二宮: 近年の日本のサッカーシーンは女子サッカーの躍進を抜きには語れません。高橋先生がなでしこジャパンの公式応援キャラクター「サッカー少女・楓」を作成したきっかけは?
高橋: 2011年の女子ドイツW杯の時に依頼がありました。なでしこジャパンの壮行会で、お披露目するようなかたちです。ちょうどW杯とロンドンオリンピックが続けてあったので、僕の考えとしては、両方を応援するという思いだったんですが……(笑)。

 日本らしさを感じるサッカーが見たい

二宮: W杯で優勝ですからね(笑)。さすがに予想できなかった?
高橋: いいところまでいくとは予想していましたが、まさか優勝してしまうとは思っていなかったのが本音です(笑)。女子サッカーを盛り上げていくという意味で「楓」を描いたんですけど、彼女たちが自力でブレイクしてくれました。なので、あまり意味がなかったのかなとも(笑)。

二宮: いやいや(笑)。W杯はどのあたりからなでしこが優勝できると思いましたか?
高橋: やっぱり……ドイツ戦に勝った時ですかね。あの試合にしろ、米国との決勝にしろ、どこか神がかっていたように感じます。

二宮: 誰もが胸を打たれる試合でした。現地には行かれたんですか?
高橋: なんとか決勝は見に行くことができました。スタジアムのヴァルトシュタディオン(フランクフルト)は本当に満員。雰囲気がすごくよかったですね。

二宮: 男子サッカーはブラジルW杯出場に王手をかけています。ザックジャパンにはどんな印象をお持ちですか?
高橋: いい方向に進んでいるのではないでしょうか。香川真司(マンU)や長友佑都(インテル)など、日本人選手もどんどん海外に出て行っていますしね。僕もそう願っていたので、さらに強くなる可能性があるでしょうね。ただ、サッカーはそのお国柄がすごく出るスポーツ。上を目指す中でもっと日本らしさが出てくればいいなと思います・

二宮: 「日本らしさ」といいますと?
高橋: 勤勉さだったり、テクニックだったり、チームワークですかね。なでしこが先に実現してしまった観はありますが(笑)。

 マンガの世界を具現化しているメッシ

二宮: サッカーの試合はどのぐらいご覧になっているのですか?
高橋: テレビではヨーロッパのサッカーを中心に見ていますね。ただ、何となくという感じですよ(笑)。よく見ているのはやっぱりバルサ(バルセロナ)の試合ですね。

二宮: バルサのリオネル・メッシは『キャプテン翼』のファンのようですね。
高橋: ありがたいです(笑)。

二宮: メッシはアニメで見たのでしょうか。
高橋: そうだと思います。僕も海外に行った時に、現地で放送されているのを見ました。内容は日本と同じですが、もちろん声優は違います。主題歌も少し変わっていました。

二宮: 外国語の試合中継シーンは迫力がありそうですね(笑)。今、気になっている選手は?
高橋: やっぱりメッシ、クリスティアーノ・ロナウドは、ちょっと次元が違いますよね。

二宮: メッシは25試合で38ゴール(2月26日現在)。メッシやロナウドの足技などをマンガに反映させることは?
高橋: うーん、彼らはちょっと速過ぎます(笑)。さりげなくやっちゃっているんで、マンガには描きにくいと思いますね。

二宮: なるほど。マンガで描くために、実際に選手のプレーを映像で研究したりすることはあるんですか?
高橋: なんとなく、ざっくり見てという感じですかね。メッシなどは、逆にマンガの世界をピッチで具現化しているといえるのではないでしょうか。

二宮: そのほかで気になる選手は?
高橋: ネイマールの世代のこれからはちょっと楽しみですね。ただ、そういった選手が次から次へ出てくるので、覚えるのが大変です(笑)。

二宮: ハハハ。ブラジルは特に層が厚い。昨年のクラブW杯で、久しぶりにコリンチャンスが優勝したのもその証左といえるでしょう。
高橋: 僕も観戦に行ったんですが、コリンチャンスサポーターはすごかった。僕の座席の周りがブラジル人ばかりだったので、もう立ちっぱなしで試合を見ていました。

二宮: 地球の裏側の日本にあれほど多くのサポーターが来るわけですから、ブラジルの好況ぶりがうかがえます。ちなみに、クラブW杯はどこを応援していたんですか?
高橋: (フェルナンド・)トーレスが『キャプテン翼』を好きと言ってくれていたので、少しチェルシーに思い入れはあったんですけど、残念でしたね(笑)。

二宮: 世界各地でサッカーをご覧になられて、「ここはよかった」というスタジアムはありますか?
高橋: やっぱり、カンプ・ノウ(バルセロナ)。スケールが大きく、名勝負・名選手の歴史が詰まっている。アヤックス(オランダ)のアムステルダム・アレナも、高速道路からそのまま入れたりする仕組みが近代的でおもしろかったですね。

二宮: 日本のスタジアムではどこがお気に入りですか?
高橋: 一番好きなところは日立柏サッカー場ですね。なんといっても観客席とピッチが近い。一番前に座っていると、体のぶつかり合う音やスパイクのガシッというような音も聞こえてきますから。

 リアル南葛SC誕生!?

二宮: Jリーグでひいきにしているチームは?
高橋: Jリーグはフラットに見ています(笑)。ただ、日本の応援するチームがないのも寂しいなと……。東京の葛飾区出身なので、ああいう下町にチームができてくれないかなと思いますね。

二宮: 確かに、東京ヴェルディにしてもFC東京にしてもホームタウンは西のほうですからね。「葛飾FC」とか?
高橋: そうなんですよね。「リアル南葛」「南葛ユナイテッド」「インターナショナル」、なんでもいいんですけどね(笑)。地元にチームができたら、スタジアムの横に「キャプテン翼記念館」のようなものを建てるのが、今の夢ですね。翼の銅像が葛飾区に建立される流れで、行政の方にお願いしてみようかな(笑)。

二宮: 活字とマンガでは多少異なりますが、週刊誌での連載は日程がタイトで大変でしょう。ちなみに、『週刊少年ジャンプ』で連載していた時の締め切り日はいつだったんですか?
高橋: だいたい発売2週間前の金曜日ですかね。そこから逆算して、制作に入っていきます。

二宮: それだと外で飲んだり、遊ぶ暇もあまりませんね。
高橋: まあ、若い頃は割と徹夜しても大丈夫だったですからね。ただ、今は……(苦笑)。

二宮: わかります。年齢を重ねると徹夜ができなくなりますよね(笑)。
高橋: きつくなりますね(苦笑)。

二宮: 僕も昔は徹夜ができたんだけど、今は徐々に朝方にかわってきました。高橋先生はだいたい何時くらいまでお仕事を?
高橋: 深夜3時くらいまでですね。といっても僕はいつも昼に起きるんです。周りが暗くなってからのほうが集中できるので。でも、徹夜はしんどい(笑)。

二宮: そうなると趣味の時間をつくるのも大変ですね。昔は草野球をやられていたという話ですが、今は?
高橋: 今はフットサルですね。やっぱり体を動かすと気分転換にもなります。テニスも時々やりますね。

二宮: フットサルは意外と動きが激しいから、ケガの心配はないですか?
高橋: 今のところ大丈夫です(笑)。まあ編集部から手をケガすると大変なので、ゴレイロ(キーパー)はやるなと言われています。「ゴレイロだけはやるな、足折るのはいい」って(笑)。

二宮: アッハッハッ。出版社にとれば「黄金の右手」ですからね。運動神経は?
高橋: 体育は得意でしたね。マンガも「高橋先生は運動神経で描いている」と言われたり(笑)。野球や卓球、テニス、フットサル……スポーツをやっていたのはマンガにも生きていると思います。

二宮: 『キャプテン翼』にフットサルのキャラクターも登場しますが、実際にやられている影響ですか?
高橋: フットサルの技術をサッカーに生かせればいいなと。今は、サッカーの試合で足裏を使う選手も増えてきていますからね。

 描いてみたいプロレスマンガ

二宮: 今後、題材にしてみたいスポーツは?
高橋: プロレスは描いてみたいなというのはありますね(笑)。

二宮: 高橋先生が描いたら、大ブームになりますよ。描くとしたら、どんなレスラーを主人公に?
高橋: やっぱり日本人で、日本人らしいレスラーでしょうね。ちゃんと飛んだり跳ねたりできる。昔でいう吉村道明みたいな。回転エビ固めとか(笑)。

二宮: 吉村道明さんは実直なプロレスで日本人らしかったですね。なんといっても、あのカール・ゴッチから一本をとりましたからね。回転エビ固めで(笑)。では『キャプテン翼』の今後について具体的な構想は?
高橋: 翼の夢は「日本をW杯で優勝させる」ということ。ですからW杯編は描きたいですね。まあ僕も歳なので、そろそろやらないと(笑)。完結に向けて、動き出そうかなという感じですね。

二宮: 再開はいつぐらいに?
高橋: まだ、間を置こうかなと思っています。そうですねぇ……ブラジルのW杯を取材してから、としておきましょうか(笑)。

二宮: なるほど(笑)。私も含めて楽しみにしている人が世界中にいますからね。改めまして、「そば雲海 黒麹」の感想は?
高橋: 本当に飲みやすかった。香りも強すぎない。僕は和食が中心なんですが、そばソーダならどんな料理にでも合いそうですね。

二宮: 奥様もお酒はお好きですか?
高橋: カミさんも好きですね。よく風呂上がりに一杯やっています(笑)。ただ、そば焼酎とソーダ割りは飲んだことがないと思うので、家に帰って勧めておきますよ。

(おわり)

<高橋陽一(たかはし・よういち)プロフィール>
1960年7月28日、東京都生まれ。漫画家。高校時代は野球部に所属していた。アシスタントとして平松伸二に師事。80年、『キャプテン翼』で集英社主催の「フレッシュ・ジャンプ賞」に応募し、入選を果たす。翌年から同作品の連載が週刊少年ジャンプにてスタート。日本でサッカーがまだマイナーな時代ながら人気を博し、『キャプテン翼』を見てサッカーを始める少年が激増。テレビアニメも好評を得る。その人気は海外にも広がり、リオネル・メッシやアレッサンドロ・デルピエロなどが翼ファンであることを公言している。趣味は仕事の合間を縫って行なうフットサルやテニス。現在は携帯サイト「E★エブリスタ」内で『ゴールデンキッズ』を連載中(第2・第4水曜17:00更新)。この春から『週刊漫画ゴラク』にて『誇り 〜プライド〜』の連載を再開予定。


★今回の対談で楽しんだお酒★[/color]

本格焼酎「そば雲海」の黒麹仕込み「そば雲海 黒麹」。伝統の黒麹と九州山地の清冽な水で丹精込めて造り上げた、爽やかさの中に、すっきりと落ち着いた香り。そしてまろやかでコクのある味わいが特徴です。
提供/雲海酒造株式会社

<対談協力>
藪伊豆総本店
 明治15年、京橋のそば屋「伊豆本」は、神田藪そばの暖簾に包含され、「藪伊豆」となりました。その後も京橋の地で営業しておりましたが、平成8年に日本橋3丁目に移転し、現在に至ります。店先にある粉挽小屋の石臼で挽いた自家製粉の二八そばにやや辛口のそばつゆはすっきりとした味わい、江戸からの風情を伝えます。
 1階はテーブル席、2階はテーブル席と堀炬燵の小上がり、3階は6畳間と8畳間の和室です。その味噌から始まる昔ながらのそば屋のおつまみにそば焼酎のそば湯割り、最後はせいろそばで〆て、江戸町人の文化の名残をお楽しみください。毎月4、5回落語会も開催しています。
>>公式サイトはこちら

東京都中央区日本橋3−15−7
TEL:03-3242-1240
営業時間:
平日  11:00〜15:00/17:00〜21:00
土祝  11:30〜20:00(通し営業)
日曜定休

☆プレゼント☆
 高橋さんの直筆サイン色紙を本格焼酎「そば雲海 黒麹」(900ml、アルコール度数25度)とともにプレゼント致します。ご希望の方はより、本文の最初に「高橋陽一さんのサイン色紙希望」と明記の上、下記クイズの答え、住所、氏名、年齢、連絡先(電話番号)、このコーナーへの感想や取り上げて欲しいゲストなどがあれば、お書き添えの上、送信してください。応募者多数の場合は抽選とし、当選は発表をもってかえさせていただきます。たくさんのご応募お待ちしております。なお、ご応募は20歳以上の方に限らせていただきます。締め切りは3月13日(水)までです。
◎クイズ◎
 今回、高橋陽一さんと楽しんだお酒の名前は?

 お酒は20歳になってから。
 お酒は楽しく適量を。
 飲酒運転は絶対にやめましょう。
 妊娠中や授乳期の飲酒はお控えください。

(構成:鈴木友多)
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