二宮: 先日は日本での大会、お疲れ様でした。今回は初戦で身長196センチのビッグサーバー、ミロシュ・ラオニッチ(カナダ)と当たり、苦戦を強いられましたね。
添田: サービス一発で決められると、なかなかこちらのプレーができなかったので、難しかったですね。相手を崩した場面もあったのですが、前週のツアーで優勝もしていましたから、勢いがありました。

二宮: サービスがほとんど200キロ以上を超えていました。
添田: 僕らはもう目が慣れてしまっているので、取れる範囲に来れば、十分に返すことはできます。ただ、それがワイドやセンターにやられると、完全にコースを読み切っていない限り、取るのは難しいですね。

二宮: 世界と互角に戦うには、日本人よりも体格のいい外国人選手のパワーテニスにも対応しなければならない。そのためには、やはり素早いフットワークは欠かせません。
添田: はい。ですから、どんなシューズを履くが非常に重要になってくるんです。

二宮: 今シーズン、adidasから発売された「adipower barricade8」はこれまでよりもさらに軽量化を実現したシューズとなっていますが、履き心地はいかがでしょうか?
添田: 僕は同シリーズの「adipower barricade5」から履いていますが、「adipower barricade8」はこれまでで一番履きやすいと感じています。軽いので、よく足が動くんです。走り出しもスムーズですし、細かいステップも踏みやすい。

二宮: プレーにも好影響を与えていると?
添田: はい、大いに影響していると思いますね。プレーしていて、フットワークに関しては、今までで一番いいと感じているんです。

 安定したプレーを生み出す高機能性

二宮: テニスはサイドの動きが多いので、ホールド感が重要になりますね。
添田: シューズによっては、サイドへの細かい動きで、足とのブレが生じるものもあるんです。そうすると、足首をひねったりする。テニスプレーヤーにとっては、それが一番怖いのですが、「adipower barricade8」は安定感がありますし、切り返しの時にサイドの部分がうまく使えるんです。実際、2007年からadidasのシューズを履くようになってから、以前はよくしていた捻挫を一度もしなくなりました。それほどサイドのホールド感がしっかりしている証だと思います。

(写真:新素材「Dcore6」を採用した「adipower barricade8」)
二宮: 確かに他の競技のシューズと違って、両サイドは厚みがあって、頑丈ですね。
添田: 前後よりもサイドの動きがメインになるので、シューズもサイドに強度がないと足首をひねってしまうんです。一方で、追いつけなさそうなボールに対しては、わざと足を滑らせて取ることもよくあるので、ある程度の滑りも必要となります。「adipower barricade8」は両方を兼ね備えているので、プレーヤーにとっては非常にありがたいんです。

二宮: 添田さんが4大大会(全豪、全仏、ウィンブルドン、全米)に初めて出場したのは07年の全豪オープンでした。ちょうど「adipower barricade」を履き始めた時期と重なります。
添田: 成績は、決してシューズと無関係ではないと思います。プレーの土台となる足に安定感があるからこそ、安心して自分のパフォーマンスが出せる。「adipower barricade」との出合いは、僕にとって大きかったです。

二宮: 「adipower barricade8」の最大の特徴はアッパー部分。新素材「Dcore6」を採用し、柔軟性、安定性、通気性、耐摩耗性といった高い機能性を実現しています。このアッパー部分についてはいかがでしょう?
添田: 実は素材や形状が新しくなった時、違和感があるのとないのとでは、まったく違うんです。履いた瞬間に何かがひっかかったり、硬かったりして「あれ?」と感じると、気になってしまう。当然、パフォーマンスにも影響が出ます。でも「adipower barricade8」は、まったく違和感がありませんでした。プレーヤーにとって、それが最高なんです。

 ウィンブルドンは最高の雰囲気

二宮: 07年の初出場以降、これまで4大大会には計9度出場し、全豪とウィンブルドンでは2回戦に進出しています。なかでも思い入れの強い大会は?
添田: 僕はやっぱりウィンブルドンが好きですね。雰囲気も含めて、非常に集中しやすい。

二宮: 同じ4大大会でも雰囲気は違うと。
添田: はい、違いますね。例えば全仏は、どちらかというと、ザワザワしている感じがします。会場が狭いのもあって、ちょっと騒がしいですね。その点、ウィンルドンにはいい意味での静寂さがある。神聖な場所という感じがします。

二宮: 特にウィンブルドンのセンターコートの雰囲気というのは、他の大会とはまったく違うんでしょうね。
添田 そうだと思います。僕はまだセンタ―コートの経験がないのですが、今年、初めてナンバーワンコートでプレーしました。最初はかなり雰囲気にのみこまれてしまったのですが、慣れてくると、すごく気持ちよくプレーすることができました。

二宮: 観客との一体感を味わったわけですね。
添田: はい。いいプレーをすれば称賛してくれますし、観客がうまく気持ちを乗せてくれました。

 目指すは世界ランク30位

二宮: その4大大会は5セットマッチと、長い時には試合時間が5時間に及ぶこともある。そのなかで“ストップ&ゴー”の動きを繰り返すわけですから、シューズの耐久性は重要です。
添田: 実は、今回その部分が心配だったんです。軽くなって、足が動きやすくなった分、耐久性はどうなのかな、と。

二宮: 実際はいかがでしたか?
添田: まったく問題ないですね。それどころか、以前よりも耐久性は増していると感じています。

二宮: 添田さんは29歳と、年齢的にも今が一番脂がのっている時期ですね。
添田: そうですね。トレーニングなどで選手生命が延びてきていて、世界ランクを見ても、トップ10は全員25歳を過ぎています(10月7日現在)。

二宮: それだけパワーだけでなく、経験値がモノをいう競技だと。
添田: そうなってきていると思いますね。

二宮: 9月の国別対抗戦では、添田さんの活躍でワールドリーグ復帰を決めました。
添田: 世界から見ても、日本がワールドリーグに復帰したというのは、インパクトのあることだと思います。日本人選手も意識が高まるでしょうから、日本テニス界にとっては大きな意味をもつのではないでしょうか。

二宮: 添田さん自身の今後の目標は?
添田: 昨年マークした自己最高ランク47位を更新すること。30位以内を目指しています。そのためには、いかに大舞台で勝っていくことができるか。特にグランドスラムで勝ち星を増やしていくことが大事になってくると思っています。

添田豪(そえだ・ごう)
1984年9月5日、神奈川県生まれ。4歳でテニスを始め、藤沢翔陵高校2年時にはインターハイでシングルス、ダブルスの2冠を達成。卒業後、2003年にプロに転向し、08、09年の全日本選手権を連覇。07年、全豪オープンで4大大会初の本戦出場を果たす。昨年、ウィンブルドンで初勝利を挙げ、その年、自己最高の世界ランク47位に浮上した。今年は全豪で、ウィンブルドンで2回戦進出。9月のデビスカップワールドグループ入れ替え戦(プレーオフ)では2勝2敗で迎えた最終戦のシングルスを制し、ワールドグループ復帰に貢献した。180センチ、76キロ。

(写真・構成/斎藤寿子)
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