「うまくいかなくても途中であきらめない。それが大事」
 40歳を過ぎてもなお第一線で活躍するプロテニスプレーヤー・クルム伊達公子選手が、優しく子どもたちに語りかけるテレビCMがこの春から愛媛県内で放映されている。伊予銀行の新CMだ。同行では2011年からクルム伊達選手をイメージキャラクターとして起用。「Challenge&Smile」のブランドスローガンとともにCMやポスター展開などを行ってきた。

(写真:これまでの撮影では来県が叶わなかったが、今回は実際に松山市の津和地島でロケを実施)
 クルム伊達選手と伊予銀行とは、それまでも男子テニス部との合同練習などで接点があり、2009年の日本選手権ではクルム伊達選手と同行の植木竜太郎選手がペアを組み、ミックスダブルスで優勝を収めた実績もある。あふれる笑顔でチャレンジし続ける姿と、お客様の満足のために挑戦し続ける伊予銀行のあり方は共鳴する点があり、イメージキャラクター就任が決まった。

 昨年末、クルム伊達選手は新CM撮影のために来県。瀬戸内海に浮かぶ津和地島を訪れた。島内にある津和地小学校は全校生徒4名。彼らが卒業すると廃校になってしまう。それでも子どもたちは“笑顔”を絶やさず、夢に向かって“挑戦”している――。そんな姿をクルム伊達選手との交流を通じて表現し、地域とつながる伊予銀行を発信できれば、との狙いだ。

 トッププロがやってきての撮影に島の子どもたちは当初、緊張した面持ちだった。そこへクルム伊達選手がメロンパンの差し入れをすると、パン屋がない島の子どもたちはすぐ笑顔に。天候にも恵まれ、校庭で一緒にテニスをしたり、海辺に座って将来の夢を語り合ったり、撮影は快調に進んでいく。津和地島の美しい自然と、純粋で素朴な子どもたちの笑顔が印象的なCMが完成した。
(写真:「新しい力が明日をつくる」。ナレーションも全編、クルム伊達選手が担当している)

「テニスが楽しいと感じられる限り、続ける」
 クルム伊達選手はそう話している。伊予銀行では「世界で活躍するプロテニスプレーヤーということ以上に、“何事も諦めずに挑戦する”という姿勢に共感している。引き続きクルム伊達選手らしい考え方、生き方を貫かれることを期待している」と、今後もともに「Challenge&Smile」を体現していきたい考えだ。
>>テレビCMはこちらから(伊予銀行のサイトへ)


 愛媛県内で近年、盛り上がりを見せているのがサイクリングである。愛媛・今治から広島・尾道までを8つの橋で結ぶ“しまなみ海道”は、“サイクリングの聖地”として国内外から多数の愛好者が訪れるスポットとなっている。

 このサイクリングを軸にした観光を振興しようと、愛媛県では県内を「サイクリングパラダイス」化すべく、環境整備を進めている。伊予銀行でも地域貢献の一環として、イベントへの協賛金はもちろん、ボランティアの派遣など、この取り組みをサポートする方針だ。

 昨年3月には行内を中心に自転車愛好者が集まり、サイクリングクラブが設立された。1カ月に1回ペースでクラブ主催のサイクリングを実施したり、県内のサイクリングイベントに参加している。またイベントを支えるボランティアにも積極的に協力している。

 昨年10月には今治市出身のプロライダー・門田基志選手とアドバイザリー契約を締結。毎月、定期的にミーティングを開催し、サイクリングイベントなどの実施や支援において、具体的にどのように取り組むべきか、門田選手から助言を受ける。

 門田選手は台湾の世界的自転車メーカーであるジャイアントに所属し、マウンテンバイクのプロ選手としてレースに出場する傍ら、“ライフワーク”として地元に自転車文化を広めようと精力的に活動している。
「しまなみ海道のように、島々を橋で結ぶような道があるのは世界的にも珍しい。しかも、自転車で走りやすい。これは世界に誇れるコースだと考えています。“SHIMANAMI”を世界の共通語にするのが夢ですね。世界中のサイクリストなら誰もが知っていて、一度は訪れたいと憧れる場所にしたい」
(写真:「海のすぐそばを走れる道も世界的には少ない。環境を整えれば、たくさんの人が訪れるはず」と門田選手は愛媛の魅力を強調する)

 そう熱く夢を語る門田選手だが、選手として昼間はトレーニングでペダルを回し、夜は今治市内で焼き鳥屋の店長として串を回す。プロジェクトを推進するには人手も資金も必要だ。
「県内でバックアップしてもらえる企業はないかと考えた際に、真っ先に浮かんだのが伊予銀行さんでした。世界で一番のコースであるしまなみ海道を広めるために活動するなら、やはり愛媛県で一番の企業に支えてもらいたいと思ったんです」
 愛媛を拠点に世界を駆けまわるトップ選手のアプローチに伊予銀行も応え、タッグを組むことになった。

 10月26日にはしまなみ海道を舞台に国際サイクリング大会「サイクリングしまなみ」が開催される。最大8000人の参加が予定される一大イベントだ。昨年はプレ大会が開かれ、国内外から集まった2560名が橋上を駆け抜けた。伊予銀行ではコース内にある大三島の保養所をエイドステーションとして提供。約80名の行員がボランティアとして地元産品をふるまい、好評を得た。

 10月の大会では、その3倍以上の人出が予想される。門田選手は「受け入れ態勢がまだ整っているとは言い難い」と現状を明かす。大会を円滑に運営するには、地元民の協力やスタッフの充実は不可欠だ。道案内やトラブル時の対処など、競技への理解を深める作業も求められる。

 その点で、伊予銀行にできたサイクリングクラブは強力な“縁の下の力持ち”となり得る。同行では大会への協賛金に加え、移動観察員(バイシクルスタッフ)やボランティアの派遣などでビッグイベントの成功に向け、できる限りのサポートを行う予定だ。

 自転車文化を愛媛の地により根付かせる上で、門田選手は伊予銀行とのさまざまなコラボレーション案を考えている。
「伊予銀行さんは県内に多くの支店があるし、老若男女問わず、お金にまつわる用事があれば誰でも立ち寄る場所。それをうまく利用したいですね」
 たとえば、ロビーでの待ち時間にサイクリングイベントの告知映像を流したり、サイクリング用自転車を購入する上で、自動車ローンならぬ、“自転車ローン”を設けることも門田選手の温めているアイデアだ。

「支店をサイクルステーションとしても活用できるようになれば、サイクリングをする人にとってはありがたいはずです。ちょっとした休憩所になるだけでなく、パンクしたり、チェーンが外れたりした際には工具があって、簡単な修理もできる。銀行の支店は、そういった場所にもできる可能性があると考えています」

 伊予銀行ではサイクリングに力を入れることで、行員間の親睦や健康増進に加え、「職場や地域を越えてイベント参加者同士の交流も広がっている」と効果を実感している。何より、「車で通り過ぎると見落としてしまうことも、自転車で走るといろいろなものが見えてくる」と地元の良さを再発見するきっかけにもなっているようだ。良さを再認識すれば、地域を愛する心が育まれる。その心は、地元のさらなる発展につなげようとする活力を生む。活力が元気なまちをつくり出す。
 
 グルグルと回って前進する自転車のホイールのごとく、地元に好循環を――。これからも伊予銀行はさまざまな取り組みを通じて、ふるさとの明るい未来へ向かって“輪”を広げ、支えていく。




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