川廷尚弘(日本車いすテニス協会会長)<前編>「『ふるさと』のような強化拠点」

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 一般社団法人日本車いすテニス協会(JWTA)は<多様性を受容し、誰もが楽しく、生き生きとチャレンジできる公平な社会の実現に貢献>をミッションに掲げ、競技の普及・強化に力を注いでいる。昨年7月、JWTA会長に就任した川廷尚弘氏は、公益財団法人日本テニス協会の副会長のほか、国際テニス連盟の理事、オリンピック・パラリンピック審判員、ジャパンオープンの大会ディレクターを務めるなど、多岐に渡り、テニス界に尽力してきた人物だ。テニスファミリーの一員として、強化・普及に携わる川廷氏に話を訊いた。

 

二宮清純: 本日はよろしくお願いいたします。

川廷尚弘: 二宮さんは私の憧れなんです。お会いできて、光栄です。昨日から興奮していて、今は睡眠不足です。

 

二宮: こちらこそ光栄です。先日、上地結衣選手がウィンブルドン選手権女子シングルスで初優勝を果たし、日本女子初となる四大大会全制覇の「生涯ゴールデンスラム」(四大大会=グランドスラム全制覇とパラリンピック金メダル)を成し遂げました。男子も小田凱人選手が既に生涯ゴールデンスラムを達成するなど、日本の車いすテニスは上昇気流に乗っているように感じます。

川廷: ありがとうございます。パラスポーツ全般を見渡しても、こうした選手たちを抱えていることは、非常にいい流れにあると感じています。かつてはオランダが世界の強豪として存在感を放っていましたが、今や日本に世界が挑んでくるという構図になった。我々としても頑張っている選手たちに、できるだけ練習環境やコーチング環境を整えたいと思っています。

 

伊藤数子: 川廷さんが昨年7月に日本車いすテニス協会の会長に就任した際、パラリンピック金メダリストの国枝慎吾さんと齋田悟司選手がアドバイザーに就きました。

川廷: 昨年3月初旬に前田惠理前会長から会長就任のお話をいただいた時、即答できなかったんです。私自身、車いすテニスを応援していて、2016年に国別対抗戦を招致したこともありました。応援はしていたものの、車いすテニスの世界にどこまで足を踏み入れていいものか悩んでいたんです。その時、相談したのが国枝君や齋田君をはじめとして選手たちだったんです。

 

二宮: なぜ、選手に?

川廷: 車いすテニスの普及・強化のためには、選手たちのサポートが必要ですし、選手やこれからの車いすテニス界を引っ張っていく人たちと連携していかなければいけない。それで国枝君、齋田君、小田君、上地さんらに「実は会長就任のオファーを受けている。私はみんなと一緒にできるだろうか」と相談しました。その時に快い返事をいただいたので、オファーを受けることにしました。国枝君と齋田君には「私1人でできることは限られている。アドバイザーをやってください」とお願いしたら、快く引き受けてくれたんです。

 

父の匂いがする有明

伊藤: 齋田さんがアドバイザー、国枝さんは外部アドバイザーという肩書きになっています。

川廷: 私は国枝慎吾という存在は、日本の国枝慎吾ではないと思っています。世界の国枝慎吾であり、車いすテニスを背負って行く存在だと考えています。彼には世界に活動の場を広げてほしい。日本だけで囲うことはしたくなかったんです。それで「外部」という肩書きをあえて付けさせてもらいました。

 

(写真:©️JWTA)

伊藤: 今年7月に日本車いすテニス協会は、東京・有明テニスの森公園を新たな強化拠点にしたことを発表しました。ジャパンオープンなどを開催し、2021年東京オリンピック・パラリンピックの会場にもなった地です。

川廷: そうですね。福岡・飯塚市の「いいづかスポーツ・リゾート ザ・リトリート」は日本の選手たちがよく知る場所で、馴染み深い地であるのですが、海外を転戦する選手にとってはアクセスが悪い。有明はオリンピック・パラリンピックの競技会場でもあるので、同大会のレガシーという点でも良かった。

 

二宮: ここはお父様の栄一氏(国際テニス連盟名誉副会長)がテニスコートの設計に尽力されたそうですね。

川廷: その通りです。だから私としては、有明はふるさとというか、父の匂いがするような、懐かしい場所でもあります。

 

伊藤: 選手たちからも「実家のような存在になるんじゃないか」というコメントが出ていましたね。

川廷: 私としても感無量です。稼働は9月からですが、海外を転戦する選手たちが日本に帰ってくる際、また海外に向かう前の拠点となる。皆が常に戻ってこられる、ふるさとのような場所になれば、もうそれに越したことないと思っています。

 

(後編につづく)

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川廷尚弘(かわてい・なおひろ)プロフィール>
一般社団法人日本車いすテニス協会会長。1970年、兵庫県神戸市出身。10歳からテニスを始める。神戸学院大学卒業後、国際テニス連盟の公認審判やレフェリーとしてグランドスラムやオリンピック、パラリンピックで経験を積み、2009年から23年までジャパンオープン大会ディレクターを務める。同大会で2019年に車いすテニス種目を採用した。公益財団法人日本テニス協会常務理事を経て、2019年に国際テニス連盟の理事に就任。翌2020年、日本テニス協会副会長を務める。昨年7月に一般社団法人日本車いすテニス協会の会長に就いた。

 

>>日本車いすテニス協会

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NPO法人STAND代表の伊藤数子さんと二宮清純が探る新たなスポーツの地平線にご期待ください。

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