2013年のプロ野球が開幕した。先のWBCでは日本代表は残念ながら3連覇を逃したが、出場した選手たちは、その分、レギュラーシーズンで取り返そうと奮闘することだろう。彼らに周囲の選手たちが触発されて、熱戦が繰り広げられることを望みたい。

 セの5球団は巨人包囲網を

 セ・リーグは巨人が本命のペナントレースとなりそうだ。WBCで7名の選手がチームを離れたにもかかわらず、オープン戦を首位で終えた。選手層の厚さは群を抜いている。

 まともに戦っていては巨人の独走を許してしまう。シーズンの火を早々と消さないために、他の5球団は巨人包囲網を敷くべきだろう。特に開幕カードで激突する広島には巨人を波に乗らせない戦いが求められる。

 問題はこの3連戦で巨人にどんなメッセージを送れるかだ。キーマンはスタメンマスクが予想される石原慶幸とみている。どの球団のスコアラーに聞いても「石原のリードはアウトコース中心」と、ハンで押したような答えが返ってくるからだ。イメージチェンジをはかるためにも、開幕カードは「内角中心」でいきたい。「石原は変わった」と思わせることが重要である。

 巨人を追う存在には東京ヤクルトをあげたい。このチームには90年代に野村克也元監督が残したID野球が残っている。昨年、一昨年と小川淳司監督の下、限られた戦力をやりくりしながらAクラス入りを果たしており、投手陣は先発の石川雅規、館山昌平から抑えのトニー・バーネットまで安定している。

 西岡剛、福留孝介と元メジャーリーガーが入団した阪神は打線が強力になった。ただ、バッティングは水モノだ。長いシーズンを戦い抜くには、投手力も大切になる。絶対的守護神だった藤川球児の穴をブルペン陣がどれだけ埋めれるかが、上位進出のカギを握る。

 同様のことは横浜DeNAにも言える。中日からトニ・ブランコが移籍し、アレックス・ラミレス、モーガンと外国人トリオのクリーンアップは手ごわい。ただ、このチームも投手陣に不安がある。ベテランの三浦大輔を上回るような先発ピッチャーが複数出てこないとAクラスには届かない。

 中日はWBC日本代表候補にも選ばれていた浅尾拓也の故障が気がかりだ。オープン戦でも最下位に沈み、高木守道監督も「チーム状態は、まだつぼみ」と明かす。勝ち方は知っているチームだけに大崩れはしないだろうが、V奪回は険しい道のりになるだろう。

 オリックス、糸井の打順は?

 翻ってパ・リーグは予想がとても難しい。昨季を見ても、ダルビッシュ有が抜けた日本ハムが優勝すると予想した人は少なかったのではないか。それだけ戦力が拮抗しているという証だろう。

 そんな中、台風の目になりそうなのは楽天とオリックスだ。いずれも補強をし、昨年とはチームが変わりつつある。楽天にはメジャー通算434本塁打のアンドリュー・ジョーンズの東北楽天入りが決まった。待ちわびた大物助っ人だ。先のWBCでもオランダ代表の中軸としてベスト4入りに貢献した。

 しかし、この5年間のメジャーリーグでの通算打率は2割1分とパッとせず、「視力が落ちているのではないか」と指摘する声もある。メジャーで5年間にわたって対戦した吉井理人は「典型的なハイボールヒッター。当たれば飛ぶが低めの変化球の見極めはよくなかった」と語っていた。期待が大きければ大きいほど落胆も大きくなる。東北のファンは復興を告げる狼煙のような豪快な一発を待っているはずだ。

 オリックスはWBC日本代表の外野手・糸井嘉男を北海道日本ハムからトレードで獲得し、毎年Bクラス候補から、一気に優勝争いのダークホース的存在になった。昨年末、最下位からの巻き返しを託され、監督に就任したばかりの森脇浩司とヒザを交えて話した時のことだ。「最強打者は3番か、4番か?」という話題になった。

 その席で、私は以前、知将・三原脩が西鉄時代、マネジャーの藤本哲男に語ったという話を披露した。それは概ね、次のような内容だ。
「先取点を取る確率は最強打者を4番に置くより3番に置く方が高い。打席も3番の方が多く回ってくる。一方、ワンチャンスで2、3点取ろうと思えば最強打者を4番にした方が、その可能性が高い。つまり、戦力が不十分で、相手よりも先に点を取らないとズルズルいくチームは3番に最強打者を置いた方がいい。逆にがっぷり胸を合わせて戦えるチームなら4番の方が適切」

 さて森脇監督は、どんな打順を組むのか。このチームには昨季の打点王・李大浩がいる。三原理論にしたがえば、今季のオリックスは「がっぷり胸を合わせて戦える」ほど強くはないが、巨人から東野峻、阪神から平野恵一をトレードやFAで獲得したことで「弱者ではなくなった。失った戦力を見積もっても、トレードにはチームを活性化させる効果もあり、トータルで見ればプラスだろう。オリックスがどんなオーダーで戦うのか楽しみだ。

 大谷の二刀流は可能か

 そして開幕から大きな注目を集めそうなのが2人の高卒大物ルーキーである。まず、一人目は日本ハムの大谷翔平(岩手・花巻東高)だ。高校時代は投げて160キロ、打っては通算56本塁打。栗山英樹監督は投手と野手の“二刀流”に挑戦させている。オープン戦でもリリーフで登板し、そのまま打席に立たせるという起用を行った。開幕からはまず外野手として1軍入りする。

 ただ、多くの評論家は二刀流のプランに懐疑的だ。「“二兎を追う者は一兎をも得ず”になりかねない」という声が大勢を占めている。パ・リーグではDH制を敷いているため、ピッチャーが交流戦以外で打席に立つことは、まずない。加えて右投げ左打ちのため、死球が右腕に当たるリスクがある。

 沢村栄治、金田正一、江夏豊、堀内恒夫ら過去の名投手を例にとれば、バッティングも優れていた選手が多い。それだけ野球センスに恵まれていた証拠だろう。大谷について各球団のスカウトに聞くと、バッターとしての評価のほうが高かった。日本のプロ野球では古くは川上哲治、王貞治、最近では石井琢朗(現・広島内野守備走塁コーチ)のようにプロ入り後、ピッチャーから野手に転向して成功したケースは少なくないが、逆で大投手になった例はない。

 大谷と並んで高卒ルーキーで光るのは阪神・藤浪晋太郎(大阪桐蔭高)だ。エースとして春夏連覇に貢献。197センチの長身から投げおろす速球は魅力的だ。センバツから比較すると、夏はフォームのバランスがとれ、安定感が増していた。高校時点での完成度では田中将大(東北楽天)を上回るかもしれない。キャンプ、オープン戦で高校生離れしたところをアピールし、開幕カードのヤクルト戦(神宮)でのデビューが濃厚だ。
 
 とはいえ、まだ高卒1年目の右腕である。1年間、ローテーションを守って投げきるのは決して容易なことではない。すぐに結果を求めるメディアやファンと、どう折り合いをつけるのか。金、いやダイヤモンドの卵と呼べる逸材だけに、首脳陣がどう藤浪を起用していくのかがポイントになる。

 今季は低反発の統一球を導入して3シーズン目になる。一昨年、昨年から劇的にホームラン数が増えるわけではないだろう。となると1点を争う攻防が激しさを増す。今季もたったひとつのプレーが勝敗を大きく左右するはずだ。そんな細かい部分までスカパー!で観られれば、野球がもっとおもしろくなる。

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【2013プロ野球開幕カード】 ( )内は中継局

・3月29日(金)〜31日(日)
◇パ・リーグ
福岡ソフトバンク × 東北楽天 ヤフオクドーム(FOX
埼玉西武 × 北海道日本ハム 西武ドーム(朝日ニュースター
千葉ロッテ × オリックス QVCマリン(FOX bs238

◇セ・リーグ
中日 × DeNA ナゴヤドーム(J SPORTS
東京ヤクルト × 阪神 神宮(フジテレビONE
巨人 × 広島 京セラドーム(日テレG+

・4月2日(火)〜4日(木)
◇パ・リーグ
埼玉西武 × 福岡ソフトバンク 西武ドーム(朝日ニュースター
千葉ロッテ × 北海道日本ハム QVCマリン(FOX bs238
東北楽天 × オリックス Kスタ宮城(日テレプラス bs

◇セ・リーグ
阪神 × 中日 京セラドーム(スカイ・A sports+
広島 × 東京ヤクルト マツダスタジアム(J SPORTS
横浜DeNA × 巨人 横浜(TBSニュースバード[/b])

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