スタンド全体が鮮やかなオレンジに染まった。
 5月18日、ニンジニアスタジアム。サッカーJ2の愛媛FC−カマタマーレ讃岐の「新・四国ダービー」。スタンドに詰め掛けた観客は愛媛のチームカラーであるオレンジのボードを掲げ、ピッチに入場する選手たちを迎え入れた。

(写真:今季からリニューアルされたバックスタンドもオレンジ一色に)
 コレオグラフィーで一体感を

 この日は今季よりJ昇格を果たした讃岐との初対決。熱気高まるホームでのダービーをマッチスポンサーとして支援したのが伊予銀行だ。伊予銀行は愛媛FCのスポンサーとして、J昇格初年度から毎年1回、「伊予銀行サンクスデー」と銘打ってホームゲームでのイベントを実施している。昨年のサンクスデーは徳島ヴォルティス戦に合わせて開催され、9回目となる今年も四国対決を盛り上げるかたちになった。

 過去のサンクスデーでは、オレンジの巨大ユニホームを作成して試合前やハーフタイムにピッチ上やスタンドで広げ、応援に華を添えた。また伊予銀行オリジナルキャラクターの「とりカエル」などがスタジアムに訪れたサポーターたちを出迎えた。さらには「伊予銀行カップ」と銘打ったジュニアサッカー大会を試合前のピッチで実施。各市町対抗の小学生によるリレー大会を地域の絆を強める観点からスタジアム内のトラックで開催したり、ファンの新規開拓を目指したスタジアムフォトコンテストを企画してきた。

 伊予銀行は今季より、新たにユニホームの背中部分のロゴスポンサーとなり、文字通りクラブを後押しする存在となった。この4月に愛媛県知事の中村時広知事が発起人代表となって設立された「愛媛FC・J1昇格サポート協議会」では伊予銀行の大塚岩男頭取が会長に就任。「同じ四国内のライバルであった徳島がJ1に昇格した中、愛媛FCは収入面や観客動員でも差をつけられており、伊予銀行が愛媛FCを応援する姿勢をみせることで他のスポンサー様へのいい影響になれば」との思いで地元のクラブをこれまで以上に応援している。

 今回のサンクスデーでは「例年以上に多くの方に観戦に来ていただき、応援を楽しんで、また観戦に来ていただけるようになってほしい」との狙いから、スタンドが一体となれる試みを考えた。それが冒頭で紹介したコレオグラフィーだ。来場者が色のついたボードを一斉に掲げ、スタジアムを彩る。愛媛FCの本拠地・ニンジニアスタジアムは改修工事で今季からバックスタンドが新しくなっており、観客席がオレンジ一色になれば、応援ムードを一層高められる。

 そのためにはひとりでも多くの観客がスタジアムに運び、企画に協力してもらうことが肝心だ。動員目標は「1万人」。事前の宣伝にも力を入れた。本店営業部と、ショッピングモール「エミフルMASAKI」内の支店では試合1週間前から、行員がレプリカユニホームを着用して窓口対応。訪れた人々の目を引き、サンクスデー実施をPRした。加えて本店営業部入口や松山市駅前などで、ユニホームTシャツを着用したキャラクターの「とりカエル」や行員が、クラブスタッフやボランティアと一緒に告知チラシを配布し、観戦を呼びかけた。
(写真:レプリカユニホームでの接客は好評だった)

 イベント成功 試合も快勝

 迎えた当日、晴天にも恵まれ、スタジアムには続々と観客がやってきた。伊予銀行でも例年の倍となる約2000名の行員とその家族が参加。スタジアムの各ゲートでは来場者に例年同様、愛媛FCとの特製コラボタオルを先着3000名に配布された。バックスタンド中央には恒例となったオレンジ色のジャンボユニホームもお目見えした。

 試合前には前年に続いて、ジュニアサッカー大会「伊予銀行カップ」を開催。この後、プロの選手たちが火花を散らすピッチで、子どもたちが懸命にボールを追いかけ、ゴールを狙った。

 さらにスタジアム外でもホームゲームのイベントと連動した。愛媛FCではJ昇格以来、地域との結びつきを強めるため、各ホームゲームでマッチシティ&マッチタウンを設定し、県下の各自治体と連携しており、今回のマッチシティは西予市だった。

 西予市といえば有名なのが160余年の歴史を誇る「野村乙亥大相撲」である。元関脇・玉春日(現片男波親方)も輩出した「相撲のまち」をアピールすべく、西予市ではスタジアム前広場に土俵を設け、相撲教室と大会を開いた。この企画に伊予銀行も協力。「伊予銀場所」と銘打って入賞者への商品提供を行った。
(写真:キャラクターの「とりカエル」も飛び入り参加)

 加えてハーフタイムのプレゼント抽選会でも、伊予銀行が一役買った。キャラクターの「とりカエル」がスタジアム内を回り、入場時に配られた特製コラボタオルを掲げてアピールする観客をカメラ撮影。目に留まった人をズームインしてスタジアムのビジョンに映し出し、レプリカユニホームの当選者を決定した。従来の抽選番号による当選者発表に加え、趣向を凝らしてスタンドを盛り上げた。

 試合は伊予銀行のサンクスデーにかける熱意に応えるかのように選手たちもピッチ上で躍動。地元出身のMF近藤貫太がJ初ゴールを含む全得点に絡む活躍をみせ、愛媛が2−0で白星を手にした。歓喜に沸き立つスタンドではジャンボユニホームも大きく揺れ、勝利を祝った。

 ただ、観客数は7,166人。目標の1万人には及ばず、スタンドの一部には空席も見られた。そのため、コレオグラフィーも完全にオレンジでスタンドを埋め尽くす状態にはならなかった。愛媛FCは6月27日現在、5勝5分9敗で22クラブ中17位。ホームゲームでの1試合あたりの観客動員数も4,074人で同19位とも苦戦が続く。だが、伊予銀行では「愛媛FCの頑張りで愛媛県全体が元気になることを期待したい」と今後も支援を惜しまない方針だ。

 スポーツの大会をはじめ、催しものの多い夏、伊予銀行は今回のサンクスデーのみならず、県内のさまざまなイベントに協賛、参加する。8月の第10回全日本女子硬式野球選手権大会では、今年も「伊予銀行杯」としてスポンサード。昨年は地元の女子硬式野球チーム「マドンナ松山」が3位入賞を果たし、今年も上位を狙う。この活動も伊予銀行が支えている。

 各地域の夏祭りでは8月8日に幕を開ける「松山まつり」で風物詩の「野球拳おどり」に伊予銀行連を結成して参加する。昨年は衣装を一新し、見事、優勝を飾った。目指すはもちろん2連覇だ。伊予銀行は「潤いと活力のある地域の明日を創る」との理念を存在意義として掲げている。今後も愛媛FCなどの地元のスポーツや、地域を活性化するイベントと協同し、愛媛を笑顔あふれる場所にしていくつもりだ。




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