個々の役割が明確化されているアントラーズ

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 シーズン移行を迎えたJリーグがこの8月に開幕しました。僕の古巣である鹿島アントラーズはリーグ戦4連勝(天皇杯を含めれば5連勝)と良いスタートを切りました。今回は、Jリーグを中心に語りましょう。

 

 29日に味の素スタジアムで開催された第4節の対東京ヴェルディ戦でアントラーズは2対0で勝利。この白星でアントラーズは2008年以来、18年ぶり開幕4連勝を飾りました(08年時は5連勝スタート)。特別大会のJ1百年構想リーグを挟み、2025年から続くJ1リーグ戦の無敗記録は史上3位タイとなる19試合連続としました。

 

 8月の試合で盛り上がった試合は何と言っても4対3で横浜F・マリノスに逆転勝利した開幕戦(8月7日@MUFG国立)でしょう。試合は前半7分、F・マリノスの16歳MF・三井寺眞に先制されました。4分後にアントラーズはFWレオセアラのゴールで追いつきましたが、18分、後半13分とFW谷村海那に立て続けに得点を許し、勝ち越される苦しい展開。鬼木達監督は、FWチャブリッチ、FW徳田誉らを投入し、ほぼ4トップにすると、36分にレオセアラ、そしてアディショナルタイムにチャブリッチが2ゴールし、大逆転劇で開幕戦を白星で飾りました。

 

 アントラーズの戦いぶりから、昨シーズンを制したことによる揺るぎない自信とチームとしての成熟ぶりを感じました。後半13分の時点で1対3とスコア上ではかなりの劣勢でした。しかし、選手たちの声を聞くと「まだいける」と勝負を捨てていませんでした。これは33年前、Jリーグが始まった時にアントラーズに加入してきた鬼木の考え、そしてアントラーズに流れるジーコスピリットが受け継がれているところに由来するのかなとうれしく思いました。鬼木は高卒でアントラーズに入り、ジーコスピリットに触れ、6年間を過ごしました。そして、川崎フロンターレで選手として、指導者として大きな経験を積み、アントラーズに戻り、自らのフィロソフィーを表現している。それらが、好影響を及ぼしているのでしょう。

 

 戦い方は、非常にシンプル。選手の役割が明確化されています。こうなると、選手交代が分かりやすい合図になるんです。僕が現役の時、たとえば眞中靖夫がピッチに入ってくれば「これは、攻めろ、点を取りにいけ」という合図をみんなが共有できました。彼の勝負強さはスーパーサブとして素晴らしかった。現在のチームで、その役割をチャブリッチが担ってくれているように思います。サイドハーフ、2トップの一角で途中出場すると、攻守に献身的に動いてくれる彼の存在は、クラブを大いに助けています。

 

 そして、ここまで18歳のユース出身のFW吉田湊海が多くの出場機会を得ています。1、2節は2トップの一角で、3節は左サイドハーフでスタメン出場。4節は途中出場を果たしています。同じくユースの先輩で19歳のFW徳田誉らとともに今後のアントラーズを引っ張っていく存在になるでしょう。

 

 そして、10代の選手としてもうひとり、注目の存在がいます。F・マリノスの三井寺です。アントラーズ戦、そして8月22日の第3節のヴィッセル神戸戦でもゴールをあげています。

 

 ユース出身の選手や10代の選手が活躍すると、ファンは感情移入しやすいでしょう。コアなファンはトップの試合だけでなくユースの練習や試合もチェックしています。「あの選手は、オレが(私が)育てた」と思うでしょうし、それは良いことだと思います。アントラーズの徳田と吉田について、そう思っているファンは少なくないでしょう。F・マリノスの三井寺は今後が楽しみだし、彼を見るために会場に駆けつけるファンだって増えるでしょう。若い選手が今後、活躍し、ヒストリーを紡いでいく過程をファンと共有できれば、うれしいものです。逸材は、いまのうちに目に焼き付けておかないといけないですからね。

 

●大野俊三(おおの・しゅんぞう)

<PROFILE> 元プロサッカー選手。1965年3月29日生まれ、千葉県船橋市出身。1983年に市立習志野高校を卒業後、住友金属工業に入社。1992年鹿島アントラーズ設立とともにプロ契約を結び、屈強のディフェンダーとして初期のアントラーズ黄金時代を支えた。京都パープルサンガに移籍したのち96年末に現役引退。その後の2年間を同クラブの指導スタッフ、普及スタッフとして過ごす。24年1月、長く務めた鹿島ハイツスポーツプラザを退職。新たな夢の実現のため、日々奮闘中。93年Jリーグベストイレブン、元日本代表。

*ZAGUEIRO(ザゲイロ)…ポルトガル語でディフェンダーの意。このコラムでは現役時代、センターバックとして最終ラインに強固な壁を作った大野氏が独自の視点でサッカー界の森羅万象について語ります。

 

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