蘆名真平(味の素(株)グローバルコミュニケーション部マネージャー)<後編>「食を通じた“自分ゴト化”」

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二宮清純: 味の素株式会社は、東京都調布市の東京スタジアムや北区のナショナルトレーニングセンターなどスポーツ施設のネーミングライツを取得するなど、スポーツ支援に、とても熱心な印象があります。今では日本でもネーミングライツは珍しくないですが、2003年に味の素スタジアムが日本の公共施設として初めて導入しました。

蘆名真平: そうですね。おっしゃるように私が入社した約20年前から既にスポーツに力を入れていました。現在のコーポレートスローガンは「Eat Well, Live Well.」(イートウェル、リブウェル)。生きるためには、運動が必要だし、美味しく食べることも必要です。その一環として、弊社ではスポーツに貢献することを重要視している。歴代の先輩方から現在の社員まで、みんなそういう考えの下で動いています。

 

二宮: 確かに食とスポーツは切っても切れない関係にありますね。

蘆名: おっしゃる通りです。トップアスリートをサポートする栄養プログラム「勝ち飯®」での20年間で学んだのは、生活者の皆様に還元できることです。トップアスリートはパフォーマンスのため、正しく食事を摂取することを心掛けていますが、その栄養プログラムはシニアの方、障がいのある方にも応用できるはずです。“これなら私にもできる”“こういう食べ方をしてみよう”と自分ゴト化できれば、社会の健康促進にも貢献できると思っています。

 

伊藤数子: 御社はブラインドサッカー選手と連携した調理体験型のワークショップを開催したり、音声特化型のレシピサイト「音でみるレシピ SOUNDFUL RECIPE」を公開しています。それも“自分ゴト”の一環でしょうか?

蘆名: はい。ワークショップでは、アイシェードをしながらみんなで料理をする。もちろん先生役はブラインドスポーツの選手。彼らには“見えている”んですよ。食材や器具がどこにあり、料理の工程がどこまで進んでいるかを頭の中にイメージできている。それを弊社の社員にも体験してもらっています。

 

二宮: 視覚障がいのある人の立場になって考えることができるわけですね。

蘆名: その通りです。いつか我々だって視力は落ちてくるわけですからね。

 

二宮: 年齢を重ねていけば、耳は遠くなり、聞こえづらくなっていきますしね。 

伊藤: 「見えている」ということも、視覚だけが全てではない。先ほどのワークショップなどでの活動を経て、「見える」という概念が全く変わったとうかがいました。

蘆名: 英語で、「分かった」は「I see」と言うじゃないですか。それは別に見たから「I see」と発するわけではない。理解したから「I see」。そういうことを、鳥居選手らパラアスリートたちに教わりました。それらを理解した上で、みんなで一緒に暮らしていければ、もっと“手触りのある世の中”になるはずだと思うんです。近年、DE&Iという言葉が世に出回るようになってきましたが、本当に浸透しているとは言い難い。私は会社の仲間たちとどうやれば、この言葉が広く通じる言葉になるかな、と話し合った結果、「誰もがええ感じに生きられる社会。これを実現したいよね」という結論に至りました。

 

相互理解でより良い社会に

二宮: 「ええ感じ」、シンプルで非常にわかりやすいですね。

蘆名: ありがとうございます。DE&Iとは、障がいのある人だけのためのことではありません。私たちは、彼ら・彼女らだけを幸せにするための活動ではなく、まわりの人間を含め、どうしたらみんながイキイキと生きられるのか。それを一番に考えています

 

二宮: パラアスリートをはじめ、アスリートを支援する「ビクトリープロジェクト®」は会社をあげてのプロジェクトだそうですね。

蘆名: そうですね。弊社はJPC(日本パラリンピック委員会)のパートナー企業として、栄養士を付けることができない競技団体やジュニアをメインに指導を請け負っています。ただ、私自身は栄養士ではありません。選手とは新しい製品やおすすめなどアイディアを提供する程度のものです。

 

二宮: 今年のミラノ・コルティナ冬季パラリンピックに帯同していましたが、どのようなサポートを?

蘆名: 大会期間中、選手たちもプレッシャー等で息が詰まっているので、選手村内の我々のブースを訪ねてきました。弊社の「ほんだし®」や「SIIDA®」でつくっただし湯を飲みながら、「蘆名さん、明日試合なんですよ」「まぁ、頑張れよ。お父ちゃんやお母ちゃんもみんな見てるぞ」と軽い感じでコミュニケーションを取っていたので、「リラックス・ルーム」と呼ばれていました。

 

伊藤: 蘆名さんはポジティブオーラに溢れていますから、だし湯を一緒に飲んだら、なんとかなりそうな気持ちになるのも分かります。今年は名古屋でアジア・パラ競技大会、2年後にはロサンゼルス大会とビッグイベントが控えています。

蘆名: パラスポーツの世界って、すごく素敵な世界だと思うんです。やはり私だけが見ているだけでは、もったいない世界だと思うんです。だから、もっとたくさんの人に知ってもらい、もっと社会に理解されるようにするのが、私たちの仕事だと思っています。

 

伊藤: この先もパラスポーツにはずっと関わっていきたいということでしょうか?

蘆名: はい! いずれは会社の若いメンバーに引き継いでいくものだと考えていますが、「ビクトリープロジェクト®」での活動を通して、仲間がたくさんできましたし、選手とも友だちのような関係になれた。若手に引き継いだ後も、また違う立場で関わっていきたいと思っています。

 

(おわり)

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蘆名真平(あしな・しんぺい)プロフィール>

味の素株式会社グローバルコミュニケーション部スポーツ栄養推進グループマネージャー。1982年、東京都出身。2006年、上智大学卒業後、味の素株式会社入社。2012年よりブラジル法人に出向。販売・マーケティング部門で、ブラジル国内における「アミノバイタル®」事業と、「ビクトリープロジェクト®」のブラジルでの立ち上げを担当した。2020年、帰任。2023年より、現職である「ビクトリープロジェクト®」パラリンピック担当に着任した。アスリートたちへの支援を通じ、「誰もが活き活きと、“自分らしく”輝ける社会」を目指している。好きなスポーツはサッカー。趣味は子どもたちと過ごすこと。座右の銘は「善悪を以って道理をなす」。

 

>>ビクトリープロジェクト®

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NPO法人STAND

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NPO法人STAND代表の伊藤数子さんと二宮清純が探る新たなスポーツの地平線にご期待ください。

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