第322回 最高の景色に向けカギ握る森保采配
スポーツニッポン新聞社が主催する「第80回スポニチフォーラム」で、元サッカー日本代表のラモス瑠偉と対談した。彼とは、もう40年来の付き合いだ。
「北中米W杯での日本代表のキーパーソンは?」と問うと、ラモスは「森保一代表監督」と答えた。
私も同感だ。というのも、日本が初めてW杯に出場した1998年フランス大会から、2018年ロシア大会まで、選手枠は23人、交代枠は3人だった。
ところが前回の22年カタール大会から選手枠は26人、交代枠は5人にまで拡大した。
こうなると、指揮官のカードの切り方の巧拙が勝敗に直結してくる。
これを受け、ラモスは「ここで守るのか、点を取りにいくのか、中盤を厚くするのかなど、監督の腕次第で勝敗は変わってくる」と語った。
W杯のような大舞台を戦う指揮官にとって、最大の武器は経験だ。18年ロシア大会でのコーチを含めると、森保にとって今回の北中米大会は、3度目のW杯となる。22年大会は1次リーグでW杯優勝経験国のドイツ、スペインを撃破し、世界中を驚かせた。
欧州のある戦術分析サイトは「モリヤスは個人の才能よりも集団の秩序を信じる冷静なサッカー頭脳の持ち主。日本は単なる規律あるアンダードッグというイメージを超え、エリート相手にも勝てる本格的な戦術チームとして見られるようになった」と最大級の賛辞をおくった。
そんな森保にも後悔していることはある。18年ロシア大会でのベルギー戦。コーチの森保は監督の西野朗に対し、助言する立場ながら、それをためらってしまった。
日本は後半23分まで2対0とリードしていながら、それ以降ベルギーのなりふり構わない反撃に遭い、29分に同点に追い付かれる。そして悪夢のような逆転負け。アディショナルタイムでの惨劇は“ロストフの14秒”と呼ばれ、NHKのドキュメンタリー番組にもなった。
後日、森保は語ったものだ。
「悔いがあるとすれば、DFの植田直通を入れてくれって、西野さんに言い出せなかったこと。ベルギーが背の高い選手を入れてきて、それに対応するには(屈強な)植田を入れるのがいいだろうと。実はW杯直前、親善試合でのパラグアイ戦で、植田はヘディングで相手に勝っていた。海外の選手たちにも十分通用していた。代えるなら、ここしかなかった……」
失敗の記憶は、人を強く、そして賢くする。高くついた授業料ではあったが、今となっては最高の景色を見るための肥やしだったと考えたい。
<この原稿は『週刊漫画ゴラク』2026年6月19日号に掲載されました>