14日現在、富山は16試合を終えて5勝11敗と、負けが込んで苦しい状況となっており、現在はさまざまなことを修正しているところです。しかし、チームの状態は徐々に良くなってきているという手応えを掴んでいます。投打ともに、選手たちに力はあります。それをどう試合に出していくかが、これからの課題です。
 なかなか勝ち星を挙げられない要因のひとつは、先発投手が早いイニングで崩れ、試合をつくれないことにありました。これまでは5回もたずに降板することも少なくなかったのです。その大きな原因は、投げるスタミナが不足していたこと。3、4回にもなると、スピードもキレも落ちてしまっていたのです。

 そこで、普段の練習では走り込みや投げ込みを増やし、スタミナをつくってきました。その成果が、ここにきてようやく出始めています。9日の石川ミリオンスターズ戦では白星はつきませんでしたが、塩将樹(藤沢翔陵高−神奈川大−横浜金港クラブ)が7回4失点、10日の福井ミラクルエレファンツ戦では隆史(加藤学園高−関東学院大)が10回を投げて1失点と好投し、延長戦を制しました。スタミナ面が改善されたことによって、これまで発揮できなかった彼らの力が出始めてきたのです。

 その一方で、現在個別にミニキャンプをして鍛えなおしているのが、安斉雄虎(向上高−横浜)です。彼は2009年のドラフトで横浜(現横浜DeNA)に3巡目で指名されている投手ですから、もともとの能力は高いのです。彼本来のボールを投げることができれば、BCリーグではトップクラスであることは間違いありません。

 しかし、まだ身体が出来上がっていないのです。これまでは技術面ばかりを求めていたのでしょう。現在はとにかく身体づくりを重視したメニューを課しています。疲労のピークを1、2回つくることで、それ以降は身体の動きも変わってくるはず。ファンの皆さんには、もうしばらくお待ちいただけたらと思っています。

 打線は2割3分5厘とチーム打率はリーグ最下位ですが、それなりに得点することはできているという手応えはあります。ただ、まだチャンスが続いている時に、追加点を奪ってたたみかけるといったことができていないというのが現状です。それが残塁数の多さにもつながっているのです。特に接戦を制するには、チャンスの時にもう1、2点取れるような攻撃をしなければ、競り勝つことはできません。そのためには、いかにつなぐ攻撃ができるかが、今後の課題となります。

 苦しい時こそ必須の一体感

 さて、選手個々にも少しずつ変化が見え始めています。例えば、BCリーグ在籍6年目となる岡野勝利(前橋育英高−群馬ダイヤモンドペガサス)。彼は内気な性格で、これまではなかなか感情や言動が表に出てきませんでした。しかし、最近では私が何か言った時にも、すぐに反応して動くようになってきました。守備やバッティングについて、いろいろと興味を持ち始めているのだと思います。

 また、チーム唯一の地元選手である大上戸健斗(遊学館高−大東文化大)も、これまではバッティングに重きを置いていましたが、最近では守備に対しても状況判断など、非常に敏感になってきていて、いい傾向にあると思います。また、得意のバッティングに関しても、もう一段ステップアップしようとしている姿が見受けられます。

 大上戸はバッティングには非常にいいものがあります。そのひとつは、実戦の打席できちんと自分のスイングができることです。これは打者にとっては非常に大事なこと。自分のスイングができるからこそ、変化球にも対応できるし、バットでしっかりととらえる確率も上がる。また、たとえ凡打したとしても、相手投手にとっては嫌なものなのです。大上戸には積極性もあり、1年目の昨季は打率3割6厘をマークし、リーグトップ10の仲間入りを果たしました。おそらく1年目ということもあり、ただただ一生懸命にやったことがうまくいったのでしょう。

 しかし、2年目も同じことをやっていては成長はそこでストップしてしまいます。次のステップへと進むために、プラスアルファのものが欲しい。さらに自分の能力を伸ばすためには、どうすべきなのか――。それが大上戸には、見え始めてきたように感じられるのです。今後が楽しみな選手のひとりです。

 前述したように、チームは今、少しずついい方向に進み始めています。それを最も強く感じたのは、11日のオリックス(ファーム)戦でした。私は、試合の入り方を非常に重視しています。いかに集中し、強い気持ちを持って試合に臨めるか。これによって、結果はまるで違うものになるからです。その点、11日のオリックス戦では、試合前のシートノックの時から、選手たちには気合いがみなぎっていました。私が富山の監督に就任して以来、一番気持ちのいいノックでした。

 おそらく先にシートノックをしたオリックスの選手たちに刺激を受け、それがプラスの方向に出たのだと思います。表情からも声からも、集中していることがわかりましたし、全員が同じ方向を向いているという一体感が感じられたのです。現在のように、苦しい状況の時にこそ、チームのまとまりが必要です。それをオリックス戦では、見ることができたのです。この状態を継続させることができれば、必ず富山は強くなる。私はそう確信しています。ぜひ、今後の富山に期待してほしいと思います。

吉岡雄二(よしおか・ゆうじ)>:富山サンダーバーズ監督
1971年7月29日、東京都生まれ。帝京高校3年時にはエースとして春夏連続で甲子園に出場。夏は全5試合に登板し、3完封と優勝に大きく貢献した。打者としての素質も高く、高校通算本塁打数は51本を数えた。90年ドラフト3位で巨人に入団するも、右肩を手術。4年目の93年から内野手に転向した。97年オフ、交換トレードで近鉄へ。2004年の球団合併に伴い、新規参入の東北楽天に移籍した。09年にはメキシカンリーグでプレーする。10年オフに現役を引退。翌年、愛媛マンダリンパイレーツ(四国アイランドリーグplus)の打撃コーチに就任。14年からは富山サンダーバーズの監督を務める。
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