2020年の東京五輪・パラリンピック開催決定に沸く日本だが、もうひとつ大きなスポーツイベントが、その前年に控えている。19年に日本で開催されるラグビーW杯だ。現在、国内で10〜12カ所となる予定の試合会場選定がスタートしており、ジャパンを率いるエディー・ジョーンズヘッドコーチ(HC)は地元開催での「トップ8入り」を目標に掲げ、強化を進めている。

 ウェールズ撃破に貢献、筑波大・福岡

 6年後の大舞台へ、この夏、エディー・ジャパンは大きな前進を遂げた。6月、世界ランキング5位(当時)のウェールズ代表を23−8で撃破したのだ。相手はいくら若手主体のメンバーとはいえ、シックスネイションズを連覇中の強豪。日本が世界の上位8カ国・地域の代表を下したのは89年、宿澤広朗率いるジャパンがスコットランド代表に勝って以来の快挙だった。

 歴史的1勝の直後に行われたパシフィック・ネーションズカップのカナダ代表戦では16−13、米国代表戦は38−20と日本は連勝を収めた。ウェールズ戦での金星がフロックではないことを証明し、地力がついてきたことを感じさせた。

 11月には、いよいよ世界ナンバーワンのニュージーランド代表を東京・秩父宮ラグビー場に迎えうつ。過去、日本はオールブラックスと4回戦っているが、いずれも大差をつけられての敗戦。11年のW杯でも7−83とレベルの違いは明らかだった。2年前から、どれだけ差が縮まっているのか。エディーHCは「オールブラックスと戦えるのは誇り。選手たちにはそれを体感して、すべてを出し尽くしてほしい」と対戦を楽しみにしている。

 エディー・ジャパンにとって大きな収穫は19年の主力となり得る大学生の選手たちが、代表で実績を積んでいることだ。なかでも筑波大2年のWTB福岡堅樹は、勝利したウェールズ戦で大学生唯一のスタメン入り。持ち前のスピードで敵陣を何度も脅かした。20−8とリードした後半36分には、中央でボールを持って駆け出したところへ、相手がたまらずハイタックルの反則を犯す。PGをFB五郎丸歩が確実に決め、ダメ押しの3点が入った。

「ミスの部分があっても使ってもらえたので、同じことを繰り返さないように頑張りました。蒸し暑い気候は相手も嫌だろうし、先にバテるはず。こっちがどんどんアタックすれば勝負できると感じました」
 175センチ、83キロとラガーマンとしては小柄ながら、ウェールズとの2試合では、いずれもスタメンで起用され、指揮官の期待の大きさがうかがえた。19年には27歳。選手としてはピークの時期に日本でW杯を迎えるだけに、今後が楽しみだ。

 早大・藤田、NZ留学の成果に期待

 BKにはもうひとり早稲田大2年の藤田慶和が代表で既に9キャップを連ねている。東福岡高在学中に史上最年少でジャパンのメンバー入りを果たし、鳴り物入りで大学へ進んだ。昨季はヒザのケガでシーズンを棒に振ったが、この4月に代表復帰を果たすと、ウェールズ戦には2試合とも出場。結果的には敗れたものの、大阪・近鉄花園ラグビー場での試合では、後半29分、1点差に迫る反撃のトライをあげた。

 その後の米国代表戦でも前半6分に、流れるようなパス回しからトライを決め、日本に先制点をもたらせた。現在は本場のニュージーランドに短期留学しており、エディーHCも「もっと速く、もっと強くなって帰ってきてほしい」とさらなる進化を望んでいる。

「福岡、藤田はインターナショナルレベルの選手という立場を確立してほしい」
 そう語るジャパンの指揮官は、オールブラックス戦に向けた代表候補にも2人を選出した。11月2日、既にチケットが完売した秩父宮のピッチで若き逸材が世界のトップに挑むところを見てみたい。

 大学ラグビーには他にも将来のジャパンを背負うであろう選手がいる。その筆頭が前人未到の大学選手権5連覇を狙う帝京大の主将、SO中村亮土(4年)だ。「前半、後半と試合を通じたマネジメントができる。ゲーム全体を俯瞰しながらプレーしていますね」と司令塔として岩出雅之監督の信頼は厚い。エディーHCも「大学レベルでは突出している」と評価する。

 5月のHSBCアジア五カ国対抗UAE戦では後半15分から出場し、初キャップを記録した。
「迷うことなく思い切ってプレーすることができた。試合の中で良いところと悪いところが出たので、さらに高いレベルでやっていくために、これからも努力していきたい」
 
 SOは勝敗の行方を左右する重要なポジションだ。世界で戦える選手になるには、より個性を磨く必要性を感じている。「最終的には中村亮土というプレーヤーをつくりあげたい」と明かす22歳は、大学生活の集大成となる今季もステップアップを目指す。

 帝京大が本命も混戦模様

 未来のスターが揃う大学ラグビーは今季も激しい戦いになりそうだ。大学選手権V5に挑む帝京大が本命とはいえ、昨季は準優勝だった筑波大も国立大での初制覇を狙う。SH内田啓介(4年)、福岡と桜のジャージを着た選手たちを擁するBK陣は大学屈指との呼び声が高い。

 ただ、対抗戦の初戦は慶応大に12−20で敗れる黒星スタート。昨季は最終戦を終えて帝京大、筑波大、明治大が並び、史上初めて3校が同時優勝となった。筑波大を破った慶大、藤田が終盤戦で合流予定の早大もチーム力をアップしており、対抗戦は混戦が予想される。

 今、大学でプレーしている選手たちが6年後のW杯ではジャパンの中心となることは間違いない。大学ラグビーのレベルアップなくして、ジャパンのレベルアップはない。日本でのW杯成功もない。「代表で勉強したことをチームに戻って伝えてほしい」と帝京大の岩出監督はジャパンの経験者が好影響を及ぼすことを期待している。

 19年のジャパンを担うホープとともに、各校が試合を重ね、どんな成長を遂げるのか。オールブラックスと激突するエディー・ジャパン、16チームに増加したトップリーグと合わせて、この秋は大学ラグビーも見逃せない。

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