高橋尚子さんも登場! 世界に誇れるスポーツのOKINAWAへ

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 アジア・世界に開かれたスポーツアイランド沖縄の実現を目指して――そう銘打たれたイベントが11月13日、那覇市内で開催された。イベント内では、スポーツコンベンション、競技スポーツ、生涯スポーツを一元的に推進するとともに、合宿やイベントの誘致、受入を担う「スポーツコミッション沖縄(仮称)」の設立準備事務局を立ち上げることが発表され、シドニー五輪金メダリストの高橋尚子さんも登場。国内外の報道陣、一般参加者に沖縄の魅力をアピールした。またbjリーグの琉球ゴールデンキングス・木村達郎社長らによるパネルディスカッションで、スポーツを通じた沖縄の可能性が話し合われた。

(写真:新たなロゴマークとともに記念撮影する高橋さんと沖縄県のスポーツ関係者)
[size=medium] コミッション設立で利便性アップ[/size]

 沖縄は、言わずと知れたスポーツの楽園である。温暖な気候と豊かな自然がスポーツを愛するすべての人を受け入れてくれる。マリンスポーツのみならず、ツール・ド・おきなわ、NAHAマラソン、宮古島トライアスロン、プロゴルフのツアー戦など、毎年、さまざまな競技で大会が開かれている。

 それだけではない。トップアスリートのトレーニング場所としても沖縄は重宝されている。野球、サッカー、陸上をはじめ、たくさんの選手たちが自主トレを実施したり、キャンプ、合宿を張る。1年中、スポーツの熱い鼓動がこだまする場所、それが沖縄である。

 沖縄県では現在、「スポーツアイランド沖縄」の実現、国際的な沖縄観光ブランドの確立や世界との交流ネットワークの構築を目指している。目標の実現に向け、スポーツツーリズムの推進に取り組んできたが、スポーツキャンプや合宿、イベントの誘致、受入に関して、体育協会、沖縄観光コンベンションビューロー(OCVB)、県や市町村と担当窓口が異なることが課題であった。それらをとりまとめるワンストップ窓口機能を果たすのが「スポーツコミッション」だ。

 今回のイベントでは、まずスポーツコミッション沖縄(仮称)設立準備事務局の立ち上げが記者発表された。プロジェクトのスタートにあたり、OCVBの上原良幸会長は「市町村と連携したスポーツ施設・宿泊などの案内、競技団体と連携した対戦相手や審判などの手配など、沖縄におけるキャンプ・合宿・イベントの開催がスムーズに進むよう、きめ細やかなワンストップサービスを行う」と、スポーツコミッション設置の狙いを明かす。

 今後は2年後の2015年4月の本格稼働へ向けて、設立準備事務局が作業を進めていく予定だ。またスポーツコミッションの本格稼働の年に、那覇市内の奥武山公園内に「スポーツアイランド拠点会館(仮称)」が建設され、スポーツコミッションの事務局もその中に設置される。

[size=medium] 「オンとオフの使い分けができる場所」[/size]

 記者発表に続いて行われたのが高橋尚子さんを招いてのトークセッションだ。高橋さんは現役時代からトレーニングで何度も沖縄を訪れており、「残波岬の海沿いを走ったり、名護の七曲りの海岸の景色もきれい。ニライカナイ橋から見える景色も大好き。今帰仁(なきじん)の何もない田舎道をランニングするのも好きだった」とオススメのランニングコースが次々と飛び出した。
(写真:「冬が暖かいのはマラソンには適している。練習すれば練習するほどタイムが出る」と沖縄で走るメリットを挙げた)

「沖縄は気分転換をするところがたくさんある。オンとオフの使い分けができる場所」
 そう語る高橋さんにとって沖縄は選手時代から大切なスポットになっている。今回の沖縄滞在中も、自身が所長を務める観光庁のランナーズインフォメーション研究所が認定したランニングコースを地元の子どもたちと走った。今帰仁村から古宇利大橋を通って古宇利島に渡る海の上を走るコースで、「右も左もエメラルドグリーンの海。海と空と山があって、自然に囲まれてパワーをたくさんいただいた」と心が洗われた様子だった。
 
「海沿いの道を思い切り走ることもできるし、起伏のある道もいっぱいある」と高橋さんはランナー目線からの沖縄の魅力を披露。「止まらずに走り続けられるコースがあることがマラソン選手にとっては大事。近年は世界大会でも周回コースが主流になり、周回コースがあれば試合のシミュレーションもできる。2〜3キロ、8〜10キロの周回コースがあれば、ランナーはうれしいと思う」と要望を出した。

 また「合宿をする上では地元の理解をいただけるかが重要」とも指摘。「その土地の方々のパワーをいただきながら、練習できるような環境づくりがポイントになる」と、訪れたアスリートと迎える住民とが良好な関係を築いていくことが、スポーツアイランドとしての発展につながるとの考えを示した。

「走ると体全体を使って、その地域を楽しめる。走ることで地元の方と触れ合いながら、風を肌で感じて、波の音を聞いて、景色も目で楽しめる。その瞬間を満喫することで色あせない思い出ができる」
 行く先々で走るおもしろさを高橋さんは、そう表現する。「一般ランナーもものすごくレベルが上がっている。環境の良さを生かして、トップアスリートだけでなく、一般向けに“旅ラン”を含めて力を入れていくのも楽しい事業になるかもしれない」と提案してトークを締めくくった。

[size=medium] バスケ米国代表の合宿地に[/size]

 休憩を挟んで日本スポーツツーリズム推進機構(JSTA)の原田宗彦会長による基調講演が開かれた。原田会長はスポーツツーリズムの基本的な考え方を「スポーツで人を動かす仕組みづくり」と説明。スポーツを通じて外から人を呼び込み、地元の文化や住民との交流でリピーターを増やすことが地域の活性化につながることを強調した。
(写真:「実際には沖縄に限らず、日本に来たいという人は多いが、それに応える体制が弱い」と指摘する)

 原田会長によると、スポーツ用品・ウェアの高機能化、プロチームやスポーツイベントの地方への拡大、個人旅行の手配が容易になるインターネットの普及などでスポーツツーリズムは発展途上にある。2019年にはラグビーW杯、2020年には東京五輪・パラリンピックの開催が決まり、海外からも多数の選手、関係者、観客の来日が予想される。日本のスポーツツーリズムには追い風が吹いている状況だ。

 この好機を生かす上で、JSTAが各地で提唱しているのがスポーツコミッションの創設だ。現在、国内ではさいたま市や関西広域連合、佐賀県、新潟市で既にスポーツコミッションができている。コミッションの働きにより、さいたま市ではこの10月、世界最大の自転車ロードレースである「ツール・ド・フランス」の名前を冠したクリテリウム大会の誘致に成功。延べ20万人の来場者を集めた。

 原田会長は沖縄で設立を目指すスポーツコミッションに取り組んでほしいプランとして、「2020年東京五輪のバスケットボール米国ナショナルチームの事前合宿誘致」を提言。「アウトドアスポーツの沖縄というイメージが強いが、インドアスポーツのOKINAWAとして知らしめていくと可能性が広がる」と、エンターテインメントやショッピング施設と複合したインドアのスタジアム建設も提案した。

[size=medium] 琉球ゴールデンキングス、石垣島の挑戦[/size]

 イベントの最後を締めくくったのが、パネルディスカッションだ。JSTAの原田会長を進行役に、観光庁の八木和広スポーツ観光推進室長や沖縄県のスポーツ関係者7名が登壇。それぞれが現状の取り組みや、スポーツコミッション設立を契機にした今後の方針を発表した。冒頭で八木室長はスポーツを取り巻く行政の変化を紹介。昨年3月に決定された新「観光立国推進基本計画」や「スポーツ基本計画」でもスポーツツーリズムの推進が明記され、この6月に閣議決定した日本再興戦略のアクションプラン内でも「新たなツーリズムの創造」としてスポーツツーリズムが挙げられるなど、国策として力を入れていることを示した。

 また沖縄初のプロバスケットボールチームである琉球ゴールデンキングスの木村社長は、試合を応援にアウェーから来るブースターがSNSを通じて沖縄の魅力を発信している点に気づいた。「何もきっかけがないところに呼びかけるのは難しいが、つながりがあるところにプロモーションするのが効果的」と、全国各地でのアウェーゲーム開催時にハーフタイムなどで観光CMを放映し、沖縄での試合への応援ツアーを宣伝している。
(写真:「琉球キングスはアジアの中でも知名度が上がっている。アジアのナンバーワンを決める大会を沖縄で開催したい」と夢を明かした)

 この9月、韓国のチームと沖縄で合同キャンプを行った際には、韓国メディアが取材に訪れ、その模様が現地で取り上げられた。昨今は原発による汚染水問題などで近隣諸国では日本へのネガティブな印象を持たれているだけに、こうした報道はイメージ回復にも一役買う。「我々の活動が、こうした効果もあるのかと思った」と木村社長はスポーツの持つ力を改めて実感した。

「日本で一番元気な石垣島から来ました」と自己紹介したのは、石垣市の観光文化スポーツ局・嘉数博仁局長だ。石垣島は年間を通じて、プロ野球の千葉ロッテを筆頭に、サッカーや陸上などの一流選手がキャンプや自主トレを実施。石垣島トライアスロンなどの大会も行ってきた。その結果、観光客は年々増加し、比例して市の人口も増加中だ。家族で移住するケースも多く、高齢化が進む全国とは逆行して、14歳以下の人口が65歳以上の高齢者を上回る。

 石垣市ではスポーツツーリズムを「総合まちづくり産業」と捉えている。嘉数局長は「一過性で終わらせては意味がない。トップアスリートやトップチームのキャンプ、大会を誘致することで相乗効果をいかにつくり出すか、どうやって小さな島の子どもたちに大きな夢を与えていくかを考えている」と力説する。その結果、行政も環境面の整備に着手する方向に動き、市内では野球場やサッカー練習場、体育館などの施設が充実してきた。特にサッカー練習場のピッチは日本代表の本田圭佑選手が水はけの良さを絶賛。その評判がさらなる選手やチームの誘致に役立っているという。

 パネルディスカッションは会場からの質疑応答も含め、予定時間をオーバーする盛況ぶりで、6時間以上にわたったイベントが終了した。イベントに携わったOCVBの企画プロジェクトチーム・照屋美奈子さんは「スポーツツーリズムというと、どうしても行政や観光、スポーツ関係者だけが盛り上がる傾向になりやすい。今回は県民の皆さんに、私たちのこれからの取り組みを知ってもらえる機会になったのでは」と振り返る。その上で「今日のイベントが沖縄のスポーツにとって新たなキックオフ。イベントの中でいろいろと出た話を踏まえて、何をすべきか検討していきたい」と意気込みを口にした。
(写真:来場者からは「沖縄らしさをどう出すか」「全体をマネジメントできる人材をどう育てるか」といった質問が出された)

 現在、沖縄県を訪れる観光客は年間590万人にのぼる。将来的には1000万人が目標だ。「その実現にはさまざまなメニューが必要。とりわけスポーツを活用した観光促進は大きな課題」と沖縄県文化観光スポーツ部の湧川盛順部長は語る。沖縄を訪れる人数は現状、繁忙期と閑散期で格差があり、滞在日数も4日弱と横ばい傾向にある点が問題になっている。

 その解消の一助となるのが、スポーツだ。スポーツを絡めれば季節を問わず、人を呼び込み、長期滞在も見込める。経済効果にもつながる。国内のみならず、アジア、世界からも真のSPORTS ISLANDSとして価値を高めるべく、小さな島々の大きなプロジェクトが動き出す。

※このコーナーでは今後、沖縄にも縁が深い各競技のトップアスリートや指導者をゲストに招き、二宮清純がインタビュー。スポーツアイランドとしての沖縄の魅力をたっぷりと語ってもらいます。最初のゲストはトライアスロンの佐藤優香選手。インタビュー前編を12月13日(金)更新予定です。

 

(石田洋之)
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