観客少ないACLE……現状は将来の妨げでしかない

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 進んで認めたがる者はあまりいないだろうが、プロにとっては、負けることもまた仕事の一つである。

 

 負ける者がいなければ、勝つ者もいない。負けるたびに打ちひしがれていては、次の試合に差し支えが出る。ゆえにほとんどの場合、プロはアマチュアとは比べ物にならないぐらい淡々と敗北を受け止め、できる限り早く痛みや苦しさを意識の中から追い出そうとする。

 

 だが、そんな彼らであっても、競技生活の中で何回かは、涙を堪えきれない場合に遭遇する。勝てた試合、勝つつもりだった試合、どうしても勝ちたかった試合。取り逃したものの大きさが、時にプロとしての習性を押しつぶす。

 

 ACL準決勝で逆転負けを喫した直後、神戸の武藤が涙を流していた。彼がどれくらいこの試合に懸けていたかがうかがえる涙だった。「サウジアラビアのチームほど強力になるのは不可能だ」といったのは試合後のスキッベ監督だが、武藤の考えは違ったようだ。勝つのが「不可能」な相手に負けて、あれほど悔しがる選手はいない。

 

 前回覇者でもあるアルアハリは、昨年の決勝で川崎Fを下している。少なくとも、わたし個人に関する限り、ほとんど悔しさを覚えなかった敗戦だった。川崎Fも奮闘したが、相手があまりにも強すぎた。1年後のスキッベ監督の言葉は、そのまま当時のわたしの印象だった。

 

 正直、昨年の川崎Fが見せつけられた差を、神戸が一気に詰めた、とは思えない。依然として、力の差はあったし、展開次第では大差がついていた可能性もあった。だが、1年前に同じJのチームを粉砕したサウジアラビアの巨人を相手に、武藤は勝ちに行っていたし、勝てるつもりだった。つまり、意識のうえでは完全な射程圏内に捉えていた。

 

 まずは、そのことを称賛したい。

 

 神戸が敗れた翌日には、町田がUAEのアルアハリを下し、見事に決勝進出を決めた。チームの歴史や規模を考えれば、これは大変な快挙である。プロとは違い、負ければジ・エンドという高校サッカーの世界で結果を出し続けてきたトーナメントのスペシャリスト、黒田監督の真骨頂、面目躍如といったところか。決勝の相手は更なる強敵だが、番狂わせの可能性は十分にある。

 

 残念だったのは、終盤もつれにもつれた町田の激闘が、アングルによっては「無観客試合?」と言いたくなるほどガランとしたスタジアムで行われたことである。日本対UAEの対決にサウジの人々が関心を示さなかったということなのだろうが、アジアサッカー連盟(AFC)はあの状況をどう考えているのだろうか。

 

 アジア最強を決める舞台を、いつかは欧州の地位、レベルにまで引き上げたい。もしAFCにそんな野望があるのであれば、準決勝ですら観客を集められない現行のシステムは、将来への妨げでしかない。あの光景を見て、欧州ではなくアジアに魅力を感じる若い世代など断じて生まれない。

 

 AFCが求めるのは、アジアの繁栄なのか、それとも目先のオイルマネーなのか。

 

 過酷な状況での試合が体験できるという点において、日本にとってこの大会の持つ意味は大きい。だが、このままの大会方式が続く限り、ACLはサウジによる、サウジのための、サウジ代表を弱体化させる大会、でしかなくなる。進んで認めたがる者はあまりいないだろうが。

 

<この原稿は26年4月23日付「スポ-ツニッポン」に掲載されています>

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