WBCでは3連覇を逃したものの、実はその前に日本は野球で3連覇を達成している。女子野球のマドンナジャパンだ。昨年のW杯では決勝で米国を破り、3大会連続の優勝を収めた。その中心選手として活躍したのが女子プロ野球から参加した川端友紀である。チームトップの打率.458をマークし、打線を牽引した。東京ヤクルトの慎吾を兄に持つ川端は、一昨季、打率.406を記録し、初の“4割バッター”となった。今季は関東の新球団イーストアストライアに移籍し、30日にわかさスタジアム京都で開幕戦を迎える。高いバッティング技術を誇る女子プロ野球界のヒロインに二宮清純がインタビューした。
(写真:ヒット量産も、まだホームランは0本。今季は初アーチも狙う)
二宮: 今季で日本女子プロ野球リーグは今季、4年目を迎えます。川端さんはリーグ1年目の2010年には打率.393で初代首位打者。11年は.406で2年連続首位打者に輝きました。男子のプロ野球でも日本では打率4割をマークした選手はいまだかつていません。高打率を残せる秘密はどこにあるのでしょうか?
川端: 私は長打を打つバッターではないので、コンパクトなスイングでヒットを重ねることを心がけています。バットコントロールを意識しながら左方向に打つことを特に大事にしてきました。

二宮: 4割という数字は意識していましたか。
川端: はい。実は1年目も最終打席がヒットなら4割到達だったんです。フルカウントまできて四球になると4割にならないので、監督からは「ボール球でも打ってこい」と言われました。結局、最後はボール球を振って三振しちゃいました。

二宮: わずか1打席に泣いた1年目を踏まえての、2年目の4割超えだったんですね。
川端: この時は最終戦を迎えた時点で4割を超えていて、既に優勝も決まっていたので、監督からは試合に出ず、4割という数字を優先してもいいという話がありました。でも、私はやはり全試合に出て4割を達成したかったので、最後の試合も全打席立ちました。

二宮: 4割を維持するためのハードルは高かったのでは?
川端: 4割をキープするには3打数2安打、または4打数2安打以上が条件でした。最終打席でギリギリ2本目のヒットが出て、ホッとしましたね。

二宮: 昔、川上哲治さんが「ボールが止まって見える」という名言を残しましたが、それだけ打ちまくると、似たような感覚になりませんか?
川端 そういう時もありますね。10打数連続安打した時は絶好調でした。ボールがすごくはっきり見えましたね。

二宮: お兄さんは東京ヤクルトの川端慎吾選手です。一緒に練習することは?
川端: 年末、実家に帰った時は、2日程度ですが一緒に練習します。

二宮: バッティングについては、どんなアドバイスを受けていますか。
川端: 左の軸足が外に開いていて力が逃げてしまうので注意されました。実は兄からは「6割打て」と言われているんです(笑)。

二宮: 6割! それは大変ですね。では打撃で参考にしているのはお兄さん?
川端: 兄とは確かにフォームはよく似ているのですが、私が理想としているのは、ミルウォーキー・ブルワーズの青木宣親選手です。下半身をうまく使ったバッティングはすごいなと思います。私もいろんなボールに対応してバッティングができる選手を目指しています。

二宮: 女子野球では金属バットを使用していますが、おもしろいかたちをしていますね。
川端: 振り抜きやすいように先っぽの部分が細くなっています(写真)。木製ではできない形状で、金属だからこそできるバットです。

二宮: 今季から女子プロ野球は関東にも進出します。全国各地で試合も行われますし、野球をやってみたい女の子たちにとっては、川端さんが大きな目標になるでしょうね。
川端: 小さい女の子から手紙をたくさんもらいます。「川端選手のような選手を目指してがんばります」と書いてあって、すごくうれしいし、励みになりますね。これからもっともっと女子野球を広めたいというのが願いです。

<現在発売中の『第三文明』2013年4月号では、さらに詳しい川端選手のインタビューが掲載されています。こちらもぜひご覧ください>