躍進のブラックラムズ、ファミリーとつくった景色 ~リーグワン~

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「JAPAN RUGBY LEAGUE ONE」(リーグワン)ディビジョン1のリコーブラックラムズ東京が2025-26シーズン報告会を6月13日、東京・二子玉川ライズ ガレリアで開催した。チームのオフィシャルパートナー契約を結ぶ二子玉川ライズでのシーズン報告会は今季で5回目。リーグワンがスタートしてから壮行会やイベントなどを実施している地で選手たちはファンと触れ合い、シーズンを締め括った。

 

 夏日となった土曜日の午後。熱気を感じたのは気温のせいだけではないだろう。東急の田園都市線、大井町線の二子玉川駅から降りてすぐに位置する複合商業施設ライズの広場スペースに黒山の人だかりができていた。お目当てはブラックラムズの報告会である。帰国した外国人選手、宮崎合宿の日本代表(ジャパン)およびトレーニングスコッドに招集された選手、コンディション不良の選手は欠席だった。それでも、交流会や報告会などに行列ができていたのは、今季5位と好調だったことと、チームの地道な地域活動が繋がっているのではないか。

 

 西辻勤GMもこう胸を張った。
「今回の結果は偶然ではない。私はずっと『ウチのチームには若くて才能のある選手がたくさんいる』と話させていただきました。その選手たちが順調に成長したことがこの結果に繋がった。それを正しくリードしてくれたコーチ陣の成果だったと思います。また選手たちが積極的にホームタウン活動に協力してくれました。ブラックラムズをもっと強く、大きくしたいという当事者意識が芽生えた。今回の結果はここにいる皆さんを含めた全員の成果だと改めて思っています」

 

 就任2季目のタンバイ・マットソンHCが通訳を交えず、「ラムズファミリーの皆さん、世田谷の皆さん、HCのタンバイ・マットソンです」と自己紹介し、こう続けた。

「いつも熱い応援、本当にありがとうございました。今シーズン、リーグワンで初めてプレーオフに出ることができました。皆さんの応援がチームのパワーになりました。本当に感謝しています。準々決勝は悔しい結果でしたが、選手たちは自信を持ちました。私たちはまだまだできます。来シーズンはもっと成長をして、上を目指します。これからも熱い応援をよろしくお願いいたします!」

 全て日本語でスピーチした理由を本人は「日本のラグビーチームのHC。お手本となって日本語、日本の文化をリスペクトする姿勢を見せたかった」と説明した。

 

 チーム内表彰で、今季の「BEST CLUB MAN」を受賞した木原音弥は、今季、チームのブレイクダウンリーダーを務めた。
「チーム全体のスタンダードを高めようと意識して練習に取り組んできました。それが評価されて『BEST CLUB MAN』を受賞できたことを誇りに思います。またグラウンド外ではコミュニティグループに所属し、(グループの)リーダー稲葉聖馬と事業サイドで連携を取って活動してきました。駅や小学校でのチラシ配りに参加し、今シーズンは新たに選手考案のフリーマーケットなどの企画を実行することができた。認知度も上がり、ファンの方々と接することができ、僕たちにとってもプラスになった1年。ブラックラムズという組織としてレベルアップできたと思います」

 

 チーム独自の調査で、19.5%だった認知度は22.5%に上昇したという。西辻GMは地域活動参加の効果は、事業面だけにとどまらないという。
「タンバイともよく話しているのが、結果を出すためにはフィールドの中でも外でも選手たちが考えて行動する主体性が大事だと。それを育てていくための取り組みのひとつが、コミュニティグループです。どうやったらファンが増えるのかを選手たちが考え、慣れないことにもチャレンジし、解決していく。それはフィールド上でも現れるのだと思います。今シーズン、そこをリードしてくれたのが木原だった」

 

 白﨑雄吾クラブ・ビジョナリー・オフィサー(CVO)は、毎週木曜日の練習後、木原、稲葉らとコミュニケーションを取っていたという。
「昨シーズンまでは、選手側がやりたいことと、僕らが思っていることも、それぞれバラバラになっていた。そこをすり合わせる時間すら、僕らの中で勝手に忖度をしていたんです。それがむしろ選手側から『いや、やりましょうよ』と言ってくれた。駅だけでなく学校へ行って、チラシを配ると発案したのも選手たちです僕らがそれを強要するわけじゃなくて、選手たち自主的にやってくれている。グラウンド外のところでもチームの価値を高めてくれています」

 

 5月23日の準々決勝は、チームにとって忘れられない一日となった。あと一歩届かなかった準決勝への切符。試合を終わらせるためショットを選択したSO中楠一期は、PGを外した悔しさから「終わった後、1週間ぐらいは悔しくて眠れなかった」と明かす。それでも選択に後悔はないという。「選択の正解はすべて結果論でしかありませんが、間違ったものではなかったと思っています」。キックは外れたがトライエリアからのカウンターアタックだった。この100m近い距離をミス、反則をせずに攻め抜いた相手の東京サントリーサンゴリアスを褒めるべきだろう。

 

 試合終了直後、ブラックラムズのメンバーがバックスタンドのファンへ挨拶に行くと、温かい声援と拍手で迎えていた。私も当時、取材でピッチサイドにいたが、その光景は脳裡に焼き付いている。HO大西将史は「こんなに愛されるチームはなかなかない。今日(シーズン報告会)も、たくさんのファンの皆さんに集まっていただいた。感謝の気持ちをしっかり伝えて、来シーズンも応援していただけるようにやっていけたらと思います」と語った。「正直、その瞬間は悔し過ぎて地面しか見ていなかった」と振り返るのは中楠。ファミリーと呼ばれるファンに対し、敬意を払う。
「勝っても負けても、いつも僕たちを信じて、応援してくれる。どんな結果であろうと、相手チームもリスペクトしているファンの方々。すごく温かいものを感じていた。最後までそういう姿勢でいてくれたことをうれしく思います」

 

 スタンドでこの光景を見ていた西辻GMはこう目を輝かせた。
「あの姿は今でも焼きついています。改めて、“すごいクラブになってきた”と思いました。あれだけファンが応援してくださっていて、負けた選手たちも感じるものがあったと思います。実際、次の日にはもうグラウンドで走っている選手もいた。あの日の(バックスタンドの)絵は僕も忘れられない。そして、あの風景は僕がつくりたかったもののひとつです」

 同じくスタンドにいた白﨑CVOは、試合中の会場の雰囲気に変化を感じたという。
「後半、ブラックラムズの得点が入るたびに、スタジアム全体が熱狂していくのを感じました。僕が(BR東京に)ジョインする前、同じ秩父宮でサントリーさんと戦って逆転負けした試合を現地で観戦しました。その時のスタジアムの雰囲気は、終盤、ブラックラムズが勝っていたにも関わらず、“最後はサントリーが勝つよね”という感じだった。でも、この間の試合はそうじゃなかった。それを見れたことがうれしかった」

 

 ファミリーへの誇りを胸に来季のさらなる飛躍を誓う黒羊軍団。まだ見ぬ景色を求めて――。

 

(文・写真/杉浦泰介)

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