明大、名門復活のカギ握る1年生トリオ ~全日本学生柔道優勝大会~
大学柔道の団体日本一を決める「内海ホールディングス presents 2026年度全日本学生柔道優勝大会」(全学)が6月27日からの2日間、東京・日本武道館で開催される。注目は男子の明治大学。全学初代王者で16度の優勝を誇る名門だが、2001年度の第50回大会以来、優勝から遠ざかっている。しかし今年度は、昨年のインターハイ王者3人が加わり、東京学生柔道優勝大会(都学)を26年ぶりに制するなど、勢いに乗っている。25年ぶりの王座奪還へ、中濱真吾監督が「即戦力」と期待を寄せる1年生トリオ(姥三士郎、竹下智哉、時田開仁)に話を聞いた。

少数精鋭の稽古環境
――5月の東京学生優勝大会を振り返って、いかがでしたか?
時田開仁: 明治に入って、初めての団体戦ということもあって緊張しましたが、先輩方が「1年生らしく、思い切って戦ってこい」と言葉をかけてくれました。「後ろには俺らがついているから」とも。おかげで自分の柔道が、1年生らしくノビノビできたと思っています。
竹下智哉: 自分も大学に入って初めての団体戦という緊張感がありました。初戦は緊張で、自分の柔道ができなかった。準決勝はポイントを取ることができませんでしたが、体が動くようになってきた。決勝では自分の柔道ができたと思っています。
姥三士郎: 自分は準決勝と決勝は出られませんでした。起用してもらった1、2回戦でも、あまりいいところがなかった。今は全学に向け、少しでもいいところが出せるように頑張りたいです。
――明大に進学した理由は?
姥: まず福岡県出身の明治の先輩が強かったからです。OBには、自分と同じ90kg級では徳持(英隼)さん(2026年グランドスラムパリ大会銀メダル)、増山(香補)さん(2021年グランドスラムバクー&22年同東京大会金メダル)、森健心さん(2017年世界カデ柔道選手権大会銀メダル)などがいた。加えて、他の大学と比べて部員が多くないので、その分、濃い稽古を積めると思ったからです。道場が大きくない分、先生方の目が届きやすく、稽古に緊張感がある。先輩方と稽古環境が決め手です。
竹下: 自分も稽古環境が大きかった。大濠も少数精鋭で、質の高い稽古をしていたので似ていると感じました。あとは三士郎や開仁が行くのも知っていたので、2人がいるなら日本一を目指せるという思いもありました。
時田: 自分はこの2人みたいに、自ら追い込み、努力を積めるような人間ではありません。小さな道場で、少ない人数の中で、先生方の目が届くところの方が、自分に合っていると思いました。あとは、この2人が入るのも知っていたからです。団体戦で仲間になったら頼もしいし、努力できる選手だと知っていたので、2人に引っ張ってもらって自分も頑張りたいと思ったからです。
――東京学生優勝大会に続き全日本学生優勝大会でも、この同期3人がメンバー入りしました。
姥: 団体戦なので、一緒に戦うという意味では、本当に心強い存在です。2人は準決勝、決勝も出て、チームのポイントゲッターとして活躍していた。“すごいな”と思う半面、少し悔しい気持ちもあります。
竹下: 練習では投げたり、投げられたりしている。切磋琢磨できる仲間です。
時田: 先日、一緒に個人戦の大会(5月のトルコジュニア国際大会)に出たのですが、2人の方が勝ち進んだ(竹下=優勝、姥=5位、時田=2回戦敗退)ので、悔しい気持ちがあります。ただ、2人には柔道に対する向き合い方がすごく尊敬できる。悔しいよりも尊敬という言葉のほうが、自分にとってはしっくりきます。
――では、他の2人がすごいと感じる部分を教えてください。
姥: 開仁は勝負強い。都学でも感じましたが、“絶対取ってくれる”というイメージを持っています。あとはオンとオフの切り替えがすごく上手な選手ですね。智哉は、同じ福岡県出身で小さい時から知っていますが、柔道を楽しんでいるイメージがあります。力強さは時田開仁、巧さは竹下智哉という印象です。
竹下: 今、三士郎が言った通り、開仁はとても勝負強い。決勝では、大成(時田の出身高校)の先輩相手に強気に攻め、優勢勝ち。日頃はとても優しく、みんなに気配りができるタイプ。試合になると、まわりを気に掛けるところは変わりませんが、スイッチが入ると顔が怖いです。三士郎は文武両道をこなす、尊敬できる存在です。柔道では、お互い教え合うこともありますが、勉強は自分が教えてもらっている。あとは努力家。そこも見習うべき点です。
時田: 2人は自分にできない動き、技を難なくできるので「天才だな」と思う。ただ天才なだけでなく、ものすごく努力家です。技術的には智哉が一発一発に怖さのある選手。三士郎にもそういう面はありますが、技数がさらに豊富な印象です。自身より大きな選手に対し、技をつなげて崩すことができる。乱取りを重ねるごとにやりにくくなる選手ですね。
「結果で恩返し」
――団体戦には個人戦とまた違う楽しさや難しさがあると思いますが、ご自身ではどう捉えていますか?
姥: 自分は団体戦が好きです。個人戦と違い延長戦がない分、ポイントを取りにいく場面と、引き分けでもいいという場面があります。正直、団体戦の方が難しいのですが、その分、勝った時の嬉しさは、団体戦の方が大きい。勝ちたいという気持ちは、人一倍強いと思います。
竹下: 自分はその時の状況によります。上級生で出る場合は嫌いなんですが、下級生で出るのなら好きですね。
――それはなぜ?
竹下: 1年生の方がノビノビ戦えるからです。頼れる先輩たちがいると思いながら戦うと、楽に戦える。逆に自分が上級生として出た場合、“明治のため”“後輩のため”などと責任がより重くなり、プレッシャーが大きくなるから苦手意識があります。
――時田選手は団体戦に対する印象は?
時田: 段々、好きになってきました。自分は責任を感じやすいタイプで、いろいろ考えてしまう。それで嫌いだったのですが、仲間から一つひとつの言葉で支えてもらっていると感じるようになってから、好きになりました。
――全日本優勝大会に向けての意気込みを。
姥: 都学を26年ぶりに優勝しましたが、全学も同じくらい(25年)優勝できていないと聞きました。もう一度、明治が日本一になる姿を、想像しながら今、頑張っています。自分がチームに貢献できるよう、いつでも出られる準備をしていきたいと思っています。今、投げ込みだったり、打ち込みだったり、受けてくれる同級生とか、いろいろ教えてくれている先輩のためにも優勝しないといけない。みんなの思いを背負って戦っていきたいと思います。
竹下: 自分は上を見過ぎず、一つひとつ試合に勝っていくイメージでいます。ポイントゲッターになれているとは言えませんが、任された試合は相手を倒すことにだけ集中したい。
時田: 明治はOBの先輩方、在学中の先輩から同級生まで、みんなが支え合い、優勝を目指しているチームです。ここまで支えてもらった分、結果で恩返ししたいという気持ちが強い。都学で優勝し、浮ついた気持ちになるのではなく、勝って兜の緒を締めよ、と。その言葉通り、一つずつ着実に毎日稽古を重ねていきたいです。
――個人としての目標をお聞かせください。
姥: 今年7月に東京都ジュニア柔道体重別選手権大会があるので、そこで9月の全日本ジュニア柔道体重別選手権大会につなげたいです。全日本ジュニアで優勝できれば、世界ジュニア柔道選手権(10月、ウズベキスタン)の代表に選ばれる。まずは一戦一戦。東京ジュニアからレベルが高いのはわかっていますが、全日本ジュニアでの優勝を目指して頑張ります。
――昨年の全日本ジュニアでは、時田選手と竹下選手が高校生ながら優勝しています。
姥: 自分もインターハイを優勝し、ジュニアでも優勝を目指していたのですが、5位でした。2人とはまだまだ差があると感じたので、今年優勝して追いつきたいと思っています。
――竹下選手の目標は?
竹下: 自分は昨年優勝したことにより、推薦で全日本ジュニアに出場できます。前回王者というプレッシャーがありますが、当然負けられないという気持ちも当然あります。正直、そういった状況下で、戦うのは苦手なのですが、そのプレッシャーに打ち克ち、世界ジュニア代表の座を勝ち取りたいです。
――時田選手は?
時田: 自分は引退するまでに、全日本選手権に出たいです。
姥&竹下: 出たい?
時田: 優勝したいです! 小さい頃は「オリンピックで優勝したい」「全日本選手権で優勝したい」と気楽に言っていましたが、上のレベルを知れば知るほど、気軽には口に出せない。まずは目の前の試合を一つひとつ勝ち、それを積み重ねていくことが、今の自分の目標です。
<姥三士郎(うば・さんしろう)プロフィール>
2007年12月2日、福岡県生まれ。明治大学1年。90kg級。身長174cm。得意技は寝技と背負い投げ。父親の影響で4歳から柔道を始める。篠栗中学校を経て、東福岡高校に進学。高校3年時には全国高校総合体育大会(インターハイ)の90kg級で優勝。全日本ジュニア柔道選手権は5位入賞。今年4月に明大に進学し、1年生ながら団体戦のメンバーに選出され、東京学生柔道優勝大会の優勝に貢献した。趣味は目下勉強中の麻雀。好きな言葉・座右の銘は東福岡高校の校訓のひとつ「努力に勝る天才なし」。
<竹下智哉(たけした・ともや)プロフィール>
2007年4月2日、福岡県生まれ。明治大学1年。100kg級。幼稚園の年長から柔道を始める。田主丸中学3年時に全国中学校柔道大会の男子90kg級で準優勝。福岡大大濠高校3年時は全国高校総合体育大会(インターハイ)の100kg級を優勝。全日本ジュニア柔道選手権でも同階級を制した。今年4月に明大に進学。1年生ながら団体戦のメンバーに選ばれ、東京学生柔道優勝大会での優勝に貢献した。身長177cm。技は同期の姥と時田によれば「何でもできる」とのこと。「器用貧乏なのが課題です」と本人。趣味・特技はカラオケ。好きな言葉・座右の銘は「努力は報われる」。
<時田開仁(ときた・かいと)プロフィール>
2008年1月11日、滋賀県生まれ。明治大学1年。100kg超級。小学5年で柔道を始める。愛知の大成中学・高校に進んだ。中学3年時に全国中学校柔道大会の男子90kg超級で3位入賞。高校3年時には、全国高校総合体育大会(インターハイ)の100kg超級を制した。全日本ジュニア柔道選手権は100kg超級で優勝。今年4月に明大に進学し、1年生ながら団体戦のメンバーに選ばれ、東京学生柔道優勝大会での優勝に貢献した。身長183cm。得意技は大外刈りと裏投げ。趣味は音楽鑑賞と旅行。
(取材・構成・写真/杉浦泰介)
BS11では「全日本学生柔道優勝大会」の模様を6月28日(日)18時から放送します。男子の解説は天理大学柔道部師範の穴井隆将さん、女子はパリオリンピック女子57kg級金メダリストの出口クリスタさんが務めます。ぜひ放送をお楽しみに!