中日のプレーイングマネジャーに就任した谷繁元信を支える森繁和ヘッドコーチと言えば、落合博満GMの懐刀として知られるが、編成面でも大きな役割を担っている。
 11月初旬にはウインターリーグ視察のため、ドミニカ共和国に旅立った。スリーパー(眠っている才能)の宝庫といわれる同国で、スカウト活動を展開するためだ。

 森は同国で太い人脈を築き上げている。今季のセ・リーグ2冠王(打率、打点)トニ・ブランコ(横浜DeNA)を、2009年に中日に連れてきたのも、実は森なのだ。
 森とドミニカ共和国を結び付けたのが、西武や巨人で活躍した“太っちょ”のパワーヒッター、ドミンゴ・マルティネスである。

 森は語っていた。
「彼は僕が西武のコーチをしていた時に、日本にやってきた。そのマルちゃんにドミニカの球団オーナーや社長、GMらを紹介してもらった。一度、選手を獲得すると“また、日本に連れていってくれるんだろう?”と、こちらからお願いしなくても、たくさん選手を紹介してくれる。それがブランコやマキシモ・ネルソンだったわけです」

 同国の野球を取り巻く環境は決して恵まれているわけではない。森によれば「ニワトリや羊が走り回っているところ」もあるという。しかし、選手の素材は一級品。荒削りだが身体能力が高く、メジャーリーグの貴重な選手供給源となっている。今春の第3回WBCでは、フェルナンド・ロドニー(レイズ)、ロビンソン・カノ(ヤンキース)、ホセ・レイエス(ブルージェイズ)、ネルソン・クルーズ(レンジャーズ)らバリバリのメジャーリーガーが、同国に初の「世界一」をもたらした。

 NPBではエクトル・ルナ(中日)やエステバン・ヘルマン(埼玉西武)、ホルヘ・ソーサ(DeNA)らがドミニカンである。
「ここには、ほれぼれするほどの素材がいる。育て方次第では、とんでもない選手になりますよ」と森。ドミニカ土産の中身が気になる。

<この原稿は2013年12月9日号『週刊大衆』に掲載されたものです>

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