ヨーロッパのサッカーシーズンが開幕した。今季は例年と違い、来年のブラジルW杯につながるシーズンだ。4年に1度の大舞台に出場するためには、所属クラブでの活躍が欠かせない。主力級のみならず、目覚ましい活躍を見せた無名の選手が一気に代表まで駆け上がることも珍しくない。

 ネイマールはバルサで輝けるか

 ストーブリーグで最も注目されたのが、ブラジルの至宝・ネイマールだ。ビッグクラブによる争奪戦の末、名門バルセロナに移籍した。

 ネイマールにとってバルサはサントス時代の2011年、クラブ・ワールドカップ決勝で0−4と叩きのめされた相手。いわば因縁のチームへの移籍である。今回はバルサを倒すことよりも、バルサの中でプレーして成長する道を選んだのだろう。

 しかし、バルサにはアルゼンチン代表リオネル・メッシやスペイン代表のアンドレス・イニエスタら世界トップクラスの選手がひしめいている。ネイマールといえど、レギュラーの座は約束されていない。

 ネイマールはサントスでキングとして君臨していた。世界屈指のテクニックを生かしたドリブル突破は、華麗な一方、「自分勝手」との悪評も付きまとった。サントスは「点を取ってくれさえすればいい」とばかりに、彼のプレースタイルを容認していたように映る。

 だが、バルサではそうはいかないだろう。確立されたバルサスタイルの大前提にあるのは連係だ。常に味方の動きを把握し、味方のために走らなければならない。つまり、チームのために犠牲を厭わない精神が求められるのだ。

 強豪バルサでひとつのピースとして機能できれば、彼はもう1段階上のレベルに達することができる。リーガ最大のライバルであるレアル・マドリードとの“エル・クラシコ”や欧州チャンピオンズリーグでの戦いを通じて、より才能が磨かれることは間違いない。ブラジルの至宝が欧州で進化を遂げ、母国開催のW杯で躍動する日が楽しみだ。

 ドイツにもたらされるグアルディオラの教え

 昨季の欧州王者バイエルン・ミュンヘンは、バルサで輝かしい実績を残したジョゼップ・グアルディオラを指揮官に招聘した。グアルディオラはバルサでパスサッカーを標榜し、チームは驚異的なボール支配率を誇った。ボールを保持することで対戦相手のスタイルを封じ、奪われれば瞬時にプレスを掛けて自分たちのペースに持ち込む。

 W杯でのドイツ代表は、西ドイツが制した90年イタリア大会以来、優勝から遠ざかっている。バイエルンにはフィリップ・ラームやトーマス・ミュラーなどドイツ代表の主力が所属している。彼らが名将のメソッドを吸収することは、ひいてはドイツ代表の成長にもつながるはずだ。西ドイツ代表の司令塔として72年欧州選手権、74年西ドイツW杯を制したギュンター・ネッツァーは、ブンデスリーガ公式サイトで次のように述べている。

<グアルディオラ氏のような監督を迎えること自体、ブンデスリーガにはまったくもって幸運なこと。影響を受けるのは、バイエルンだけではない。リーグ全体が恩恵を被る、と確信している。>
<ここドイツには、新たな刺激やアイデアが必要だと思う。ただ、そうしたものを持ち込めるのは、異なるシステムで試合を行い、異なるゲーム哲学を持つ外国人監督だけだろう。自分はハンブルガーSVのマネジャーを務めていた頃、早期に外国人監督を招へいしたいと思っていた。例えば、(オーストリア人の)ハッペル氏(1981〜87年にハンブルク監督)は3年早く呼びたかったが、当初はそれが許されなかった。もちろんサッカーのスタイルが違うため、どのチームでもグアルディオラ氏の思っているようなサッカーができるわけではない。しかし彼がバイエルン監督になることは、リーグに新たな刺激をもたらすだろう。>

 グアルディオラの教えは、日本人選手にとっても新鮮だろう。清武弘嗣、金崎夢生(いずれもニュルンベルク)、乾貴士(フランクフルト)、酒井高徳(シュツットガルト)、酒井宏樹(ハノーファー)、岡崎慎司(マインツ)、長谷部誠(ヴォルフスブルク)、内田篤人(シャルケ)、細貝萌(ベルリン)……。今やドイツには日本代表経験のある日本人選手が多数所属している。グアルディオラのサッカーを体感することは、すなわち世界で戦うヒントを得るチャンスでもある。

 ミラノダービーで日本人対決なるか

 もちろんドイツ以外でも、多くの日本人選手が欧州でシーズンを戦っている。長友佑都が所属するセリエAのインテルは昨季のリーグ戦で9位に甘んじた。ここ数年の不振から脱するべく、チームは今季からワルテル・マッツァーリを招聘。国内の中小クラブを率いてきた叩き上げの指揮官のもと、まずはスクデット奪還を目指す。

 新指揮官はボールを奪いに行く際の動き方やカバーのポジショニングなど、長友が「覚えるのが大変」と舌を巻くほどの戦術家だという。長友にとっては多くの戦術を学び、実践すればするほど、プレーの引き出しが増える。ひいては日本代表にも好影響を与えるに違いない。

 そして、セリエAにはもうひとり、日本人選手の加入する。本田圭佑である。現在はロシアのCSKAモスクワでプレーしているが、契約は12月末まで。ACミランが獲得に動いている。既に来年1月の入団は内定しているが、ミラン側は今夏に時期を前倒しすべくCSKAのフロントと交渉を続けている。

「僕は環境先行型」と語る本田にとって、セリエAとミランは申し分のない環境だ。ミランには現役イタリア代表や同代表経験者が多数おり、イタリアの司令塔アンドレア・ピルロを擁するユベントスら強敵が対戦相手として待ち受ける。猛者が集うセリエAは、本田の反骨心を強く刺激し、さらなる成長を促すだろう。

 ミランのマッシミリアーノ・アッレグリ監督は今季、4−3−1−2のシステムを軸にしている。本田が起用されるとすれば、トップ下だろう。ここは日本代表でも務めているポジションであり、持ち前のキープ力を生かせば、ミランでも十分、結果を出せる。ステファン・エル・シャーラウィ、マリオ・バロテッリのイタリア代表2トップをどうコントロールするかも見物だ。

 また、本田のミラン移籍が実現すれば、ミラノダービーで長友との日本人対決の夢も膨らむ。ともにザックジャパンの中心である2人がライバルクラブの選手として切磋琢磨していく姿を見るのは愉しい。

 プレミアリーグでは香川真司(マンU)、吉田麻也(サウサンプトン)、オランダ・エールディヴィジではハーフナー・マイク(フィテッセ)が牙を研ぐ。W杯本番までの1シーズン、各国の注目選手たちのクラブでのプレーぶりを追いかけていけば、W杯を見る楽しみはより大きくなる。世界のスタンダードである欧州のサッカーシーンを、「スカパー!」でチェックしておきたい。

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【欧州リーグ次節放送予定】(生中継のみ)

ロシア・プレミアリーグ
・第7節(8月30日)
CSKAモスクワ × アムカルベルミ 24:54〜

ドイツ・ブンデスリーガ
・第4節(8月31日)
ドイツ・ブンデスリーガ
シャルケ × レバークーゼン 25:24〜

イングランド・プレミアリーグ
・第3節(8月31日)
ノリッチ × サウサンプトン 22:54〜
・第3節(9月1日)
リバプール × マンチェスター・ユナイテッド 21:24〜

オランダ・エールディヴィジ
・第7節(9月1日)
AZ × フィテッセ 21:24〜

イタリア・セリエA
・第2節(9月1日)
カターニア × インテル 27:35〜

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