これで野球・ソフトボールの五輪実施競技復活は極めて困難になった。タイミングが悪いにも程がある。
 先頃、MLBはヤンキースのアレックス・ロドリゲスやレンジャーズのネルソン・クルーズら10数人の選手に対し、薬物規定違反による出場停止処分を課した。

 処分を受けた選手の中でA・ロッドのみが異議申し立てをしたため、調停委員会の評決が出るまでは試合出場が許されている。もしクロだった場合、この間の記録は、いったいどうなるのだろう。

「この一連のドーピング騒動で、IOC委員の野球へのイメージは最悪なものとなった」
 こう言って頭を抱えたのが、五輪代表チームでコーチ経験のある社会人野球関係者だ。

「野球・ソフトボールが20年五輪で復活する可能性は最初から低かった。チャンスがあるとすれば、開催都市が東京に決まった場合くらい。しかし、残念ながらこれでゼロに等しくなったと言っていいでしょう」

 周知のように、野球・ソフトボールはレスリング、スカッシュと最後の一枠を巡って三つ巴の争いを繰り広げている。9月8日、すなわち20年五輪・パラリンピックの開催都市が決定した翌日に、実施競技が決まる。

 本命はレスリングで、対抗がスカッシュ。投票権を持つIOC委員は約4割の欧州人の彼らにとって、野球は米国のスポーツであり、積極的に推す委員は少ないのが実情だ。そこへもってきて、メジャーリーグのドーピング騒動だ。野球は自ら墓穴を掘ったようなものである。

「IOCは以前からメジャーリーガーの参加を呼びかけていた。米国で高い視聴率が見込めるからです。逆に言えば、メジャーリーガーが参加しない限り、五輪復活は難しかった。復活への頼みの綱のメジャーリーガーがこのザマでは(投票での)惨敗は目に見えています」(前出・社会人野球関係者)

 野球の巻き添えをくうかたちになったソフトボールの選手たちが気の毒でならない。

<この原稿は2013年9月9日号『週刊大衆』に掲載されたものです>

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