オール電化の影響か、家庭からストーブが消えるにつれ、プロ野球のストーブリーグも近年、すっかり下火になってしまった。
 しかしながら、ストーブリーグの主役であるトレードは、プロ野球における重要な戦力補強の手段である。

 過去における最大のトレードと言えば阪神のエース・小山正明と大毎の主砲・山内一弘の1対1か。西武が球界に参入した際の阪神の大スター田淵幸一らと西武の前身クラウンライターの若武者・真弓明信、若菜喜晴らとの2対4の大型トレードも忘れられない。

 しかし、世間を驚かせたという点ではロッテで3冠王3度の落合博満を中日の星野仙一監督(当時)が引き抜いた時が一番か。中日はクローザーの牛島和彦ら3人を放出した。

 これは異例中の異例だが「空白の一日」を利用して巨人と契約をかわした江川卓は、セ・リーグ会長によってそれが却下されたため、かたちの上では一度、阪神の支配下選手となり小林繁との交換トレードで巨人入りを果たしている。もう、今から35年も前の出来事だ。

 さる1月23日、久々の大型トレードが北海道日本ハム、オリックスの両球団から発表された。日本ハムがWBC日本代表候補糸井嘉男と06年の新人王・八木智哉の2人。一方のオリックスは03年の新人王。木佐貫洋、大引啓次、赤田将吾の3人。

 損得勘定だけで見れば球界屈指の外野手である糸井を放出する日本ハムにマイナス面が大きいような気がする。しかし彼はポズティング・システムを利用してのメジャーリーグ挑戦を直訴している。
 国内FA権の取得は3年後、海外FA権の取得は4年後に迫っている。チームの将来を見据えての判断だったということなのだろう。

 いずれにしてもトレードは選手のモチベーションを高め、チームに活力を与える。双方にとってウィンウィンの結果になればいいのだが、決算が明らかになるのは数年後だ。

<この原稿は2013年2月18日号の『週刊大衆』に掲載されたものです>

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