井上拓真、那須川天心に判定勝ちでリベンジ許さず ~ボクシング世界戦~
27日、ボクシングのクアドラプル世界戦がTOYOTA ARENA TOKYO(トヨタアリーナ東京)で行なわれた。昨年11月以来の再戦となったWBC世界バンタム級タイトルマッチは王者の井上拓真(大橋)が同級1位の那須川天心(帝拳)を判定で破り、2度目の防衛に成功した。IBF世界スーパーバンタム級暫定王座決定戦は同級1位の西田凌佑(六島)が同級2位のサム・グッドマン(オーストラリア)に判定負け。WBO世界ミニマム級暫定王座決定戦は同級1位の松本流星(帝拳)が同級2位のラッセル・アコスタ(メキシコ)に判定勝ちを収めた。WBC世界スーパーフライ級王座決定戦は同級1位の坪井智也(帝拳)が同級2位のリカルド・マラジカ(南アフリカ)に判定負け、プロ5戦目で初黒星となった。
10カ月ぶりの再戦も勝者は変わらなかった。井上拓真が那須川の挑戦を退け、緑のベルトを守った。
1戦目と比べ、コーナーは青と赤が入れ替わり、那須川が先に入場した。矢沢永吉の『止まらないHa〜Ha』がかかり、1分以上経っても那須川は姿を現さなかった。煽りVでも流れていたが「ヒーローは遅れてやってくる」という演出か。赤と金のコスチュームは特撮ヒーローを模したようなデザインだった。
後から試合の入場曲としてオーストリア人歌手ファルコの『Rock Me Amadeus』に乗って登場したのは井上拓真。前回の対戦と同じ選曲だ。緑色のライトに照らされながら、煌びやかな緑のコスチュームで花道を練り歩く。後ろに続くのが父・真吾トレーナー、兄・尚弥らだ。
ゴングが鳴ると、リーチで10cm以上勝る那須川がジャブを突く。対する井上拓真はワンツーを繰り出し、相手のペースにさせなかった。互いにバランスを崩すシーンがあったもののスリップ判定。決定打がないまま、序盤4ラウンドを終えた。
公開採点では明暗が分かれた。1人が38-38で同点だったが、1人は40-36、もう1人は39-37で井上拓真を支持した。「最初の4ラウンドはビックリ。(採点とは)逆の感覚だった。同点でも仕方ない、かなとは思っていたけど……」と那須川のセコンド葛西裕一トレーナー。試合展開は想定内も結果は違った。
最大のヤマ場は7ラウンドだ。那須川は首を左右に振り、独特のリズムから左ストレートを繰り出した。これが井上拓真の顔面を襲い、尻もちをついた。一気に沸く会場。「しっかり下から崩していこう、と。相手の目は死んでなかった」とは那須川。ロープ際に追い詰め、再びダウンかと思われたシーンもあったが井上拓真が耐え、那須川は仕留め切れなかった。
一方の井上拓真は「ダメージはなかった。フラッシュダウン。無理にいかず回復に努めた」と試合後に振り返ったように冷静だった。このラウンドは2ポイント差(8-10)を付けられたが、8ラウンド開始前に真吾トレーナーから「倒し返す気持ちでいけ」と発破を受け、その後は那須川をリズムに乗らせなかった。
8ラウンド終了時の公開採点は、2対1で井上拓真だが、2人のジャッジは3ポイント差(77ー74)。井上拓真優位で終盤戦を迎えた。大歓声を浴びながら殴り合う両者。スタミナは井上拓真に部があるのか那須川が逆襲に転じるまでは至らなかった。
「井上拓真vs那須川天心2」は、最終12ラウンドへ。試合終了後のゴングが鳴ると那須川が左手を高々と突き上げ、青コーナーに戻った。井上拓真は赤コーナーで右手を掲げて勝利をアピール。ジャッジの結果は3対0のユナニマス・デシジョンで王者。井上拓真が那須川を返り討ちにするかたちとなった。1人のジャッジは僅差(114ー113)、2人のジャッジは5点差(116ー111)も付けた。
「天心選手は強く、左ストレート一発でダウン食らったし、すごい成長しているなと感じた。だからこそ自分も気合入れて、返り討ちにすることができました」と井上拓真。「兄の背中を追いかけ、突っ走っていきたい」と語り、4団体統一を視野に入れる。那須川との3戦目についてリング上では、那須川がベルトを持った場合に実現する可能性を示したが、試合後の会見では「これで最後です」と否定的だった。
敗戦た那須川は花道を泣きながら去っていた。控え室で対応した試合後の会見では「出し切りました」と話しつつも「ポイントは分からない。体感では腹も効かせたし、顔も嫌がっていた。ボクシングで負けた」と肩を落とした。
(文/杉浦泰介、写真/大木雄貴)