開幕まで、あと2週間ちょっと。実戦を重ね、結果はいい時も悪い時もあるものの、チームの仕上がり具合は概ね順調です。中でも大きなケガ人が出ていないことが一番です。昨季は負けが込んだ上に、故障者が続出し、負のスパイラルに陥ってしまいました。1年前のチーム状況を1とすれば、今は6、7まで来ているのではないでしょうか。
 投手陣では経験豊富な野原慎二郎吉川岳の2本柱がいい状態なのが好材料です。ここへ6年目の山中智貴、移籍2年目の井川博文が先発候補として加わり、ローテーションはある程度、計算できそうです。

 先発が頭数が足りるのであれば、吉川を抑えに回すこともプランとして考えています。その理由のひとつは、現在のピッチングスタッフを見回して、彼が一番安定しているからです。抑えは何より点を取られないことが大切。その意味で、走者を出してから粘れる吉川はクローザーの条件を満たしています。

 もうひとつ彼は昨季、肩の故障で戦列を離れました。サウスポーとしてスカウトからは注目されていた存在だっただけに、改めて復活をアピールする必要があります。そのためには、まず短いイニングを任せたほうがいいのでは、と考えました。最終的な役割分担はドミニカ共和国からやってくる新外国人左腕のフアン・グルジョンの適性を見て判断することになるでしょう。

 打線ではクリーンアップのメンバーが固まりつつあります。前回も紹介した新人の河田直人、一昨季のホームラン王・迫留駿、そして韓国人の安峻亨です。特に安は4番を任せられそうな強打者です。12日の広島2軍戦でも二塁打を放ち、調子は上向いてきています。安の脇を河田と迫留という若い2人が打ち続けてくれれば、いい打線ができるでしょう。

 そして、ドミニカから内野手のデイビー・バティスタもやってきます。彼は身長170センチと小柄ながら、シャープなスイングが売り。昨年は埼玉西武の入団テストを受け、育成選手としての獲得が検討されたと聞いています。彼にはトップバッターはもちろん、状況によっては3番や6番といった打順を任せる構想です。もちろん1番はこれまで俊足の村上祐基も打ってきましたから、いい競争になるとみています。

 先頭バッターが出塁し、中軸で還すという理想の得点パターンを成立させるために、欠かせないのが2番の役割です。侍ジャパンで井端弘和(中日)の存在が大きかったように、つなぎ役がいると、相手の嫌がる攻撃もできます。この点に関しては、まだいろいろな選手を起用し、模索している段階です。

 たとえば、あの大石大二郎(現福岡ソフトバンクヘッドコーチ)の息子でもある大石崇晴は機動力が使えます。ただ、まだ守備も打撃も課題は山積です。スローイングは不安定ですし、打席では簡単に三振して返ってくることがあります。攻守に渡って、もっと粘りが出てくれば、ワンランク上の選手に到達できるはずです。

 開幕まで、オープン戦はあと5試合が予定されています。打順やピッチャーの役割分担を最終確定して試合に臨むのは、残り2戦になってからを考えています。それまでは多くの選手にチャンスを与え、アピールしてもらうつもりです。

 ケガ人がいないこともあり、投手、野手ともにチーム内のポジション争いは激しくなっています。選手たちは目の色を変えて練習に取り組んでおり、非常にいい雰囲気です。シーズンが始まれば、いろいろなことがあるでしょうが、ぜひ、どの選手を使えばよいか、うれしい悲鳴が続いてくれることを期待しています。

 昨季は四国に来てから最悪と言っていい1年でした。今季は昨年以上に手応えを感じています。最高のシーズンになるよう、選手と一緒に頑張ります。開幕戦は4月6日、高知球場でソフトバンク3軍との試合です。たくさんの皆さんの応援をよろしくお願いします。


定岡智秋 (さだおか・ちあき)プロフィール>: 高知ファイティングドッグス監督
 1953年6月17日、鹿児島県出身。定岡三兄弟(次男・正二=元巨人、三男・徹久=元広島)の長男として、鹿児島実業から72年、ドラフト3位で南海(現ソフトバンク)に入団。強肩の遊撃手として河埜敬幸と二遊間コンビを形成した。オールスターにも3回出場し、87年限りで現役を引退。その後、ホークス一筋でスカウトや守備走塁コーチ、二軍監督などを歴任。小久保裕紀、松中信彦、川崎宗則などを指導し、現在の強いソフトバンクの礎づくりに貢献した。息子の卓摩は東北楽天の内野手。08年より高知の監督に就任。現役時代の通算成績は1216試合、打率.232、88本塁打、370打点。
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