将来、なでしこジャパンのユニフォームに袖を通すであろう選手がいる。ピッチを所せましと躍動し、ゴールを決めてチームを勝利に導く。彼女の名は南野亜里沙。今季からノジマステラ神奈川相模原(なでしこチャレンジリーグ)でプレーする22歳だ。ポジションはFWで、関東学園大学4年時だった昨年は、関東大学女子サッカーリーグ1部で得点女王(12点)に輝いた。チャレンジリーグ1年目の今年は、ルーキーながら第15節終了時点で11ゴールを挙げて得点ランキング5位。高い決定力で1部のなでしこリーグ昇格を狙うチームを支えている。
 南野は今季のチャレンジリーグ開幕戦となったセレッソ大阪堺レディース戦(4月5日)で華々しくデビューした。スタメンで出場し、2ゴールを挙げたのだ。1点目は前半1分、ゴール前で相手のクリアミスを奪ってゴールを陥れた。13分には右サイドからのクロスがこぼれたところを押し込んだ。
「ゴールをとりたいという気持ちが強かったので、結果を出せてすごく嬉しかったですね。デビュー戦という緊張も少しありましたが、プレーに影響が出るほどではなかったと思います」
 南野はこのように試合を振り返った。チームも開幕戦を白星で飾り、彼女にとっては最高のデビューとなったに違いない。

 ノジマステラ監督の菅野将晃も22歳の上々のデビューを喜んだ。
「能力の高い選手でも、1年目はなかなか結果を出せず、悩むことがよくあります。しかし南野は開幕戦で2点とることができて、うまくシーズンに入れたのではないでしょうか。これは持っている力をどんどん発揮してくれるかなと思いましたね」

 南野は指揮官のその期待に応える。第2節バニーズ京都戦(4月12日)でハットトリックを達成したのだ。関東大学女子サッカーリーグ得点女王の肩書きに偽りなしということを証明してみせた。その後も、南野はスタメン出場を続けている。

 だが、結果を出し続けるルーキーを、対戦相手も警戒しないはずはなかった。シーズンが進むにつれて、南野はボールを受ける際に相手選手からより厳しくプレッシャーをかけられるようになった。時にはファールととられても不思議ではないチャージを受けて倒されることもある。それでも南野は「厳しくマークされる中でもしっかりとボールを収めないといけない」と決して弱音は吐かない。菅野は「そこが南野のいいところ」と語り、こう続けた。
「彼女は非常に気持ちが強いんです。相手からのプレスをガンガン受けると、味方からのパスを簡単にはたいたり、あえてパスを要求しなくなったりする選手もいます。しかし、南野は逃げずにポストプレーをやろうとします。ボールを足元で収められるのは南野のストロングポイント。それを捨ててはいけません」

 南野にマークが集中するということは、他の味方選手への警戒が弱まっているということでもある。つまり南野を“おとり”にして、空いたスペースを突くというかたちもつくれるのだ。彼女はワントップの役割について、次のような考えを示した。
「もちろん、プレッシャーを受けている時はダイレクトでさばかなければいけない場合もあります。しかし、しっかり自分のところでボールを収めて、“タメ”をつくれば、味方が攻撃に参加するまでの時間を稼ぐことができる。ワントップとして、ゴールをとるだけではなく、得点に絡むことも重要だと考えています」

 南野がFWを主戦場にし始めたのは大学3年の夏からだ。まだまだFWとしての経験は豊富とは言えない。だが、その分、彼女のノビシロは計り知れない。“ストライカー・南野亜里沙”としてのキャリアはまだ始まったばかりだ。

(第2回へつづく)

<南野亜里沙(みなみの・ありさ)プロフィール>
1991年11月26日、徳島県板野郡板野町出身。作陽高―関東学園大―ノジマステラ神奈川相模原。社会人チームでプレーしていた父の影響でサッカーを始める。小学生時は女子サッカークラブの板野プリマヴェーラFCに所属。小学5年の時には、徳島県選抜として全国大会準優勝を経験した。中学ではプルミエール徳島でプレー。中学3年だった06年にはU−15女子日本代表候補に選出された。作陽高校では1年時から主力を務め、全国大会に出場。関東学園大学では3年夏にFWへコンバートされ、2013年関東大学女子サッカーリーグ1部の得点女王に輝いた。今季からなでしこチャレンジリーグのノジマステラ神奈川相模原に入団。1部昇格を目指すチームの得点源として活躍している。身長156センチ。背番号19。
>>ノジマステラ神奈川相模原公式HP



(文・写真/鈴木友多)


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