二宮: お久しぶりです。今回は陣内さんのご主人、金石昭人さんが経営する「かねいし」でお話を伺います。
陣内: よろしくお願いします! 以前、この対談でオグッチ(小椋久美子さん)も出演していましたよね。あと、ここには田中雅美ちゃんもよく来るんですよ。

二宮: そうなんですか。田中さんは「那由多(なゆた)の刻(とき)」をさらっと1本空けたのが印象的です(笑)。
陣内: 彼女は本当に強いですからね(笑)。

二宮: 今回、陣内さんにはそば焼酎「雲海」をお持ちしました。こちらをソーダ割りでどうぞ。
陣内: 普段、あまり焼酎は飲まないので、どんな味なのか楽しみにしてきました。あ、すごく飲みやすい! さっぱりしているので、女性向きかもしれないですね。私はあまりお酒は強くないのですが、これなら二宮さんに付き合えそうです(笑)。

 黄金世代の台頭

二宮: まずは、期待のニューヒロイン・山口茜選手についてお伺いします。高校生ながら、9月のヨネックス・オープンを制しました。
陣内: しかも、スーパーシリーズというカテゴリーでは、日本人初の優勝だったんです。本当にすごいことですよ。

二宮: 陣内さんから見て山口選手の長所は?
陣内: 選手としての完成度が高いことですね。賢いプレーヤーとも言えると思います。あの年代の選手は、試合序盤で自分のエースショットを全部出してしまいがちです。しかし、彼女は相手によって出したり、出さなかったりと使い分けることができる。今大会も、決め急いだりすることが一切ありませんでした。自分で試合のペースをつくれている。まるでベテランのようでした。

二宮: 大人のバドミントンができているということですね。今回はシングルスでの優勝でしたが、ダブルスでの可能性は?
陣内: いや、彼女は日本代表ではシングルスのみの出場になると思います。今は専門分野で強化していくことが主流ですから。

二宮: なるほど。山口選手をはじめ、近年の若い選手はいい意味で図太いというイメージがあります。
陣内: 確かに、そうですね。どんな選手に対しても気後れしない。私が現役の時は、中国の選手がものすごく強かった。ですから、組み合わせを見た時に「うわ、中国の選手と当たる」と思うと、それだけでプレッシャーでした。それが今の選手は、ジュニアの大会で中国の選手や他国の強豪に勝っているので、「この選手と対戦するのが嫌だな」という気後れがないんです。海外遠征を多く行い、試合経験を重ねているからこそだと思います。

二宮: なるほど。今後の女子バドミントン界は、やはり山口選手が中心に?
陣内: 日本の宝ですからね。ただ、彼女は今年の全日本ジュニア選手権では、1学年上の大堀彩選手に負けているんです。他にも実力のある選手がいて、彼女たちの世代はものすごく層が厚い。リオデジャネイロ五輪はもちろん、7年後の東京五輪も楽しみです。

 憧れている間は勝てない

二宮: スポーツでは天才型と秀才型の選手がいますが、陣内さんが日本バドミントン界で天才だと思う選手は?
陣内: 男子の田児賢一選手はまさにそうですね。

二宮: ほお。どういうところが?
陣内: 教える必要がないんです。ミスなども、自分の感覚で全部修正していきます。加えて、練習量もすごい。天才が努力をしているわけですから、末恐ろしいですよ(笑)。

二宮: 10月のフランスオープンでは世界ランキング1位のリー・チョンウェイ(マレーシア)から初勝利を収めました。世界トップとの差は徐々に埋まりつつあると見ていいんでしょうか?
陣内: うーん、でも田児選手はリーに憧れているんですよね。憧れているうちは、近付けるけど追い越せないものです。

二宮: それはご自身の経験から?
陣内: そうですね。私もやはり先輩を見て「ああいう人みたいになりたい」と憧れました。でも、追い越せなかった。「あの人に勝つんだ!」と思わないと、憧れのままで終わってしまうんです。

二宮: ちなみに、陣内さんが憧れた選手というのは?
陣内: 米倉よし子さん。田児賢一選手のお母さんですね。よくミスした時に、床を見たり、ラケットを見たりする選手がいます。つまり、失敗を何かのせいにしようとするわけです。でも、米倉さんはどんな時でも用具や環境のせいにしなかった。「かっこいい。ああいう選手になりたい」と思いました。

二宮: 「憧れている間は勝てない」というのは、重い言葉ですね。
陣内: はい。現役時代からそれはわかっていたのですが、引退してから、さらに強く思うようになりましたね。ですから、現役の選手が「あの先輩みたいになりたいんです」と言っていたら「そんなふうに思っている間は勝てないよ」と指摘するんです。「私はそれで勝てなかった」と。

 競技人口拡大に追い風

二宮: 先ほど話題に上がりましたが、2020年夏季五輪の東京開催が決定しました。これによって競技人口の増加も期待できるのでは?
陣内: そうですね。五輪という目標ができたことは大きいと思います。あと、ロンドン五輪で藤井瑞希・垣岩令佳組が史上初のメダル(銀)を獲得したことも、追い風になりましたね。

二宮: “フジカキ”として日本中の注目を集めました。
陣内: 競泳の北島康介選手や体操の内村航平選手がメダルを獲った時に、国内の競技人口が大きく増えたという話を聞きました。特に水泳をやりたい、体操をやりたいという子供がいっぱい。フジカキのメダルは夢を与えるという意味でも大きかったと思います。

二宮: そして、16歳の山口選手がヨネックス・オープンで優勝。若手選手の活躍は普及促進にもいい効果を与えるでしょうね
陣内: ですから、私もバドミントン教室などで、参加者に言うんです。「みんなと同じくらいの年齢の人が世界で勝っているんだよ」「全国で頑張っているよ」と。そうすると、やはり身近に世界を感じるようになるんですね。「ああ、そうなんだ」と遠い夢の話じゃなくなってくる。

二宮: もちろん個人差はあるでしょうが、だいたい何歳ぐらいがバドミントン選手としてはピークなんでしょうか?
陣内: 幅は広いと思いますよ。山口選手くらいの年齢でもチャンスがありますし、ベテランになると試合巧者になるので30歳以上でも第一線でプレーできます。ケガをしなければ、その歳相応のプレーができる。バドミントンは年齢によってプレースタイルをどんどん変えられるんです。

 体育館の情報をインプット

二宮: プレーする上では環境への順応力も求められます。たとえば体育館によっては、空気の流れが違うという話を聞きます。
陣内: 全然違いますね。空気の流れによって打つ方向や強さをコントロールします。シャトルは5グラムしかないですから、ちょっとした風で変化するんです。あと、風のみならず、体育館の情報はすべてインプットして試合に臨みます。

二宮: 具体的には?
陣内: ライトの位置、観客席や横断幕の色……もう全てです。たとえば、どの会場でもライトの光が目に入って相手の打球が見えづらくなる位置が絶対にあるものなんです。だから、それを気づかれないために試合ではライトが目に入っても、入っていないフリをするわけです。逆に見えているのに、見えづらそうな演技もしましたね。

二宮: それは細かい駆け引きですね。
陣内: すると、光が気になっていないのに、みんなそこを狙ってくる。でも実際には照明が目に入っていないから、私は何の影響もないでしょう(笑)。そして、コートをチェンジした時、ライトが相手の目に入るところを狙えるんです。でも緊張していると、こういった情報がまったくインプットできない(笑)。特にバルセロナ五輪の時は……。

二宮: バルセロナ五輪はバドミントンが初めて正式競技に採用された大会です。やはり世界選手権とは違いましたか?
陣内: 違いましたね。シャトルが飛ぶか飛ばないのかさえわかりませんでした。「これだけ試合をやってきたのに、何でなんだろう」と。でも、緊張していたのは私だけじゃなかったんですよ。たまたま隣のコートを見たら、世界王者がサービスを打つところだったんですが、その手がブルブルと震えていました。完璧なローテーションをするペアが、ぶつかる場面も目撃しました。

二宮: それが五輪なんですね。
陣内: そこで「なんだ、みんな震えているじゃないか」と開き直ればよかったんですが、「そうだよな」と思ったら、こちらの手まで震えてきたんです(笑)。

二宮: 緊張が伝染しちゃった?
陣内: 普段は周りなんか気にならないんです。赤ちゃんが泣いていようが、電話が鳴っていようが全然気にならない。でも、五輪の時だけは違いましたね(苦笑)。

(後編につづく)

<陣内貴美子(じんない・きみこ)プロフィール>
1964年3月12日、熊本県生まれ。ヨネックス所属。1981年からナショナルチーム入りし、日本を代表するバドミントン選手として活躍。92年、女子ダブルスでバルセロナ五輪に出場した。同年に引退後は、スポーツキャスターとして選手の立場に立った質の高い取材を続ける。その傍ら全国でのバドミントン講習会・講演会など競技の普及活動も積極的に行っている。夫は広島、日本ハムなどで活躍した金石昭人。

★今回の対談で楽しんだお酒★[/color]

日本初の本格そば焼酎「雲海」。時代とともに歩み続ける「雲海」は、厳選されたそばと九州山地の清冽な水で丁寧に造りあげた深い味わい、すっきりとした甘さと爽やかな香りが特徴の本格そば焼酎です。ソーダで割ることで華やかな甘い香りが際立ちます。
提供/雲海酒造株式会社

<対談協力>
かねいし
東京都港区西麻布4-11-28
麻布エンパイヤビル1F 
TEL:03-5464-7034
営業時間:
平日 18:00〜26:00(L.O.25:00)   
祭日 18:00〜23:00(L.O.22:00)
毎週日曜定休

☆プレゼント☆
 陣内貴美子さんの直筆色紙を本格そば焼酎「雲海」(900ml、アルコール度数25度)とともに読者3名様にプレゼント致します。ご希望の方はより、本文の最初に「陣内貴美子さんのサイン希望」と明記の上、下記クイズの答え、住所、氏名、年齢、連絡先(電話番号)、このコーナーへの感想や取り上げて欲しいゲストなどがあれば、お書き添えの上、送信してください。応募者多数の場合は抽選とし、当選発表は発送をもってかえさせていただきます。締切は12月12日(木)までです。たくさんのご応募お待ちしております。なお、ご応募は20歳以上の方に限らせていただきます。
◎クイズ◎
 今回、陣内貴美子さんと楽しんだお酒の名前は?

 お酒は20歳になってから。
 お酒は楽しく適量を。
 飲酒運転は絶対にやめましょう。
 妊娠中や授乳期の飲酒はお控えください。

(構成・鈴木友多/写真・杉浦泰介)
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