレーヤーだからである。

 コーチとしての実績も豊富だ。引退後はダイエー・ソフトバンク、巨人、オリックスで監督代行やヘッドコーチ、守備走塁コーチなどを務めた。ダイエー時代にはマリナーズの川宗則を一人前に育て上げた。熱心な指導は評価が高い。

 何度かヒザを交えて話したことがある。中でも、こんな言葉が印象に残っている。
「一生懸命やったから仕方がない。負けようと思って負けているわけじゃない。僕に言わせれば、そんなことを言う選手は財布を持たずに買い物をするようなもの。プロとしての基本がなっていない。
 結果が良ければ人一倍、いい思いができる。そのかわり、悪かったらマスコミやファンに叩かれる。プロとして、それは当たり前。強いチームと弱いチームを比較した場合、同じ一生懸命でも、その度合いが違う。僕ならまず、そこから指導します」

 森脇と言えば、忘れられないのが脳腫瘍で他界した津田恒実との友情だ。近鉄から広島に移籍してきた森脇は、同い年ということもあり、すぐに気の置けない関係となった。
 臨終の間際まで寄り添い、森脇が結婚した際には、披露宴に泣き津田の席まで用意したという泣かせるエピソードもある。

 泉下から津田も森脇の活躍を見守っているのではないだろうか。いずれにしても、オリックスにしては久々のヒット人事である。

<この原稿は2012年11月5日号の『週刊大衆』に掲載されたものです>

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