豊田自動織機、堅守武器に19年ぶりの日本一へ ~JD.LEAGUE~

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 女子ソフトボールの『ニトリJD.LEAGUE2026』は11月1日でレギュラーシーズンを終え、7日からポストシーズンに突入する。東・西地区の2~4位が同地区内でプレーオフを行ない、勝者が東西地区王者の待つダイヤモンドシリーズ(DS)へと進む。今季プレーオフ進出確定に一番乗りを果たしたのが、西地区3位の豊田自動織機シャイニングベガ。2007年以来のリーグ制覇を目指す。就任10季目を迎えた永吉慎一監督と、今季から主将を務める沢柚妃に話を聞いた。

 

(写真:今季は打撃2冠のスミスのほか、竹中真海が西地区本塁打王に輝くなど、打撃面でも光る)

 

外国人選手と若手の奮闘

――第10節終了時点、7連勝を含む、17勝5敗で6月にはプレーオフ(西地区4位)以上を確定させました。これは東西合わせて16チームの中で一番乗りでした。

永吉慎一: 本音で言えば、できすぎだと思っています。前半戦はレクシー(・キルフォイル)が好投し、マケナ(・スミス)がいいところで打ってくれたおかげで、いい流れをつくれた。日本人では新人の岡(柚月)、2年目の久野(日奈多)。当初、SGHホールディングスギャラクシースターズで移籍してきた山本(星)を外野で起用していたのですが、ケガで抜けた穴を2人が埋めてくれたことが大きかった。

 

――スミス選手は打率4割1分4厘、7本塁打、27打点で、西地区2冠(打率、打点)の大活躍でした。チーム在籍3年目でようやく日本の環境にも慣れてきたということでしょうか?

永吉: 慣れもありますが、彼女は練習を本当一生懸命にやる選手です。その努力が好結果につながっているんだと思います。

 

――今季はチームの勝ち頭ダラス・エスコベド投手が抜けるなど、戦力ダウンが予想されていました。

永吉: 不安だらけのシーズンの始まりでした。2月のキャンプで猛練習をさせて、選手たちが自信を付けたことが大きかった。練習日数は例年と変わりませんが、その内容を濃くし、全体練習の時間を長めにしました。

 

<永吉慎一(ながよし・しんいち)プロフィール> 1971年11月25日、鹿児島県出身。樟南高校卒業後、西日本シロアリでプレー。2008年から2年、豊田自動織機コーチ。11年、監督に昇格した。14~16年はホンダコーチ。17年に監督復帰。25年には皇后盃全日本総合選手権大会優勝。日本リーグ時代を含め、JD.LEAGUEでチームを9度のプレーオフ進出に導いた。

――主将に移籍2年目の沢選手を抜擢しました。その意図は?

永吉: 人間性ですね。キャリアで言えば、日本代表の須藤志歩が主将を任されてもおかしくはない。ただ須藤は代表活動でチームを離れる日数が多かった。そう考えた時に、私が一番人間性を買っているのが、沢だったんです。

 

――日本精工ブレイブベアリーズにいた時から、その人間性を評価していたと?

永吉: そこはウチに来てからですね。昨季の1年間、彼女のソフトボールに取り組む姿勢を見てきました。

 

「沢のチームをつくりなさい」

――主将という役割が重荷になる選手もいれば、役職を与えることで自覚と責任感が生まれ飛躍する選手もいます。

永吉: 沢は後者ですね。数字で見ても昨年より断然今年の方がいい。本人も背中で見せるというタイプ。一つひとつのプレーを考えながら取り組んでくれているので、結果につながっているのだと思います。チーム全体、また個々にも気を配れる選手です。チームLINEを見ても、一言付けてチームを盛り上げてくれている。私も尊敬する最高の主将です。

 

――監督にとっての主将の役割は?

永吉: 沢には「私どうこうではなく沢のチームをつくりなさい」と言いました。自分がつくりたいチーム像を仲間に伝え、それを実現するための努力をしていきなさい、と。もしうまくいかない場合は、私が解決の手助けをする。私が試合に出られるわけではありませんから、できるだけ選手同士でチームをつくっていくことが大事なんです。

 

(写真:采配で一番難しい点は、「野手出身なので、投手交代のタイミング」と言う)

――自主性を重んじること以外に指導する上で大事にしていることはありますか?

永吉: ずっと言い続けているのは、私たちは企業スポーツだということ。「豊田自動織機」という看板を背負っていることを第一に考えて欲しい。社員やファンからちゃんと応援してもらえるように日々の身だしなみから厳しく指導しています。プレーのことはほとんど言わない。ソフトボールを辞めた後も、一社会人として当たり前のことをできる人間に育てないといけないと思っています。

 

――チームの強みは?

永吉: 守備ですね。守備を大事にするのは、私自身が現役時代の時からです。点を取られなければ負けることはありませんから。ウチのチームはエラーをしたら負け。そのくらい守備にこだわっています。

 

――堅い守備が光る一方で、昨季からは打撃面でのパワーアップが目立ちます。

永吉: 打撃に関しては、たくさん時間を割いているわけではありませんが、トレーナーの力を借りながら筋力、体力アップを図っています。またアナリストと話した時、絞り球を徹底できていないというデータが出てきた。それでデータミーティングの時間を増やしました。いい準備ができているからこそ、選手たちは楽な気持ちで打席に立てているのだと思います。

 

――プレーオフに向けての、意気込みを。

永吉: レギュラーシーズンとは全然違う重み、プレッシャーがあります。負けたら終わりの試合。ミスした方が負ける。ただ選手には「ミスを怖がるな」と伝えています。綿密に準備をし、当たり前にプレーできるように練習を積んでいくしかない。一番大事なのはファンや会社の方に「見に行ってよかった」と言ってもらうこと。そこだけは譲れません。もし負けたとしても、応援してくれた人たちが、後悔しないような試合をお見せしたいと思っています。

 

「自分に矢印を向けよう」

<沢柚妃(さわ・ゆずき)プロフィール> 2000年9月14日、滋賀県出身。小学3年から野球を始め、中学1年からソフトボールに転向する。比叡山高校卒業後、日本精工ブレイブベアリーズに入団。6シーズンプレー。24年には、西地区ベストナイン(二塁手)に選ばれた。25年に豊田自動織機シャイニングベガに移籍した。今年から主将を務める。身長162cm。右投げ右打ち。背番号10。

――レギュラーシーズンを振り返っていただけますか。

沢柚妃: 前半戦は結果に表れている通り、順調に戦えたと思っています。後半戦からは負けに加え、織機らしくない試合が続いていた。後半戦、連敗を止めることができましたが、まだまだ自分たちらしい試合はできていなかったと感じています。

 

――主将としてはどういう声掛けを?

沢: みんなには「自分に矢印を向けることを大事にして戦おう」と話していました。主力にケガが相次いだ時、若手がレギュラー陣以上の役割を果たしてくれたことで、チームに勢いが付きました。自分に矢印が向いているからこそ、個々の役割をそれぞれが全うできたのだと思います。

 

――流れを掴んだと感じた試合は?

沢: キーとなった試合はふたつあります。ひとつは第1節(4月13日)のトヨタレッドテリアーズに10対4で勝ち切れたこと。もうひとつは、第7節(5月31日)のビックカメラ高崎ビークイーン戦。交流戦を全勝しようと意気込んでいた中、初戦を落とした。悪い流れになりそうなところでしたが、3対2でサヨナラ勝ちすることができた。ここから6連勝し、みんな勢いに乗れたのかな、と。

 

――今シーズン、移籍2年目で主将に抜擢されました。打診はいつありましたか?

沢: 昨シーズンが終わった後、面談があり、その時に「主将をやってくれないか」と言われました。全く頭にないことだったので、とても驚きました。もう10番(主将番号)を付けることはない、と思っていましたから。お話をいただいた時、その場では答えられなかった。簡単な決断ではなかったので、ひとりでじっくり考えました。そこから信頼できる方に相談して決めました。

 

(写真:日本精工では内野手だったが、豊田自動織機では外野手を任されている沢<左>)

――永吉監督からは、「沢のチームをつくりなさい」と言われたそうですね。

沢: はい。2年前まで所属していた日本精工で主将を任された時も、当時の監督に同じようなことを言われました。その時を少し思い出しました。私は「他と同じような主将じゃなくていい。沢らしいリーダーシップでいい」というメッセージだと受け取りました。日本精工の時と同じように「自分らしくで、いいんだ」と割り切ることができました。

 

――主将として気を付けていることはありますか?

沢: 日本精工の時と同じように自分が大事にしているものを、ブレさせてはいけないと思っています。チームは違っても、変える必要がない、と。もちろん環境やチーム状況、異なる面はたくさんありますが、全員で戦いたいという思いは変わりません。私が大事にしているのは見えないつながりを強固にしたい。それで思ったことは練習や試合前のミーティングで伝えるようにしました。加えて個々と話す機会を増やすようにしています。試合前のチームのグループLINEには、連絡事項の最後に「明日の試合への思い」を添えます。そこに「全員で」というキーワードを必ず入れるようにしています。

 

チームを引っ張る気構え

――主将という役割を担うことがプラスに働いている面は?

沢: 私が大事にしているのは、いい時も悪い時も同じように頑張り続けることです。結果が出る時もあれば、出ない時もある。そこに一喜一憂してはいけないと思うんです。負の感情を表に出していては、チームがうまく回らない。若い時はその感情のコントロールをうまくできない日がありましたが、今は自分でコントロールできるようになってきました。

 

――沢選手自身の成績も、昨季に比べて上がっています。

沢: 気構えを変えたことが大きいですね。昨季を終えた時、振り返ると、自分はチームについていくだけだったと感じたんです。

 

(写真:「シーズン終了後、『沢がキャプテンで良かった』と言ってもらえる選手を目指す」と語る)

――というと?

沢: 上の先輩方に、ただガムシャラについていくだけだった。日本精工の時は主将だったシーズンを含め、チームを引っ張る気持ちでプレーしていました。それが織機に移ったことで、変わってしまっていたんです。だから主将を打診される前の面談で、「次は自分が引っ張るぐらいの気持ちでいきます」と話しました。それは主将を引き受ける前から決めていました。

 

――JD.LEAGUEの選手名鑑(ベースボール・マガジン社)には、自身のアピールポイントに「泥臭いプレー」と掲載されています。

沢: 2番に入った場合、ただ送るだけではなく、進塁打狙いに切り替えることもできる。打席でいろいろな攻撃パターンを持っているのが、私の強みだと思っています。

 

――では、チームの武器は?

沢: 織機と言えば、やはり守備です。バッテリーを含め、内野のスピード感は他のチームと比べて優れているところ。練習で求めるレベルの高さをブラさないことが、堅い守備につながっているんだと感じています。ただ今季は打撃も、守備に負けない武器になりつつあると実感しています。

 

(写真:私設応援団が結成されるなど、熱心のファンも多い)

――豊田自動織機という環境で、自身も成長できている実感しますか?

沢: もちろんです。永吉さんに限らず、織機のスタッフは選手ファーストで動いてくださる。永吉さんはオフの日にも限らず、「ノックをお願いします」と頼めば、練習に付き合ってくれる。スタッフの皆さんが、選手たちに真摯に向き合ってくださるので、とても感謝しています。

 

――最後にプレーオフに向けての意気込みを。

沢: 日本一が目標です。その目標をブラさず、チーム全員で戦っていきたい。後半戦は自分たち自身と戦うようなシーンが多かったので、プレーオフでは相手と戦う準備を万全にして臨みたいと思っています。

 

(取材・構成/杉浦泰介、写真/©豊田自動織機シャイニングベガ)

 

 BS11では「JDリーグ2026 ダイヤモンドシリーズ」の模様を、11月14日(土)、15日(日)の2夜連続で放送します。14日は20時、15日は19時から放送開始。是非ご視聴ください。

※放送内容は中止、または変更になる可能性がございます。

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