今季よりバッテリーコーチを兼任することになりました、平野進也です。昨年、シーズン終了後は、いろいろと考えました。25歳という年齢もあり、正直そろそろ野球を辞める時期かなという考えも頭をよぎりました。しかし、両親をはじめ、周囲の方と相談するうえで、日本一奪回、そしてNPBを目指して現役を続けることにしました。球団から兼任コーチの打診があったのは、ちょうどその頃でした。「指導経験もない、こんな未熟な自分になぜ?」と最初は驚きしかありませんでした。しかし、1週間悩んだ末、引き受けることに決めました。もともと野球をもっと勉強したいという気持ちがあり、学ぶいいチャンスだと思ったからです。
 僕はバッテリーコーチですから、キャッチャーだけでなく、ピッチャーのことも考えなければいけません。とはいえ、ピッチャーのフォームや考え方については、未経験であるだけに、分からないこともあります。そういう場合にはまずはキャッチャーの立場からのアドバイスをすると同時に、ピッチャー出身の方に訊いたりもするのですが、そうしたひとつひとつが、指導者としてもキャッチャーとしても非常に勉強となっています。

 兼任コーチである僕の役割として重要なのは、選手が話しやすい立場でいることだと思っています。というのも、やはり選手というのは監督に直接伝えるのは、なかなか難しいもの。だからこそ、選手でもあり、コーチでもある僕が選手としっかりとコミュニケーションがとれるようにすることが大事だと感じています。僕自身、コーチというよりは、バッテリー部門のリーダーというふうに思って、選手と接しています。

 “考える野球”が強さに

 新潟アルビレックスBCは、僕が入団した2011年の後期から5期連続で上信越地区で優勝しています。12年には悲願のリーグ優勝、そして日本一にまでのぼりつめました。こうした強さの要因は、選手ひとりひとりが自らの役割を理解し、考えてプレーすることができるようになったことだと感じています。だからこそ、試合で予期せぬ展開が起きても、冷静に対処することができるのです。

さらに失点やミスをしても、そのことを引きずるよりも、次に気持ちを切り替えることの方が重要だいうこともわかっていましたから、劣勢の場面でも慌てることなく次にやるべきことを見極めることができました。それが接戦をモノにしたり、終盤からの逆転劇を演じたりということにつながり、アルビレックスの強さにもなっていたのだと思います。

 とはいえ、完璧だったわけではありません。昨季のリーグチャンピオンシップではレギュラーシーズンでは6勝2敗と大きく勝ち越し、後期においては4戦全勝していた石川ミリオンスターズに1勝もすることなく3連敗を喫し、連覇を逃しました。力不足ということもあったと思いますが、何よりも絶対的なエースで初戦を落としてしまった、しかも初回にホームランで先制されたということで、チームに焦りが生じたのだと思います。

 もちろん、今季の目標は日本一奪還ではありますが、まずは1戦1戦、大事に戦っていきます。その積み重ねとして、終わってみれば圧倒的な強さで優勝していたいですね。そのためにも、やはりピッチャーが重要になってきます。1−0というロースコアでの接戦をモノにしていくことで、優勝に近づくはずです。

 理想は古田の“嫌らしさ”

 今シーズンのキーマンをひとりあげるとすれば、僕と同い年で、同期入団の野呂大樹(堀越高−平成国際大)です。12年、彼は盗塁王に輝き、日本一の立役者の一人でした。しかし、昨季は死球で負ったケガに泣き、ほとんどシーズンを棒に振ってしまったのです。そのために、アルビレックス本来の攻撃スタイルをつくることができませんでした。今季、彼がシーズンを通してリードオフマンとしての役割を果たすことができれば、打線が活気づくことは必至です。昨季の分も、どんどん走ってほしいですね。

 さて、僕自身はというと、選手としての最終的な目標はNPBです。しかし、その前にまずはチーム内のポジション争いに勝たなければなりません。すべての面においてレベルアップが必要なのですが、なかでもやはり守備力を磨きたいと思っています。理想としているのは、古田敦也さん。現役時代の古田さんは、いつもバッターが嫌がる配球をしていました。バッターが狙っている球が手に取るようにわかっていて、その裏をつく配球をする。そんないい意味での“嫌らしさ”がありました。僕ももっと観察力、洞察力を磨いて、古田さんのように、相手から嫌がられる、存在感のあるキャッチャーになりたいと思っています。

 BCリーグの開幕は4月9日。アルビレックスは12日の群馬ダイヤモンドペガサス戦がシーズン初戦となります。現在、チームは順調に仕上がっています。走攻守すべての面において昨季を上回る、スケールアップしたプレーをお見せしたいと思いますので、今季も熱い声援、よろしくお願いします。

平野進也(ひらの・しんや)>:新潟アルビレックスBCプレーイングコーチ
1988年4月28日、福岡県生まれ。福岡高、武蔵大を経て、2011年、新潟アルビレックスBCに入団。2年目の12年には打点王、ベストナインに輝き、球団初のリーグ優勝、日本一に大きく貢献した。14年よりバッテリーコーチを兼任する。
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