オールスターゲームに、投手と野手の両方で選ばれたのは関根潤三(1951年、53年=投手。59、60、62、63年=野手)以来、実に55年ぶりだった。
 言うまでもなく北海道日本ハムの“二刀流”大谷翔平のことである。


 昨年、関根に大谷の印象について語ってもらった。その一部を紹介しよう。
「足がスラッとしていて格好はピッチャー向きだね。僕がピッチャーをチェックする時、まず見るのは足のかたちと肩の出方が合っているか。彼はちょっとガニ股なのでヒザが割れて腰が回転しやすい。オーバースローよりもスリークォーターの方が投げやすいんじゃないかな。
 バッティングについて言えば、まず構えがいい。それに目の間隔が詰まっていないところがいい。長嶋茂雄もそうだったけど、目の間隔が広い分、しっかりボールをとらえられるんです」

 さすがは長老、目の付けどころが違うと感心したものである。
 昨季、ピッチャーとしては3勝(0敗)に終わった大谷だが、今季は登板のたびに160キロをマークし、9勝(2敗)をあげ、防御率は2.17。いずれもパ・リーグの2位だ(記録は8月4日現在)。

 これを受け、「そろそろピッチャーに一本化すべきではないか」という声が、至る所からあがっている。

 その筆頭が元横浜監督の権藤博である。
<今すぐメジャーに行っても、ダルビッシュ有や田中将大と並ぶ3大エースとなる力をつけつつある。二刀流を続けるべきかどうかなど、もう考えるまでもない、といえるだろう>(日本経済新聞6月26日付)

 松坂大輔の6年総額60億円、ダルビッシュの6年総額46億円、田中の7年総額162億円の例を持ち出すまでもなく、メジャーリーグで一稼ぎしようと思ったらバッターよりもピッチャーだ。

 とはいえバッターとしての魅力も捨て難い。最後は本人が決める問題だが、ハムレットの時間は、いつまで続くのか……。

<この原稿は2014年7月28日号『週刊大衆』に掲載された原稿を一部再構成したものです>


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