クロスへの入り方は小川航基に学べ

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 これぞ職人技、である。

 

 今夏、オランダ1部NECからFC町田ゼルビアに移籍した日本代表FW小川航基がJリーグ復帰2戦目となる9月2日のホーム、川崎フロンターレ戦に途中出場し、2ゴールを挙げてチームを勝利に導いた。

 

 後半30分、右CKだった。キッカーの相馬勇紀がアウトスイングで放つボールに対し、ファー後方から回り込んで勢いをつけてニアに入っていき、叩きつけるような強烈なヘディングでゴールを決めた。

 

 少しでもタイミングがずれていたら、生まれなかったはず。相馬のボールをイメージしつつ呼吸を合わせてパワーを持って狙った場所に入り、しっかりとボールにインパクトを伝えてGKのセービングを弾き飛ばしている。北中米ワールドカップ、オランダ代表戦で鎌田大地のゴールを“アシスト”したシーンが重なった。

 

 決勝点となる後半36分の2点目も横からのボール。前線から下りて起点となってから前に向かい、逆サイドでクロスを狙う中村帆高に向かって手を挙げる。中村が縦にスピードアップするや否や、小川もギアを上げて中に入ると見せかけて相手の背後へ。ファーに流れてきたボールをそのまま右足で押し込んだ。

 

 北中米ワールドカップ前、NECのチームメイトであった同じく日本代表の塩貝健人に話を聞く機会があった。彼もまたクロスに対する入り方がうまく、3月のスコットランド代表戦では左サイドを駆け上がった鈴木淳之介からグラウンダーで送られたボールをターンしながら左足で落とし、伊東純也のゴールをアシストしている。NEC時代に磨き上げたのがクロスへの入り方であり、居残りの自主練習で「クロスに入る前の立ち位置から、入っていくタイミング、そしてシュートを打つまで」にこだわった。参考にしたのが、ほかならぬ小川の動きであった。

 

「航基くんはサイズもありますけど、それだけじゃなくてタイミングを合わせるのがとにかくうまい。そのコツをつかむにはやっぱり練習しかない。航基くんと居残りで一緒に練習したことで吸収できた部分はあると思います」

 

 クロスを送る、クロスに合わせるはセット。つまりクロスを送る選手との共同作業であり、お互いにイメージを共有できていなければならない。自分の動きを分かってもらう必要があると同時に、相手のことも理解しておかなければならない。

 

 小川を見ていればそれは良く分かる。相手の死角に入る駆け引き、ポジション取りのみならず、ボールを引き出す術にも長けている。クロスの出し手がどうしたいか、この状況ではどんなボールが来るかという予測と読みがしっかりとある。

 

 8月に29歳になった小川は遅咲きと言っていい。

 

 かつて本人はこう語っていた。

「周りにも『お前は泥水を飲んできたよな』みたいに言われます。自分は雑草。トレセン(地域の選抜トレーニング)にもまったく引っ掛からなかった選手がこうやってプロになれたわけですから」

 

 神奈川の強豪・桐光学園時代に注目されたストライカーとはいえ、卒業後に加入したジュビロ磐田ではなかなか芽が出なかった。プロ4年目の2019年、武者修行先の水戸ホーリーホック(当時J2)で活躍してターニングポイントとすると、2022年に移籍したJ2の横浜FCで26ゴールを挙げて、J2得点王に輝いた。J1昇格の原動力となり、25歳にしてようやく開眼したと言える。そう考えると、まだまだ伸びしろはあるに違いない。泥水を飲んできたから、タフにもなった。

 

 J1得点王、そして4年後の次回ワールドカップに意欲を燃やしているという。欧州組が大半を占める日本代表の現状、JリーグからチャレンジしていくことはほかのJリーガーにも刺激を与えるに違いない。

 

 クロスへの入り方もさることながら、この小川のマインドこそ若いJリーガーに学んでほしい。

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