Jリーグが大きな決断を下しました。2015年シーズンからの2ステージ制とポストシーズンの導入です。現行のままでは大幅な減益は避けられないというJリーグの緊急性は理解できます。ただ、私は1シーズン制を維持した方がよかったのではないか、というのが率直な感想です。やはり、最も多く勝ち点を稼いだチームが年間王者になることが、サッカーの本質であると考えるからです。
 懸念されるクオリティーの低下

 新方式導入によって、Jリーグには約10億円の増収が見込めると伝えられています。そして、その収益をリーグのPR費や育成費に充てる。先々を見据え、子供たちを育成、日本のサッカーがさらに発展するための指針には私も大賛成です。

 ただ、今回はサポーターの意見ももう少し尊重してほしかったというのが正直なところです。現在、Jリーグは、残念ながら盛り上がりに欠けていると言わざるを得ない状況です。そこへ来ての新方式導入。Jリーグはスタート当初の2ステージ制を1シーズン制に移行した歴史があります。今回、再び2ステージ制を採用することに、単にシーズンの目玉をつくりたかっただけなのでは、と思うサポーターも多いのではないでしょうか。

 新方式を導入するにあたって懸念されるのが、スケジュールの過密化です。ポストシーズンを導入するとなれば、例年の開幕時期を早める必要が出てきます。これは選手のシーズンオフ期間が短くなることを意味します。さらに、アジアチャンピオンズリーグ、ナビスコカップ、天皇杯、代表戦も組み込まれてくる。スケジュールの過密さは、選手のコンディションに影響し、ひいては試合のクオリティー低下にもつながっていきます。これでは本末転倒です。

 大事なのは、サポーターやスポンサーが何を求めているかということです。スポンサーは、クラブに魅力があるからこそ、多額の費用を投じる。サポーターも同様に、汗水流して得たお金を使い、応援に訪れるわけです。仕組みを変えてインパクトを与えることも一手段ではありますが、魅力ある試合を増加させることこそが、再びJリーグを盛り上げるために必要だと思いますね。

 2ステージ制のメリット

 ここまで新方式に対する私見を述べてきましたが、実際に導入されることで、リーグはどのように変わるのかを見ていきましょう。

 1シーズン制では、スタートでつまずくと、なかなか立て直すのが難しいという側面があります。長く連敗を喫してしまうと、中盤に入る頃から「降格」の恐怖を感じながらシーズンを進めることになります。

 一方で2ステージ制の場合は、ファーストステージの結果が芳しくなくても、セカンドステージで2位以内に入れば、ポストシーズンに出場できます。つまり、新方式下では、シーズン中に仕切り直しができるわけです。これは例年、シーズン中盤には優勝の可能性が消滅していたクラブにとって非常に魅力的でしょう。ファーストステージが終われば、また横一線の状態からスタートできるため、選手もサポーターもモチベーションを維持できるからです。

 また、若手を育成する上でも新方式は有効に働くと見ています。ファーストステージで若手主体の構成で臨み、チームの経験値を上げる。その上で、セカンドステージは若手とベテラン選手の融合をはかる。もちろん、チームにより状況は異なりますが、いずれかのステージで戦力の底上げを試み、翌年、再来年につなげるクラブも出てくるのではないでしょうか。

 ただ、各ステージであまりにもサッカーの質が下がってしまうことは、サポーターも望んでいません。あくまで勝ち点3を狙える布陣が大前提です。各クラブは戦力バランスの調整を、よりきめ細やかにする必要があります。

 繰り返しますが、サッカーの本質からいえば、ベストな大会方式は1シーズン制だと私は考えています。Jの決断が日本サッカーのよりよい未来につながることを願いながら、今後も動向を注意深く追って行きたいと思います。

●大野俊三(おおの・しゅんぞう)<PROFILE>
 元プロサッカー選手。1965年3月29日生まれ、千葉県船橋市出身。1983年に市立習志野高校を卒業後、住友金属工業に入社。1992年鹿島アントラーズ設立とともにプロ契約を結び、屈強のディフェンダーとして初期のアントラーズ黄金時代を支えた。京都パープルサンガに移籍したのち96年末に現役引退。その後の2年間を同クラブの指導スタッフ、普及スタッフとして過ごす。現在、鹿島ハイツスポーツプラザ(http://kashima-hsp.com/)の総支配人としてソフト、ハード両面でのスポーツ拠点作りに励む傍ら、サッカー教室やTV解説等で多忙な日々を過ごしている。93年Jリーグベストイレブン、元日本代表。

*ZAGUEIRO(ザゲイロ)…ポルトガル語でディフェンダーの意。このコラムでは現役時代、センターバックとして最終ラインに強固な壁を作った大野氏が独自の視点でサッカー界の森羅万象について語ります。
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