伊東勉が千葉ロッテの監督に就任したことで、来年のパ・リーグは西武黄金期を支えた3人の元名選手が采配を競うことになる。後の2人は渡辺久信(埼玉西武)と秋山幸二(福岡ソフトバンク)だ。

 3人とも既に監督として日本一を達成しており、経験、実績ともに申し分ない。年齢も秋山、伊東が50歳。渡辺が47歳と、指揮官としては、ちょうど脂が乗る頃だ。
 揃って西武時代は名将の誉高い広岡達朗や森祇晶の薫陶を得た。強いチームで長期に遭渡ってレギュラーを張った経験は何物にも代え難い自信になっているはずだ。

 西武OBで落合中日の4度のリーグ優勝に主に投手コーチとして貢献した森繁和が、いつだったか、こんな話をしていた。

「僕が西武に入った頃はいろいろなチームからの寄せ集めだった。たとえば江夏豊さんだったら、強かった頃の広島の話をする。捕手の黒田正宏さん(阪神ヘッドコーチに就任)だったら野村南海の話になる。
 他チームの先輩と飲みに行っても、たとえば山田久志さんや福本豊さんの話は勉強になるんです。酔った勢いで“オマエにはクセがあるんだよ”とポロッと教えてくれることもありました。何しろ黄金時代の阪急のスターですから、言っていることに説得力がある。
 ところが弱いチームの選手と話をしても、あまり勉強になることがないし、第一、聞いていても参考にならない。その意味では将来、指導者になる上で、どんなチームにいたかは大変、重要な要素だと思いますね」

 言われてみれば、確かにそのとおり。V9時代の後は巨人OBの監督が幅を利かせた。先に紹介した広岡、森以外にも、藤田元司、長嶋茂雄、王貞治が日本一になっている。生え抜きではないが、74年にロッテを日本一に導いた金田正一も巨人OBだ。

 V9巨人に勝るとも劣らない強さを誇ったのが80年代から90年代にかけての西武。今後は清原和博や工藤公康らにも監督のお呼びがかかるかもしれない。

<この原稿は2012年11月26日号の『週刊大衆』に掲載されたものです>

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