第233回 近年の進化で思い出す“縫合ボール”でのヘディング
サッカー日本代表は9月下旬から10月上旬にかけて約2週間でウルグアイ代表戦、ベネズエラ代表戦、エクアドル代表戦、ニュージーランド代表戦と計4試合を戦いました。MF松木玖生(サウサンプトン)、FW谷村海那(横浜F・マリノス)、DF中野就斗(サンフレッチェ広島)、FW齋藤俊輔(ウェステルロー)の4名が代表初招集されました。
9月24日、キューアンドエースタジアムみやぎで行なわれた対ウルグアイ戦は3対1で日本が勝利しました。松木が初出場初先発で日本の先制点を決める活躍を披露しました。こういった初招集の選手たちが活躍するのはもちろん喜ばしい。
新戦力の活躍に背中を押されるように、これまで森保一監督のもとで経験を積み上げてきた選手たちの刺激にもなったでしょう。松木とポジションこそ違いますがFW上田綺世(リール)は後半から出場し、タメをつくり、起点となり、日本の2点をアシスト。さらにはチームの3点目を自ら決めて見せました。彼はいま、移籍したばかりのリールでも得点を記録しているし、この2週間の代表活動で4試合4ゴール。いま、彼はサッカーが楽しくてしょうがないんじゃないかな、と思うほどの充実ぶりを見せてくれました。
このウルグアイ戦、北中米ワールドカップのメンバーだったFW塩貝健人(ヴォルフスブルク)が上田のアシストで代表初ゴールを記録しました。一方で、パスを出すべき場面で出さなかったなど、少々ボールを持ちすぎる場面が見られました。こういった声も耳に入ったことでしょうし、実際に映像を確認して「自分の課題です」と語ったようです。
映像を見返した上で、自分の課題だと語っているようですし、僕はそんなに悪いことではないかなと思います。DFにとって仕掛けてくる選手はやはり脅威です。1対1、場合によっては1対2と人数を割かなければならないときもある。そうなると、どこかに穴ができる。相手DFに「この選手は仕掛けてくる」「仕掛けもある」と思わせることは大事です。そこで意表を突いたパスを塩貝が覚えればもっと面白い存在になるし、パスの選択肢をチラつかせて強引に自分で仕掛けてもいい。僕は塩貝が、チームの苦しい時のけん引役になってくれるのではないか、といまも期待しています。
近年、より強く思うことがあります。ボールの進化、変化についてです。強烈なミドルシュートでスコアが動くことがよくあります。松木の初ゴールとなった右サイドからカットインして、左足を一閃したシュートもそうでした。選手個々の技術が上がり、シュートのパワーと精度が高まっているし、ボールの進化でよりコントロールしやすくなっているのかもしれません。少々、GK泣かせなところもあると思いますが……。
生涯スポーツとしてのサッカーも、ボールの進化や工夫に助けられています。関節への負担を減らすために、5号球としての大きさは同じまま軽量化されています。僕が使用した60歳以上のボールは赤い柄だったと思います。メーカーにより色分けはさまざまでしょうが、50歳以上のリーグの時も計量ボールでした。
いまのボールは雨水を吸わない樹脂の仕様になっているのがとてもありがたい。昔のボールは水を吸うと重くなったものです。僕が学生時代の頃は「これ、本当に5号球?」という大きさになることもしばしばでした。
昔話をもう1つ。僕が学生の頃は、ボールを修理して使っていました。ボールの空気穴部分が破損するとか、単純にパンクしたときとかは、職人さんに修理してもらいました。一度、ラグビーボールのように縦にサッカーボールを切って、ゴムを入れ換えるんです。切った部分を靴ひもで縫うのですが、この縫合部分でヘディングをすると、めちゃくちゃ痛かった。これも青春時代の思い出の1つです。
●大野俊三(おおの・しゅんぞう)
<PROFILE> 元プロサッカー選手。1965年3月29日生まれ、千葉県船橋市出身。1983年に市立習志野高校を卒業後、住友金属工業に入社。1992年鹿島アントラーズ設立とともにプロ契約を結び、屈強のディフェンダーとして初期のアントラーズ黄金時代を支えた。京都パープルサンガに移籍したのち96年末に現役引退。その後の2年間を同クラブの指導スタッフ、普及スタッフとして過ごす。24年1月、長く務めた鹿島ハイツスポーツプラザを退職。新たな夢の実現のため、日々奮闘中。93年Jリーグベストイレブン、元日本代表。
*ZAGUEIRO(ザゲイロ)…ポルトガル語でディフェンダーの意。このコラムでは現役時代、センターバックとして最終ラインに強固な壁を作った大野氏が独自の視点でサッカー界の森羅万象について語ります。