西山未奈美(三井住友海上女子陸上部/松山大学OG)第1回「深みのある3000m障害」
松山大学出身の西山未奈美(にしやまみなみ)は現在、三井住友海上女子陸上部に所属している。専門種目は3000m障害だ。9月に行なわれた愛知・名古屋2026アジア競技大会(第20回大会)では7位だった。2028年ロサンゼルス五輪出場を目指して日々、トレーニングに励んでいる。

トラック競技の中でも特に過酷と言われる3000m障害。日本陸上競技連盟公式サイトから引く。
<3000mを走るうちに障害物を28回、水濠を7回越えなければなりません。スタート後、フィニッシュラインを初めて通過してから各周に5個の障害物があり、その4番目が水濠であることがルールです。水濠以外の4つの障害物は移動式ですが、男子は高さ914mm、女子は762mm です。手をかけて越えてもかまいませんが、外側を通ったりくぐったりしてはいけません。 日本の競技場では、水濠はトラックの外側にありますが、世界の多くは内側です。水濠が外でも内でも、先のルールに合致していれば問題ありません。スタート位置は外側に水濠がある場合にホームストレートの中央付近、内側に水濠がある場合はバックストレートとなります>
西山は、この種目の魅力をこう語った。
「フラットな3000mや5000mは、走力が(順位を決める際に)大半を占めますが、3000m障害は、走力にプラスして障害物を跳びこえる技術力が必要になります。この2つがうまくかみ合わないとなかなか好タイムに結び付かないところが魅力だと思います」
そして、続けた。
「長距離選手は比較的細身の選手が多い。一方、短距離選手は筋肉質な選手が多い。しかし、3000m障害の選手は細身の選手もいれば筋肉質な選手もいます。どちらが有利、不利という概念があまりないところがおもしろいかな、と。
ハードルの跳び越え方もこれといった正解がない。ハードルに足をかけて跳ぶ選手、踏み切った足と着地する足が左右違う選手、踏み切った足と着地する足が左右同じ選手とさまざまです。オリジナルなかたちを追求すれば追及するほど、“深みのある種目”だなと私は思っています」
長身を扱うための「連動性」
西山は175センチと長身のランナーだ。ストライドの幅をいかしたハードルさばきは見事である。「長身は武器でもあるんですけど……」と言い、今後の課題を口にした。
「いままでは、単純に走力を向上させてタイムを伸ばしていこうと思っていたんです。しかし、今後は、足のストライドだけに頼らずに、筋力をアップさせてハードルや水壕を跳び越えたいなと考えています。
長身な分、少しでも無駄な動きがあると、ロスが大きくなるのはデメリットです。体の扱いやすさでいえば、長身の選手は小柄な選手にどうしても劣ってしまう。長身の体を使いこなすための筋力を身につけることが、いまの課題です。ハードルを跳び越えるにしても普通に走るにしても下半身と上半身の連動性が重要です。下半身のトレーニングを中心に取り組んでいますが、もう少し、腕の筋肉もつけたいです」
筋力トレーニングと言っても、重たいものを持ち上げればいいというわけではない。いかに競技に合わせた身体をつくっていくか。それが重要だ。現在はバーベルのシャフトを担ぎ、高い台に一歩踏み出すトレーニング、大きなボックスを用いてのジャンプ系トレーニングがメニューの中心となっている。
西山は同社のコマーシャル商品部賠償責任保険チームに配属されている社員でもある。週に2回の出社と在宅勤務が2回。出社日のスケジュールはこうだ。
「6時からの朝練習を終え、10時に出社し、2時間ほど勤務します。勤務といっても、内容は本当に優しいものにしてもらっています。12時に退社すると15時半から本格的なトレーニング。なるべく競技に打ち込めるようにしてもらっているので、本当にありがたいです」
西山は神奈川県相模原市で生まれ育ち、白鵬女子高等学校を卒業した。そんな彼女が四国の松山大学を進学先に決めたきっかけとは。そして、松山大で学んだこととは――。
(第2回につづく)

<西山未奈美(にしやままなみ)プロフィール>
1999年12月9日、神奈川県生まれ。2018年3月、白鵬女子高校卒業後。同年4月、松山大学に入学した。1年時7月、U-20世界陸上(フィンランド・タンペレ)に出場し、3000m障害で9位(10分00秒49)。2022年3月、同大卒業後。同年4月、三井住友海上火災保険(株)に入社した。同社女子陸上部に入部した。社会人1年目の6月、第106回日本陸上競技選手権の3000m障害で当時女子歴代4位(現5位)となる9分39秒28を記録した。長身を生かしたストライドが武器のランナーだ。
(文・写真/大木雄貴)

