二宮: 夏の甲子園も開幕し、連日、熱戦が繰り広げられています。甲子園のアイドルといえば、やはり記憶に残るのが荒木大輔さん。今回はそば焼酎「雲海」とともに、当時の思い出をたっぷりと語ってもらえればと思っています。
荒木: 焼酎は大好きです。でも、そば焼酎は飲んだ記憶がないので、どんな味がするんだろうと楽しみにしてきました。

二宮: 暑い時期ですから、のどごしもスッキリとするSoba&Sodaでどうぞ。
荒木: あっ、これはおいしいですね。個人的にはクセがある焼酎も好みですが、そば焼酎は飲みやすくてクセになりそうですね(笑)。

二宮: それは、かなりの左党とお見受けします(笑)。
荒木: いえいえ(笑)。量はあまり飲めませんよ。宮崎では西武のコーチ時代、南郷でずっとキャンプをしていて、夜の焼酎が楽しみでした。一緒にコーチをしていた森山良二さん(現東北楽天投手コーチ)も福岡出身で焼酎好きだったので、意気投合して、よく飲みましたね。

二宮: 荒木さんには、どことなく焼酎よりもワインや洋酒のイメージがありましたから、ちょっと意外でした。
荒木: ワインも飲みますが、やっぱり好きなのは焼酎ですね。このそば焼酎「雲海」も、これからは晩酌のボトルに加えたいと思います。

 原辰徳と西本聖に憧れて

二宮: 1年生ながら連日の好投を演じて決勝まで勝ち進み、“大ちゃんフィーバー”を巻き起こした夏から、もう早いもので34年が経ちます。
荒木: まだ1年生でしたから、最初は甲子園で投げられるとすら想像していませんでした。本当にあれよあれよという間に勝ち進んだ感覚でしたね。早実は春の都大会で岩倉に負けましたし、選抜では帝京の伊東昭光さんがエースで準優勝していました。同じ選抜には二松学舎も出ていましたから、甲子園に出ることさえ難しいと思っていたんです。

二宮: でも甲子園で勝っていくうちに、これは“優勝できるかも”と、その気になったのでは?
荒木: いや、そんな気持ちは全くありませんでした。無我夢中で投げて、決勝の相手は横浜。エースの愛甲猛さん(元ロッテ)の名前は中学時代から知っていましたから、とても勝てるとは思いませんでしたね。

二宮: 序盤に5点を失い、追い上げも及ばず、4−6で破れて準優勝。炎天下で6試合に登板し、疲労もピークだったでしょう?
荒木: でも、投げていると意外と疲れは感じないんです。もう、そういう感覚は通り過ぎていたのかもしれません。今のように水分補給やケアがきちんとしていない時代ですから、むしろ何もなかったのが不思議ですよ。

二宮: 荒木さんはお兄さんも早実で甲子園に出場しています。野球を始めたのは、その影響でしょうか。
荒木: 最初に野球をやりたいと思ったきっかけは一番上の兄ですね。リトルリーグでメンバーに選ばれて台湾に遠征したんです。野球で飛行機に乗って海外に行けるなんてうらやましいと思いました。

二宮: 高校入学前にもお兄さんの応援などで甲子園に行ったことはあったのでしょうか。
荒木: 一番最初に甲子園に行ったのは10歳の時です。リトルリーグの関西遠征をしていて、東京の学校が試合をしているので観に行きました。それが城西。後から知りましたが、エースが高橋慶彦さん(元広島)だったんです。その後、兄の応援で甲子園に行き、早実で野球をやりたいと決心しました。

二宮: 荒木さんは甲子園で一躍、ヒーローになりましたが、小さい頃、憧れていた選手は?
荒木: 僕は東海大相模の原辰徳さん(現巨人監督)ですね。もちろん、早実にいた兄にも憧れはありましたが、原さんは本当にかっこよかった。

二宮: ピッチャーで目標にしていた選手は?
荒木: 西本聖さん(現オリックスコーチ)ですね。その話が巡り巡って本人にも伝わったようで、プロ入り1年目に、グローブをプレゼントしていただいたんです。それが本当にうれしくて、実家にずっと飾っていました。

 初めて見た池田・畠山のスライダー

二宮: 1年の夏から、2年の春夏、3年の春夏と5回連続で甲子園に出場します。でも、残念ながら頂点に立つことはできませんでした。
荒木: 僕たちは練習しない学校でしたからね(苦笑)。和田明監督もノックが終わったら、シャワーを浴びて帰っちゃう。あとは自主練です。投げ込みも気が向いたら、やる程度。照明設備もありませんから、暗くなったら帰らなきゃいけない。そんなに練習もできなかったんです。

二宮: でも、名門校ですからOBや周囲の期待はかなり大きかったでしょう。おまけに注目度が高くて相当のプレッシャーがあったのでは?
荒木: いや、僕たちは東京の人間だからか、案外、醒めていましたね。確かに周囲は騒ぎたてるのですが、どこかに「自分たちは優勝できるような学校じゃない」という意識があったのでしょう。

二宮: 最後の夏は優勝した池田の前に準々決勝で破れました。初回、江上光治さんに打たれた2ランで出鼻をくじかれましたね。
荒木: かなりショックでしたね。僕はまっすぐで押せるピッチャーではないので、カーブをうまく使っていたのですが、そのカーブをいきなり打たれた。これで投げるボールがなくなってしまいました。当時は低めに落ちるカーブをうまく打たれた印象がありましたけど、今回、朝日新聞の連載企画で当時の映像を改めて見返したら、結構、甘いコースでした(苦笑)。

二宮: 結果は2−14の大敗。戦前は事実上の決勝戦といわれながら予想外の大差がつきました。
荒木: 対戦前の池田には、そこまで豪打の印象はありませんでした。2回戦は同じ東京の日大二高に4−3。チームメイトは、「その程度の実力だから」と言っていたんです。ただ、僕は対戦が決まった時には、イヤな感じがしました。蔦文也監督は何をやってくるか分からないイメージがありましたし、実際に選手たちの体つきがものすごく大きかった。そんな思いで試合に臨んでの一発でしたから、余計に痛かったですね。

二宮: 池田のエースは畠山準さん(元横浜)。「東の荒木、西の畠山」と騒がれました。荒木さんから見た畠山さんは、どう映りましたか。
荒木: 彼のスライダーは初めて見た変化球でした。ストレートだと思ったら曲がっていく。打席に立ってベンチに戻ってきて、「たぶん、あれがスライダーだろうな」とウワサしていました。その頃は高校生でスライダーを投げる選手もあまりいませんでしたから、それだけで面食らいましたね。ストレートも球速自体は140キロ台だったでしょうけど、当時のレベルでは、ものすごく速く感じられました。

二宮: 裏を返せば、スライダーもなく、ストレートとカーブで抑えていた荒木さんも超高校級だったということでしょうね。
荒木: あと投げていたのは、今でいうツーシームのシュートですね。球種が限られていましたから、タイミングを外すためにストレートの球速にも変化をつけていました。高校生なりに、どうやったら抑えられるかを考えてピッチングしていましたね。

 今後が心配な済美高・安樂

二宮: 近年の高校野球では休養日を設けたり、タイブレーク制の導入が検討されたり、将来ある選手たちを守る仕組みがようやくできつつあります。荒木さんの体験上、こういったシステムをどう考えますか。
荒木: 大賛成です。タイブレーク制だと高校野球の魅力が半減するという人もいますが、一番大事なのは選手です。彼らをルールで守ってやらなきゃいけない。やっている選手たちは、甲子園にすべてを賭けていて気持ちが入っているので、そこまで疲労は感じません。僕も連投しても何とも思っていませんでしたから。

二宮: 実際、甲子園後に肩、ヒジへの影響は?
荒木: ヒジが痛くなって、注射を打ったこともありましたよ。その時は少し休んで回復しましたが、結果的にはプロ入り後、ヒジを痛めて手術することになってしまった。執刀医のフランク・ジョーブ博士に「いつ頃、痛めたんでしょうか」と訊いたら、「故障したのは最後に投げた試合かもしれないけど、それが直接の原因ではない。今までの蓄積だ」と言われました。周りでも甲子園で故障して、その後、活躍できなかったケースもたくさん見てきています。そう考えると、大人たちがルールをつくってあげることが大事ではないでしょうか。

二宮: 球数制限や連投の禁止といったルールの是非も議論すべきでしょうね。
荒木: 学年によって投球数や連投の決まりをつくるといった方法もあるでしょう。この夏の予選で、ドラフト候補にあがっている安樂智大君(愛媛・済美高)を観に行きましたが、球速ほどボールに威力を感じませんでした。バッターから空振りを奪ったストレートが1球しかなかった。記者には「抑え気味に投げた」と語ったそうですが、彼のような力投派タイプが、いくら予選とはいえ、マウンドで力をセーブするのは普通に考えてあり得ない。まだ故障を抱えているのか、再発の不安があるのか……。確かに素晴らしい素材の持ち主ですが、その点は心配になりましたね。

(後編につづく)

荒木大輔(あらき・だいすけ)
1964年5月6日、東京都生まれ。早稲田実業高では1年ながら、夏の甲子園で4完封の活躍をみせ、準優勝に貢献。「大ちゃんフィーバー」を巻き起こす。甲子園には5季連続出場を果たし、83年にヤクルトからドラフト1位で入団。1年目に初先発初勝利をあげると、3年目から先発ローテーション入り。86年、87年と開幕投手を務め、87年には2ケタ勝利(10勝)をあげる。88年に右ヒジを痛め、フランク・ジョーブ博士の執刀で靱帯再建手術を受けて長いリハビリ生活に。92年終盤、約4年ぶりに戦列復帰し、チームはリーグ優勝を収めた。翌93年も8勝をあげて日本一に貢献。96年に横浜へ移籍し、同年限りで引退した。04年からは西武、08年からは東京ヤクルトで投手コーチを務める。現在はNHK、週刊ベースボール、サンケイスポーツなどで解説、評論を行っている。現役時代の通算成績は180試合、39勝49敗2セーブ、防御率4.80。







★今回の対談で楽しんだお酒★[/color]

日本初の本格そば焼酎「雲海」。時代とともに歩み続ける「雲海」は、厳選されたそばと、宮崎最北・五ヶ瀬の豊かな自然が育んだ清冽な水で丁寧に造りあげた深い味わい、すっきりとした甘さと爽やかな香りが特徴の本格そば焼酎です。ソーダで割ることで華やかな甘い香りが際立ちます。
提供/雲海酒造株式会社

<対談協力>
がらく 恵比寿南店(野球居酒屋)
東京都渋谷区恵比寿南2−2−6 山本ビルB1F
TEL:050-5788-2205
営業時間:
月〜木 11:30〜14:30/17:30〜00:00(月〜木)
金 11:30〜14:30/17:30〜翌02:00、
土・祝日 17:30〜00:00
日曜不定休

☆プレゼント☆
 荒木大輔さんの直筆サイン色紙を本格そば焼酎「雲海」(900ml、アルコール度数25度)とともに読者3名様にプレゼント致します。ご希望の方はより、本文の最初に「荒木大輔さんのサイン希望」と明記の上、下記クイズの答え、住所、氏名、年齢、連絡先(電話番号)、このコーナーへの感想や取り上げて欲しいゲストなどがあれば、お書き添えの上、送信してください。応募者多数の場合は抽選とし、当選発表は発送をもってかえさせていただきます。締切は9月11日(木)までです。たくさんのご応募お待ちしております。なお、ご応募は20歳以上の方に限らせていただきます。
◎クイズ◎
 今回、荒木大輔さんと楽しんだお酒の名前は?

 お酒は20歳になってから。
 お酒は楽しく適量を。
 飲酒運転は絶対にやめましょう。
 妊娠中や授乳期の飲酒はお控えください。

(構成:石田洋之)


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