全世界に6億5000万人以上のファンがいるといわれる“赤い悪魔”が日本にやってきた。
 マンチェスター・ユナイテッドは昨季、20度目のプレミアリーグ制覇を果たした。現在は8月のリーグ開幕に向けて、アジア各国を回るプレシーズンツアーの真っただ中。そんなマンUが日本で横浜F・マリノス(23日、日産スタジアム)、セレッソ大阪(26日、長居スタジアム)と対戦する。日本代表の香川真司にとってはマンUの一員として初の凱旋試合だ。FWロビン・ファンペルシ(オランダ)、GKダビド・デ・ヘア(スペイン)、MFマイケル・キャリック(イングランド)など、各国代表級の選手が揃うチームで、香川が示してくれるであろう世界基準に期待したい。

 香川の現在地

 今回の日本ツアーは、香川にとって新生マンUでの初陣でもある。昨季終了後、26シーズンに渡って指揮を執ったアレックス・ファーガソンに代わり、デイビッド・モイーズが監督に就任。日本での2試合は、新指揮官に対する貴重なアピールの場ともなる。モイーズは20日のオーストラリアリーグ選抜戦後、今季の基本布陣を4−3−3にすることを明言した。FWナニ、FWアントニオ・バレンシア、FWアシュリー・ヤングといったスピードのある選手をウイングで有効活用するためだろう。

 指揮官の考えを踏まえると、香川は2列目の左右のMFとして起用されることになりそうだ。香川が最も輝けるポジションはトップ下である。だが、選手にはクラブのコンセプトに合わせる順応性が求められる。香川としてはいかにモイーズの要求に応えられるかが問われる。

 サイドハーフは1対1の局面を迎えやすいため、攻撃では相手を突破する打開力、守りでは簡単に突破されない粘り強さが要求される。また、サイドバックが攻め上がった時のカバーリングにも気を使わなければならない。そういったサイドの役割をこなしながら、中央に寄ってパスを捌いたり、ドリブルで中に切れ込むなど、持ち前の豊富なアイデアを生かしたいところだ。

 その上で香川にはゴールに絡むプレーも求められる。昨季は20試合に出場して6ゴール。ノーリッジ戦ではプレミアでアジア人初のハットトリックも達成した。故障で約2カ月離脱した時期もあったことを考えれば上々の結果ともとれるが、ドイツでの活躍を考えると物足りなさも残った。今回の日本ツアーは、香川にとっては新シーズンに向けた勝負の舞台でもあるのだ。

 古巣とのガチンコ対決

 マンUが日本ツアーで、まず対戦するのが横浜FM。この試合では日本代表の新旧10番対決に注目したい。言うまでもなくMF中村俊輔と香川である。

 現在、香川がつける日本代表の背番号10を、長年背負ってきたのが中村だ。彼にとってマンUとの対戦はスコットランド・セルティック所属時代を含めて今回が3度目。過去2回は06−07欧州チャンピオンズリーグでの対戦で、中村はいずれの試合でもFKを沈め、その名を世界に轟かせた。中村は口も滑らかに「相手といい、上から降らした弾道といい、いい印象が残っています」と語った。あれから7年、さらに円熟味を増したファンタジスタは、マンU相手にどのようなプレーを見せてくれるのか。

 26日に戦うC大阪は、香川がプロキャリアをスタートさせた、いわば原点である。10年にドイツ・ドルトムントへ移籍するまで、中心選手として活躍した。そこからの香川の活躍は改めて説明の必要もあるまい。ただ、古巣を懐かしんでプレーする余裕は香川にはない。レギュラー確保のためにも、結果にこだわるプレーが求められる。その上で成長した姿をC大阪サポーターに披露したいところだろう。

 対するC大阪もマンUを「お客様」として迎えることはあるまい。親善試合とはいえ、世界的クラブに勝利すれば、C大阪の名は全世界に知れ渡る。ガチンコでマンUにぶつかり、どこまで勝負できるか。勝っても負けても、Jリーグの後半戦に向けて貴重なモメンタムにしたいとの思いは強いだろう。

 また、C大阪には若き才能が育っている。18歳のFW南野拓実だ。ユース時代からトップチームに帯同し、今季からトップに昇格した。今季の開幕戦で、高卒ルーキーとしてはクラブ史上初のスタメン出場を果たした逸材である。スピードと技術を高水準で兼ね備え、決定力の高さも「AFC U-16選手権2010」で得点王に輝いたことで証明済み。2列目でのプレーもキラリと光るものがある。

 第14節のジュビロ磐田戦でリーグ初ゴールを挙げ、続く第15節横浜F・マリノス戦では、柔らかいパスから柿谷曜一朗のゴールをアシストした。ここまでは試合途中からの出番が多いものの、16試合全てに出場。香川や乾貴士(フランクフルト)らを育てたレヴィー・クルピ監督の評価も上々だ。マンU相手にインパクトを刻めば、先輩・香川のように欧州への道も開けてくる。

 マンUとJクラブの対戦は、世界と日本の距離を測る絶好の機会でもある。香川のプレーとともに、日本サッカーの現在地を「スカパー!」を通じて確認したい。

 マンUツアー2013、注目の試合を放送!
 欧州サッカーのシーズン開幕に向けた関連番組も多数放送


【中継スケジュール】
・7月23日(火)
横浜F・マリノス × マンチェスター・ユナイテッド(日産ス、24:40〜録画) TBSチャンネル1

・7月26日(金)
セレッソ大阪 × マンチェスター・ユナイテッド(長居、18:50〜) スカチャン0 ※「JリーグMAX」または「欧州サッカーセット」ほかの加入者は視聴可能

・7月29日(月)
キッチー(香港) × マンチェスター・ユナイテッド(香港、19:50〜) スカチャン1 ※「JリーグMAX」または「欧州サッカーセット」ほかの加入者は視聴可能
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