開幕までちょうど1カ月となりました。福井ミラクルエレファンツは4月12日、石川ミリオンスターズとの2連戦で2014シーズンがスタートします。開幕に向けて、2月24日からは合同自主トレーニングが始まりました。選手個々がオフにトレーニングをしてきたことは感じられたものの、やはり1年間を通して戦い抜く体力という点では、まだ追いこめていませんので、これからしっかりと開幕までにつけていきたいと思っています。
 私が監督に就任して今季で3年目になります。一昨年、昨年からチームにいる既存選手のほとんどが、私がどういう野球をやろうとしているのかを知っています。その彼らが新しい選手の手本となってやってくれており、私はほとんど口を出さずに済んでいます。特に最年長の金森将平(福井高−三菱自動車岡崎)や、今季キャプテンに就任した荒井良丞(羽黒高−住友金属鹿島)は、非常に強い気持ちで臨んでおり、チームを牽引してくれています。

 具体的な指導においても、ピッチャーは兼任コーチの藤井宏海(福井高−三菱自動車岡崎−ロッテ)、キャッチャーは坂巻卓也(つくば秀英高−中央大−茨城ゴールデンゴールズ−信濃グランセローズ)、外野は金森、バッティングはコーチの織田一生、そして内野は私と、分業制をしいています。これはコーチである藤井と織田はもちろん、現役である坂巻や金森についても、指導を任せられる人材と、彼らに全幅の信頼を寄せているからにほかなりません。

 期待の新人ピッチャー

 今季は10名の新人選手が加わりました。もちろん、全員に期待していますが、なかでも注目しているのは石野公一郎(佼成高−東京経済大)と藤岡雅俊(桐蔭学園高−中央大<中退>)の2人のピッチャーです。まず石野ですが、身長183センチ、体重85キロと体格に恵まれており、非常にいいものをもっています。もちろん、今のままでも即戦力になってくれることでしょう。しかし、彼が目指しているのはあくまでもNPBです。そうであるならば、やはり進化が必要でしょう。

 実際、NPBに進めていないわけですから、これまでと同じものを追い求めても、おそらく同じ結果になることは容易に想像することができます。彼には、なぜNPBに行くことができなかったのか、ということを追求して欲しい。そして、ほぼ完成された今のピッチングを、一度ばらすことも必要ではないかと思うのです。もちろん、それだけの素材を持っている選手だと感じているからです。何かをきっかけにして、これまで以上のものを発揮して欲しいですね。

 一方、藤岡は19歳と若く、非常にいいスピードボールを持っています。初めて彼のピッチングを目にした時、ボールのキレに驚きました。ホームベース付近でも、まったくスピードが落ちず、キャッチャーミットにそのままズバンとおさまったのです。「あぁ、これはNPBにいく素材だな」と、ひと目でわかりました。

 しかし、体力や実戦経験という面では、まだNPBのレベルには到達していません。それは本人も重々承知です。とはいえ、素材は一級品であることには変わりありませんから、焦ってつぶすことのないよう、慎重に育成していきたいと思っています。指導者としてはプレッシャーでもあるわけですが、課題は山積みと、完成されていないだけに、これからどんなピッチャーに成長していくのか、非常に楽しみです。

 前期優勝のカギ握る開幕前

 さて、ミラクルエレファンツは2010年から4年連続で後期は優勝し、プレーオフに進出しているものの、前期に限っては08年の球団創設以来、優勝することができていません。私としても、2年連続で前期の優勝を逃しています。

 反省点として挙げられるのは、前期での戦い方です。実力を見極めたいということもあり、前期はできるだけ多くの選手に出場機会を与えていたのです。その中で白星を積み上げながら、徐々にかためていきたいと思っていたのですが、選手からすれば、ポジションや役割が定まっていない状態で、迷いが生じていたと思うのです。それが試合の結果にも表れていたわけです。

 そこで今年は、開幕前にオープン戦や練習試合などを例年以上に多くこなすことで、これまで前期で行なっていた力の見極めを前倒しし、ある程度、固定したメンバーで開幕に臨もうと考えています。

 今季の目標は、まだ見ぬBCリーグ、そして独立リーグの頂点に立つことですが、そのためにはプレーオフ進出の権利を得なければなりません。ですから、まずは前期での優勝だけを目指して戦っていきたいと思っています。ぜひ、今季も球場に足を運んで応援してください。

酒井忠晴(さかい・ただはる)プロフィール>:福井ミラクルエレファンツ監督
1970年6月21日、埼玉県出身。修徳高校では3年時にエースとして活躍し、主将も務めた。89年、ドラフト5位で中日に入団。プロ入り後は内野手として一軍に定着した。95年、交換トレードで千葉ロッテに移籍し、三塁手、二塁手のレギュラーとして活躍した。2003年、再び交換トレードで中日に復帰したが、その年限りで自由契約に。合同トライアウトを受け、東北楽天に移籍した。05年限りで引退したが、07年からは茨城ゴールデンゴールズでプレーした。12シーズンより、福井ミラクルエレファンツの監督に就任した。
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