米国から衝撃的なニュースが飛び込んできた。昨季、日本プロ野球記録の60本塁打を放った東京ヤクルトのウラディミール・バレンティンが米国フロリダ州マイアミ近郊で離婚協議中のカーラ夫人を暴行、監禁したとして捜査当局に逮捕されていたことが明らかになったのだ。

 AP通信によると、バレンティンはカーラ夫人宅を訪問した際、入室を断られたため窓から侵入。夫人の腕をつかみ、寝室に鍵をかけて監禁したという。
 バレンティンは15日に保釈されたが、起訴されるような事態になれば、来日にも影響を及ぼすものとみられている。

 昨季、ヤクルトは6年ぶりの最下位に終わった。そんな中、チームの数少ない売り物がバレンティンのホームラン記録だった。
「昨季は最下位ながらホームゲームの観客動員数は143万人と、3位だった前年より8.3%もアップした。その最大の要因がバレンティンのホームラン記録。特に日本記録の55本に近づいたあたりからは“消化試合”にもかかわらず、観客動員数が伸びた。バレンティンさまさまと言っていいでしょう」(球団関係者)
 うがった見方をすれば、チームが早々と上位争いから脱落したからバレンティンは60本ものホームランを打てたとも言える。

 以下は、某球団スコアラーの話。
「もしヤクルトが優勝争いをしていたら、他のチームはバレンティンに対し、もっと厳しく攻めていたと思います。場合によっては“ぶつけてもOK”というくらいで。というのも、ヤクルトはバレンティンひとりいなくなれば、ガクンと得点能力が落ちますから。
 その証拠に、あれだけホームランを打ちながら、デッドボールはわずかにひとつでしょう。ホームランバッターにしては少なすぎますよ」
 参考までに紹介すると、2001年に王貞治と並ぶ55本塁打をマークしたタフィ・ローズ(当時近鉄)の死球数は8、同じく02年に並んだアレックス・カブレラ(当時西武)は11個である。

 昨季限りでヤクルトのユニホームを脱いだチームリーダーの宮本慎也も、この点を指摘していた。
「果たして優勝争いの中で60本も打てたかというと、僕は疑問に思っています。だから本人にはシーズン後、こう話したんです。“ホームランは30本でもいいから、とにかくチームを上に上げるように頑張ってくれ”と。本人は真面目に“はい!”と返事をしていましたけど、何しろ、すぐに忘れるヤツなので(笑)」

 バレンティンは王貞治らが持つ55本の記録を塗り替えた直後のインタビューで、こう語っていた。
「王さんは尊敬できる偉大な記録を持ったパワーヒッター。記録に並び、そして抜くことができてうれしく思っています」

 国民栄誉賞受賞者の記録を抜いたのだから、今後のバレンティンには、それ相応の立ち居振る舞いが求められる。

<この原稿は『サンデー毎日』2014年2月2日号に掲載されたものです>

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