第234回 住金&日立時代が脳裏をよぎった第12節
今月の24日、J1第12節で鹿島アントラーズはホームのメルカリスタジアムで柏レイソルと対戦し、2対3と黒星を喫しました。レイソルは昨シーズン準優勝とアントラーズと優勝を争い、今季も3位(10月31日時点の暫定順位)と好調を維持しています。リカルド・ロドリゲス監督の下、統制のとれているサッカーを見ていて、住友金属工業蹴球団(以下、住金。アントラーズの前身)と日立製作所サッカー部(以下、日立。レイソルの前身)時代のことが脳裏をよぎりました。
まずは24日の試合を簡単に振り返りましょう。アントラーズは前半14分にFW徳田誉のゴールで先制しました。しかし、35分にMF遠藤渓太、そして前半アディショナルタイムにMF山内日向汰にゴールネットを揺らされ、逆転を許しました。さらに後半14分にも山内に追加点を決められました。アントラーズは、43分にFWチャブリッチが得点しましたが、万事休す。2対3でアントラーズが破れました。特に前半アディショナルタイムの失点は痛かった。同点でハーフタイムに入るのと否かでは雲泥の差でした。
とはいえ、レイソルが昨季から展開しているサッカーは攻守に渡ってオーガナイズされていて、本当にお見事。ここのところのレイソルの戦いぶりを見ていて、なんだか日本サッカーリーグ(JSL)時代を思い出しました。
僕の知っている日立も攻守の連係、組織力に秀でたチームでした。
日立は僕が所属していた住金とよく練習試合をしてくれました。鹿島(現・鹿嶋市)から柏までは、東関東自動車道に乗り、千葉北インターチェンジで降りて国道16号を少し北上すればもうグラウンドですから、近かったんです。
住金がJSL2部時代から、1部の日立は胸をかしてくれました。もう、解体されてしまったようですが、日立の独身寮には幽霊が出るとか出ないとか、飾ってある絵の裏にはお札が貼ってあるとかいないとか……。そんな噂話も当時、聞いたことがあります。
サッカーの話に戻ります。DFだった僕にとっては、日立で活躍されたストライカー・碓井博行さんが印象に残っています。1976年から1988年まで日立で現役選手としてプレーしました。JSL200試合出場で85得点28アシスト。JSL得点王に2度(1980年、1982年)、輝いています。A代表にも名を連ねた名FWです。
碓井さんは本当にサッカーを熟知していて、攻めどころがわかっているFWでした。センターバックの僕は、かなりやられた印象がある。碓井さんを何とか抑えるために、ガツガツと体を当てていたことを思い出しました。碓井さんは僕のDFが嫌だったみたいです。試合中、僕は無理に体を当てにいくこともあり、「そこまで(ガツガツ)こなくてもいいだろぉ~」と言われた覚えがあります。しかし、激怒することもなく受け流してくれていました(笑)。得点やアシストで結果を出しながらも、おごり高ぶることなく、後輩たちの面倒もしっかりと見ていて、プレーヤーとしてはもちろん、ひとりの人間としてもお手本とさせていただいていました。
日立は丸の内御三家(古河電工、三菱重工、日立)の1つであり、超名門です。住金がJSL1部に昇格してからも日立には苦い思いをさせられました。そんなことを、今月の第12節のアントラーズ対レイソルの試合を見ながら、思い出したのでした。
アントラーズは10月31時点でリーグ戦13試合を消化し、7勝2分け4敗の勝ち点23、暫定6位につけています。冬のオフまでには5位以内に入っていたいものです。アントラーズは僕の古巣ですがもちろん、常に気にかけますが3位と好調のレイソルにも注目です。
さて、11月には日本代表がブラジル代表とシンガポールで親善試合を行ないます。現在、森保ジャパンは再び世界との距離を縮めるため、前からガンガンプレスをかけるスタイルを志向しています。せっかくの親善試合でまたしてもブラジルと対戦できるのですから、このスタイルのままトライしてほしいです。べた引きで臨んでしまうと、機会損失になってしまう。森保一監督の言葉を借りれば現在は「むき出し」覚悟で1対1の奪い合いを見せています。きっと、ブラジル相手にも果敢に挑んでくれることでしょう!
●大野俊三(おおの・しゅんぞう)
<PROFILE> 元プロサッカー選手。1965年3月29日生まれ、千葉県船橋市出身。1983年に市立習志野高校を卒業後、住友金属工業に入社。1992年鹿島アントラーズ設立とともにプロ契約を結び、屈強のディフェンダーとして初期のアントラーズ黄金時代を支えた。京都パープルサンガに移籍したのち96年末に現役引退。その後の2年間を同クラブの指導スタッフ、普及スタッフとして過ごす。24年1月、長く務めた鹿島ハイツスポーツプラザを退職。新たな夢の実現のため、日々奮闘中。93年Jリーグベストイレブン、元日本代表。
*ZAGUEIRO(ザゲイロ)…ポルトガル語でディフェンダーの意。このコラムでは現役時代、センターバックとして最終ラインに強固な壁を作った大野氏が独自の視点でサッカー界の森羅万象について語ります。