フレデリク・セペダ(巨人)に続いてユリエスキ・グリエル(横浜DeNA)。キューバの至宝が相次いで日本球界入りした。
 2人とも実績はダテではない。セペダとグリエルは2004年アテネ五輪金メダル、08年北京五輪銀メダルを獲得したチームの主軸で、WBCにも全3大会に出場している。


 もし米国に“野球亡命”していたら、2人とも今は億万長者だろう。
 それは昨年に亡命し、今ではホワイトソックスの主砲となったホセ・アブレイユの活躍を見れば明らかだ。ちなみに彼の契約は6年総額6800万ドル(約70億円)である。

 それにしても、なぜ、ここにきてキューバは日本への移籍を解禁したのか。
「選手が米国に亡命すれば、キューバには1円も入らない。ところが国が仲介して日本に移籍させれば20%が手数料として入る。財政事情の苦しいキューバは一流選手を外貨獲得の新しい手段として利用している」(キューバ野球に詳しいMLB球団スカウト)

 ちなみにセペダの年俸は推定1億5000万円。その2割ということは、単純計算で3000万円が国家に入る計算になる。
「いや、それだけじゃない。セペダのような国家的な英雄は、自主的に寄付をしなければならない。だから2割の手数料というのはタテマエに過ぎません」(同前)

 キューバの至宝の来日を誰よりも喜んでいるのが巨人の長嶋茂雄終身名誉監督である。
 セペダの獲得が決まった際には、次のようなメッセージを出した。
「私が(巨人の)監督になってからずっと、選手獲得や人的交流の可能性を探ってきました。今回の交流を契機に、両国の友好関係が深まることを願っています」

 周知のように、ミスターほどキューバ野球に魅入られた人物はいない。
 巨人の監督を解任された80年のオフには、キューバに飛び、実際に球場で彼の地の野球を視察している。

 自著『ネバーギブアップ』(集英社)によれば、ミスターは現地で記者から次のような取材を受けている。
「日本のプロ野球とキューバのチームが戦ったらどうなると思うか?」

 ミスターの答えは、こうだ。
「多分キューバの方が強いでしょう。もし現在の読売ジャイアンツが5ゲーム戦ったとして、1ゲーム勝てるぐらいではないか」

 あれから34年。同じ質問をしたら、ミスターはどう答えるだろう。

<この原稿は2014年7月4日号『週刊漫画ゴラク』に掲載されたものです>


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