第198回 徳島・島田直也「うれしい誤算、防御率トップのアヤラ」

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 前期の日程はちょうど半分を消化し、11勝7敗2分の2位。開幕前は先発ローテーションが固まらず、どうなるか不安でしたが、起用した選手が頑張って仕事をしてくれた結果が貯金につながっています。結局、ローテーションはセットアッパーの入野貴大を先発にまわし、彼を軸として投手陣を再編することになりました。
 先発2番手はエルサルバドル出身のクルズ・アヤラ。前回は「ウイニングショットがなく、先発では難しいかも」と紹介しましたが、実際に先発でテストしてみると、長いイニングを投げるスタミナもあり、コントロールもそこそこまとまっています。

 4月27日にソフトバンク3軍を完封して以降、5月9日の香川戦、16日の高知戦と好投を続け、3連勝。防御率は0.76でリーグトップです。正直、ここまでやってくれるとは予想していませんでした。うれしい誤算です。

 これといった決め球がなくても抑えられる要因は独特のタイミングでしょう。モーションが大きく、腕が遅れて出てくるため、バッターは合わせるのが難しいようです。その上で速球とチェンジアップ、シンカーで緩急をつけ、うまく打者を翻弄しています。

 加えて、適度に荒れ球なのもアヤラに味方していますね。ボールが続き、制球を乱したようにみえて、ポンポンとストライクが入る。バッターは待つべきか打つべきか迷っているように映ります。

 何より、本人が野球に対してまじめなのも好成績につながっていると言っていいでしょう。徳島で指導して4年目になりますが、彼ほど一生懸命頑張る外国人は初めてです。練習も早く来て、ひとりで走っています。マリナーズ傘下では3Aの経験もあり、メジャー昇格への厳しい競争を味わってきたせいか、意識の高さがうかがえますね。

 日本でチャンスをつかみたいとの気持ちも強く、こちらのアドバイスにもしっかりと耳を傾けてくれます。現在、NPBで活躍している外国人ピッチャーと比較すれば、まだまだですが、レベルアップしていけばスカウトの注目を集めるかもしれません。

 当面の課題はクイックでのピッチングです。クイック自体は遅くないのですが、クセが出ており、相手に見破られる恐れがあります。その点は修正をしながら、さらにアピールできるよう手助けしていくつもりです。

 そして3番手の19歳右腕・山本雅士もよく投げてくれています。14日の高知戦では9安打を打たれながら、初完投を完封で飾りました。9安打といってもエラーでもおかしくない打球もありましたから、守りに足を引っ張られながら、粘って抑えたと思います。これは本人にとって自信になったことでしょう。

 彼の良さは前回も紹介したように投げっぷりの良さ。どんどんストライクで攻めていくので、バックで守る野手もリズムができます。自滅しないタイプだけに、ベンチとしても、ある程度のイニングが計算できるのは助かりますね。

 ピッチャーとして一番大事なのは、絶対にストライクがとれる球をストレート以外にひとつつくること。ストレートでしかカウントを整えられないピッチャーはバッターに狙い打ちされますから、当然、ピッチングが苦しくなります。

 首位・香川との直接対決となった18日の試合では、河本ロバート福岡一成と終盤のリリーフ陣の先頭打者への四球が勝ち越し点、ダメ押し点を与えるきっかけとなりました。先頭打者への四球は得点につながることが多く、接戦の展開では命取りになりかねません。どんな状況でもストライクが取れる変化球をひとつ磨いておけば、カウントが苦しくなっても、それで立て直すことができます。NPBで通用するレベルになるには、球種の数よりも、100%の自信があるボールを身に付けられるか。この点をもっと追求する必要があります。
 
 山本も、もうワンランク上を目指すには武器となるボールが求められます。現状はフォーク、カットなど変化球は一通り投げられるものの、本当に困った時に自らを助けるボールがありません。完封したゲームでは166球と多くの球数を要しました。無失点でなければ、おそらく継投策をとっていたでしょう。カウント球でもウイニングショットでも使える変化球を磨けば、もっと少ない球数で長いイニングを投げられるはずです。

 打線はチーム打率.288、115得点はともにトップと当たっています。2番にルーキーの増田大輝が定着し、1番の吉村旬平とのコンビで3割5分を超えるアベレージをマークして攻撃を引っ張っているのが大きいですね。またクリーンアップの後を打つ鷲谷綾平も打率.333と好調です。

 それだけに前期優勝がかかった残り試合では、ピッチャー陣の踏ん張りが欠かせません。幸い、入野が先発に回って不安定だったブルペンには、腰を痛めて離脱していた富永一が戻ってきます。このところ終盤に接戦を落とす敗戦が目立っていただけに、抑えの実績もある元NPB右腕の復帰は明るい材料です。

 首位・香川とは2.5差で、今月はあと4試合、直接対決が組まれています。香川との差を自力で詰めるチャンスであり、前期の大きなヤマ場です。ピッチャーは万全の態勢でつぎこみ、勝負をかけたいと考えています。

 香川は投手力が安定しており、打線もチャンスにたたみかけてくる強さがあります。先述したようなムダな四球やミスが出ると、相手のペースになってしまうでしょう。いかにきっちりした野球をして、逆にチャンスを生かせるか。ここが勝敗のポイントとなるはずです。

 開幕前と比較すれば、チームも個々の選手も試合を重ねて成長しています。これを何とか優勝という結果につなげたいものです。23、24日の香川との首位攻防戦はホームのJAバンク徳島スタジアムで開催されます。たくさんの応援をよろしくお願いします。


島田直也(しまだ・なおや)プロフィール>:徳島インディゴソックス監督
1970年3月17日、千葉県出身。常総学院時代には甲子園に春夏連続出場を果たし、夏は準優勝に輝いた。1988年、ドラフト外で日本ハムに入団。92年に大洋に移籍し、プロ初勝利を挙げる。94年には50試合に登板してチーム最多の9勝をあげると、翌年には初の2ケタ勝利をマーク。97年には最優秀中継ぎ投手を受賞し、98年は横浜の38年ぶりの日本一に貢献した。01年にはヤクルトに移籍し、2度目の日本一を経験。03年に近鉄に移籍し、その年限りで現役を引退した。日本ハムの打撃投手を経て、07年よりBCリーグ・信濃の投手コーチに。11年から徳島の投手コーチを経て、12年より監督に就任。 
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