昨年暮れ、日米での20年間に及ぶ現役生活にピリオドを打った松井秀喜に「2020年東京五輪招致の旗手、野球競技復活の顔になって欲しい」との声が上がっている。

 ハワイでの日本プロ野球名球会総会で、WBC日本代表監督も務める山本浩二副理事長は「名球会は20年東京五輪招致や野球復活に協力していこうと話し合ったばかり。(松井は)日米でこれだけの実績を残している選手。大きな枠組みの中で活動して欲しい」とエールを送った。
 全くもってそのとおりなのだが、その前に松井には是非やってもらいたい仕事がある。それは3月に開催されるWBCでのアンバサダー役だ。
 たとえば「日本代表特別アドバイザー」というのは、どうか。

 日本で10年、米国で10年プレーした松井は、言うまでもなく双方の野球に精通している。各国の代表選手の中には、松井とともにプレーしたことのある者がたくさんいる。松井からの情報は日本代表にとっては喉から手が出るほど欲しいものだろう。

 それでなくても、今回の代表候補選手の中にはメジャーリーグ経験がある者が少ない。現時点では東北楽天の松井稼頭央だけだ。彼にしても28人の代表に選ばれる保証はなく、仮に選ばれたとしてもスタメンに抜擢される可能性は少ないと見られている。

 また3回目にして初めての優勝を狙う米国はヤンキースでワールドシリーズ3連覇を達成した名将ジョー・トーリが率いる。周知のようにトーリと言えば松井がヤンキースの時の監督。それから5年間に渡って苦楽をともにした。
 松井の引退の報に接した際には「ヒデキの監督だったことを誇りに思う」とコメントした。

 順当に行けば、日本代表と米国代表は準決勝以降で対戦することになるが、松井がトーリと立ち話をしているのを見るだけで日本の選手たちは気後れせずにすむのではないか。そんなことをふと考える年の始めである。

<この原稿は2013年1月28日号の『週刊大衆』に掲載されたものです>

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